製図試験におけるエスキース力の磨き方。予備校・講師を選ぶコツ

製図試験に必要とされる3つのスキルのうち、エスキース力とは何なのか。ひとことで言えば「制限時間内に合格しそうなプランをまとめられるスキル」。無数にある評価項目をほどほど満たして、それなりによさげな案を作れる実務能力といえる。

学習法としては、先輩からフィードバックをもらいつつ徐々に場の空気を読んでいくしかない。採点基準は予備校独自、強いて言えば講師によっても異なるので、なるべく数多くあたってバランス感覚を養うのが賢明だ。

空気なので言語化しにくいスキルだが、極論すれば「人力パターン認識」のようなもの。基本的な評価ポイントさえ押さえれば、あとは可能な限り多くの課題と解答例を入手して脳内にインプット、特徴抽出を繰り返すプロセスといえる。

教師データだけでなく、生身の教師に教えてもらうと理解もはかどる。そして予備校を選ぶなら、まず講師の評判にあたってみるのが後々後悔しないポイントだ。

プランニングの要点

エスキース能力を端的に表現すれば、「いかに整合性のあるプランに落とし込めるか」という点に尽きる。たいてい設問に矛盾が出てくるので100点満点は無理としても、なるべく多くの条件を満たして出題者(施主様)の要望に応えるのが大事だ。

まずは要求室を指定面積ごとに収め、トイレや倉庫も適切に計画するパズルを解くのが大前提。その上で、たとえばゾーニングと動線に関しては以下のような項目が評価される。

  • 利用者/管理者のゾーンが明確に分かれ、動線交錯しない
  • 主要室が階段・EVから近く、見通しよくアクセスしやすい
  • 関連諸室が隣接し、頻繁に行き来する動線が短くて済む

これらを満たすと自然と廊下が通り、整然とした室配置に落ち着く傾向がある。ベテラン講師なら図面をパッと見ただけで合否を判断できるという。

他にも、空間的な豊かさ(眺望や吹抜けによる開放感)、構造的な正しさ(PC梁・大空間の位置)、設備の合理性(機械室とPS/DS/EPSの配置)など、サブ項目がいくつも出てくる。

こうしたポイント数十個を加点・減点したうえ、記述と合わせた総合点でランク分けするのが、現在予備校で行われている一般的な採点方法だ(試験本番もそのとおりとは限らない)。

エスキースの勉強法

エスキース練習は予備校課題にひたすら取り組む。出された宿題もすべてこなすのが理想的だ。受講料を割り算すれば、1回の講義で製図板1枚買えるくらいの金額にはなる。そのくらい貴重なチャンスと思って、毎週休まず全力で出席するのが望ましい。

余力があれば、その年の課題に合わせて発売される市販テキストにも目を通しておきたい。代表的なのは日建学院の『課題対策集』と、設計製図対策研究会の『直前対策と課題演習』だ。過去問と答案例は『製図試験のウラ指導』で入手できる(公開模試に参加するのもあり)。

あとは伝手をたどって他校の課題も入手できれば準備万端。実際に解く時間はなくても、「こんな出題のされ方もある」と知っておくだけで参考になる。終盤の課題は相当ニッチな条件を攻めてくるので、鵜呑みにしたり焦ったりする必要はない。

エスキースの学習目安

製図の勉強をはじめた頃は、何が良くてダメなのかもわからない。予備校からもらえるテキストは基礎的な内容にすぎず、実践的なスキルは講師との対話を通じて学んでいくことになる。

製図試験の解答パターン分析

複数の答案例を見比べると、たいてい何かしらの共通部分が見つかる。例えば階段とEVの組み合わせやトイレ内の配置など、課題作成者の手癖のようなものだ。そういう細かいところから真似してみると、何となくその学校の模範解答に似たプランが作れるようになっていく。

製図試験の解答パターン共通点

序盤の課題は条件ガチガチなので、誰が解いても解答例のようにしかならない。講義が進むにつれて、徐々に要求室の階指定がなくなり、大部屋も増えてパズルの難易度が上がっていく。

中盤では「指定がなければプールは2階、機械室1階」というような、その年の課題に応じた主要室の設置パターンを学ぶ。次第にスクールの採点傾向や、課題ごとの設問意図も見えてくるようになる。

終盤では「プールが敷地外にもう1個ある」など、試験本番のサプライズを想定した高難易度の課題を数多くこなす。本番で同じ条件が出ることはまずないが、イレギュラーなことを問われても冷静さを失わない訓練のようなものだ。

最終的には、エスキース中に良さそうな案を2つか3つ思いついて、「今回はどれで行こうか」と判断する余裕まで出てくる。本番課題はたいてい予備校的解法の裏をかくような設問が出るので、場合によってはあえて定石を外すような判断も求められる。

エスキース力の上達が他より遅いのは、課題に応じて適切なソリューションを選ぶバランス感覚のようなものが絡んでくるからだと思う。

完璧主義だと自滅する

過去2年の製図課題は、

  • H29リゾートホテル…絶対服従の眺望指定+多すぎる客室の高難易度パズル
  • H30スポーツ施設…複数入口指定+どこにでもおけるプールの高自由度提案

という流れだったので、今年の美術館はパズル寄りに戻るかもしれない(展示室が20個必要とか)。

実際のところ、そういう予想も常に裏切られる傾向がある。予備校が教える特定の解法パターンには固執しない方が身のためだ。その意味でも、他校や市販書籍の課題に目を通しておいた方が、知識がかたよらずに済む。

試験後しばらく経ってから予備校がひねり出してくる、すさまじい完成度のプランなど目指さなくてよい。100点満点を目指すとエスキースがまとまらず、かえって自分の首を絞めることにつながる。

本番で必要なのは、課題の難易度や他の受験生のレベルを推し量りながら「上位4割」の適切な落としどころを見つける美人投票のセンスだ。8割がたの正しさで「メインの部屋を何階のどこに置くか」決められれば、あとはスムーズに収まる傾向がある。

昨年の例でいうと、あえて「高さ制限や1階プールの構造を知らない」方が本番では迷わず解けたと思う。余計なことを考えずに直感で思いついた王道案で突っ走る方が、ブレのない図面を書けることもある。

エスキースについては知識や持ち技が多いほど有利とはいえない。状況に応じて適切な引き出しを開け、多数派にくみするしたたかさが要求される。

製図の独学が難しい理由

エスキース力とは非言語的スキルなので、自分ひとりでトレーニングするのは難しい。講師と図面を介したコミュニケーションを繰り返す中で、徐々に培われていくコモンセンスのようなものだと思う。理屈でなく「こうした方が受かりやすい」という経験則も絡んでくる。

悟りの境地に達するのは、おおむね試験の直前10月に入った頃。それまでに、いかに多くの課題を解いて別案も考え、採点のフィードバックを受けるかが上達のコツだ。別に神秘的な才能ではなく、作図練習と同じで量をこなせば誰でも身につく。

自分の書いた図面にコメントしてもらうのが重要なので、初年度生は素直に予備校に通った方が効率よいだろう。2年目以降であれば、通信教育の添削で足りるかもしれない。

製図に独学で取り組んだ1年目は、「PSが上下階でずれていても、なぜ上下階不一致で失格にならないのか」ということで真剣に悩んでいた。もし誰かに質問できれば、笑われながらも一発で疑問を解消できたことだろう。

実は面積区画についても「延べ面積で計算する」ということを最近まで知らなかった。まともな実務経験がないと、こうした取るに足らない常識でつまずきがちだ。恥を承知でアホみたいなこともインタラクティブに質問できるという意味では、対面で教えてもらった方が早い。

予備校は講師で選ぶ

そしてエスキースのノウハウとは、多分に属人的な知識だと思う。同じ予備校でも講師によって言われることが違う。細かい点では、図面の線の太さひとつとっても好みが分かれたりする。

そのためスクールを選ぶにあたっては、ネームバリューやサービスの良し悪しよりも、講師を基準に判断するのがよいと思う。受験業界は人材の流動性があるので、予備校間で講師が移籍することもある。

一級の製図を教えてもらうなら、そこそこ規模の大きい設計実務をしていて指導歴が長い先生が理想といえる。知り合いの建築士が某有名校でアルバイトしているところをみると、講師の質は玉石混交だ。

実際に図面を見てもらうまでわからないと言えるが、スクールの窓口で聞けば各校舎の評判を教えてくれることもある。関東圏であれば、都心の大型校より郊外の小教室の方が教え方は丁寧かもしれない。

評判のよい講師が見つかれば、あえて自宅や職場から離れた所沢や厚木に通うのもありだと思う。別に倍率の高い都心の教室や有名講師にこだわる必要はない。

小人数制のメリット

講義時間やスタッフのリソースは限られるので、「講師ひとりあたりの生徒数」というのは結構重要だ。都心と地方の校舎では、アシスタントの先生もカウントして3倍くらい違うことがある。

1人で20人も指導するとなると、2か月で顔を覚えてもらえるかどうかすら怪しい。継続的に指導してもらわないことには、添削のポイントも毎回ずれてしまう。そして講師も人間なので、言ったことをちゃんと図面に反映してくる素直な生徒に対しては、面倒見が良くなるというものだ。

人数が少なければ、教室の雰囲気も自然とリラックスしたものになる。逆に多忙な先生の前では委縮して、馬鹿げた質問を思いついてもつい「あとでググろう」となってしまうかもしれない。そしてPS上下階不一致の不思議など、ネットのどこを調べても情報は得られない。

クラスの人数が少なければ、他の受講生とも仲良くなって情報交換しやすい。中にはコネを使って他校の課題を集めてきてくれる、親切な人がいたりもする。同じ受験エリアの敵同士でも、少人数なら協力体制を築きやすい。

もし同じ年に試験を受ける同期や友達がいるなら、あえて別々の予備校に通って課題をシェアするのがおすすめといえる。なぜなら勉強の終盤は、ひたすら課題を集めて出題パターンを研究する作業になるからだ。学校が違えばWin-Winで資料をトレードできる。