一級製図試験~各スクールの課題総括と受験生に送る最後のアドバイス

昨年は製図試験に独学で挑んで玉砕したが、今年は日建とTACを脳内ダブルスクールしたおかげで準備万端だ。各学の課題を見比べると、独自の見解やローカルルールが反映されていて結構おもしろかった。

採点方法がブラックボックスなので、「こういう教え方をしたら受かった/落ちた」という経験則の集大成として、練習問題が独自進化を遂げていく。今年淘汰されるガラパゴス校はどこだろう。毎年受講生を実験台にして、スクール遺伝子の優劣が評価される進化論的ゲームといえる。

「知識及び技能」が著しく不足している過年度生としてはたいへん僭越だが、3日後の試験本番を控えた各校の生徒さんたちへアドバイスを考えてみた。総合資格はお金が高すぎて潜入できなかったので、日建とTACだけです。

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最後まで楽しめた日建課題

昨日「敷地外水着星人」なんて完全にネタのつもりで書いたのに、そのあと日建の特訓課題2Aを解いたら、まさか出ていた。学院の最終試練では第2第3のプールが出現して、更衣室まわりはドライ&ウェットどころかトワイライトゾーンと化している。

こんなぶっ飛んだ課題を楽しめるなら、合格したあとでも来年また日建学院のパーフェクト本科コースを受講してみたい。7か月で54回も講義を受ければ、一流のレベルデザイナーとしてゲーム業界でやっていけそうだ。

特訓課題3の3,800㎡もあるメガロポリスなんて、他校生は1週間かかっても解けないはず。ただし日建の独自ルールさえわかれば、こんな自分でもチビコマ1案、あっさり30分でエスキースが終わってしまった。部屋の階別振り分けも予想どおり。

日建課題は変則条件が多い分、仕掛けがわかれば落としどころを見つけやすい。天井高12.5m以上のバレーコートなんて究極形態も出てくるが、冷静に断面構成を考えればどこに置くべきかは明白だ。

総合運動公園とは打って変わってきつきつ面積の参考課題。エスカレーターのは過去問見たことある人しか解けないと思う。それ以外は大部屋が多いので、さほど迷わずに解ける。極小敷地なら、プールは縦型しかありえない気がしてきた。

日建学院生は初心に帰ろう

日建課題は癖が強いので、試験課題が正統派だったら、覚えた知識はほとんど役に立たないと覚悟しよう。答案例を見ても、「本当にこれでいいの?」と疑ってしまう珍プランが多い。

常識的に考えて、プールの上はあまりいじらない方がよさそうだ。特訓模試のように、プール室PC梁の上を二重床にして飛び跳ねさせるというのは、素人目に見ても危険すぎる。トランポリンや相撲の稽古をしたら床が抜けて、プールまでCH=6.5mたっぷり墜落できる。

日建課題はTACと違って上足/下足の切り替え縛りが強く、そのためかえって階別ゾーニングしやすい課題ばかりだった。ほとんどが玄関先でスリッパに履き替えさせる健康ランド方式。下足利用の共用部は1階にしか行きようがないので、あとは適当に天井が高い運動室を3階に上げれば楽に収まる感じだった。

一方、共用部の研修室やショップを上足ゾーンに設ける不思議なプランもときどき見られる。不可能ではないが、強いて必要なければ、上下足の切り替えスペースは2階に上がる階段・EV前だけにとどめておいた方が無難だろう。

前半課題は基本形だったので、日建生は最初の頃を思い出して、バランス感覚を取り戻した方がいいと思う。特訓課題はプールより大小運動室がメインだったが、今年の基本はやはり温水プールに違いない。

TAC生を励ます言葉

他校より課題が少ない分、TAC受講生は10月に入ってから不安な気持ちで過ごしていることと思う。

「総合資格ではあんなこと、日建学院ではこんなことを…」と噂が飛び交い、「受講料をケチったのは間違いだったんじゃないか」と考えていたりするかもしれない。1階階段下の倉庫にでも引きこもりたい気分だろう。

心配することはない。昨年課題はあれだけ周辺環境をもてあそんだので、今年は素直に標準サイズの敷地で立体パズルを解かせる可能性が高い。TACの課題もそれなりにユニークな要素をそなえており、日建式の「数撃ちゃ当たる」反則級サプライズより、ヒットする確率も高そうに思う。

屋上で広々とウォーキングできるとか、プールに間口12m以上接する裸体鑑賞喫茶が出題されたら、君たちの勝利だ。プールと更衣室の基本配置パターンを上から適用してみて、吹抜けやギャラリーをバランスよく設ければすっきり収まるはず。

たとえ広場や駐車場で外構をいじられたとしても、1コマなかったものとしていつものパズルを解けば楽勝だ。エントランスホールを中庭にえぐられ、さらに公園側ツインアプローチまで求められる課題4が解けたTAC生なら、1階のプランニングは何とかなる。

更衣室に風呂がついていようが、多目的行為室と化していようが、基本は動線とゾーニング。どんな怪条件が出ても、落ち着いて考えれば習った基礎知識で十分対応できるはず。

ツール・ド・製図試験

今年の課題はスポーツ施設なので、各スクールの特徴を某自転車マンガにたとえて表現してみよう。来年一級建築士の受験を検討している方々への参考も兼ねて。

予選の学科試験を経て、インターハイの製図試験を制するのはどこだ?

  • 総合資格=ハコガク
    スポーツマンガによく出てくるエリート常勝校。メンバー全員が基本課題も変則課題もそつなくこなせるオールラウンダーなため隙がない。学費は一番高いが、今年もやはり最有力優勝候補の最強王者。
  • 日建学院=京都伏見
    全国No.2の実力を持ちながら、なぜか大穴狙いのリスクテイカー。カリスマ講師が発案した変態課題になぶられ続けた結果、受講生はサプライズな心理戦にめっぽう強い。勝利のためには多少の反則行為も辞さない、ハングリー精神あふれるダークヒーロー。
  • TAC=総北
    大手三校の中では学費が安く、貧乏学生に人気が高い。今シーズンはひたすら地味なローラー台練習に徹してきたので、型にはまればそこそこ活躍できそう。いかにも熱血主人公や流川君タイプのライバルがいそうな学校。
  • 建築士会・個人塾・通信教育=広島呉、熊本台一
    大手校同士の潰し合いなど、レースの展開によっては見せ場をつくれる可能性あり。ときどき表に出てきては、ストーリーのマンネリ化を解消する名脇役たち。
  • 独学組=学連選抜チーム
    多分ムリ。来年の練習のつもりで雰囲気だけでも楽しもう。

製図試験ラストステージは、上位4割にどれだけの合格者を送り込めるかという団体戦になる。母数が多い方が合格者数シェアでは有利だが、スクール内の合格率も重視される。チーム戦と見せかけて評価は個人ごとなので、メンバー間の助け合いやドラフティングは禁止だ。

今年のプールは標準タイプでTACが善戦するのか、それとも変則パターンで日建が圧勝するのか?どちらに転んでも、例年通り多数の合格者を送り込んできそうな総合資格…日曜11時の課題発表が今から楽しみだ。

おもしろかった室名ベスト3

以下は完全に余談。今年見た課題のなかで、思わずほくそ笑んだ要求室の名前を挙げてみようと思う。

  1. ヘルスケアホール(TAC課題8)
  2. だれでも更衣室(日建課題3B)
  3. 趣味室(TAC課題7)

ランクI  略してはいけないヘルスケア部門

1位は個人的にツボにはまったTACの「ヘルスケアホール」。略して「ヘルスホール」とかでGoogle検索すると、やばいことになる。リンク先はブラウザのシークレットモードで閲覧しよう。

TACの前半課題は第3の部門名が健康増進部門だったのに、なぜか途中からヘルス部門に変わってしまった。おっさん的に気になって仕方なかったのだが、最後の親玉が課題8の欲求室、ヘルスホールで噴き出した。

おそらく下ネタ好きと推測されるI講師の監修が入ったのだろう。課題6や8でヘルス部門を3階に隔離しているのは、ある意味正しい。下足利用なので動線交錯が心配だが、それよりも、健全な共用部やスポーツ部門と明快にゾーニングすることを優先させた結果だ。

ランクII 拡張性がある「だれでも○○」

2位は日建の「だれでも更衣室」。バリアフリーを意図しているのは明確だが、このネーミングは革命的だ。差別要素や後ろめたい感覚がなく、ひらがなで「だれでもウェルカム」というニュアンスを持たせているのが素晴らしい。

応用技として、毎回漢字を書くのに時間がかかる「多機能便所」や「車椅子使用者用駐車場」を「だれでもトイレ」や「だれでもパーキング」に改名したらどうだろう。採点官にどう判断されるかわからないが、作図時間を短縮できる可能性を秘めている。

ランクIII 一切説明がない趣味の部屋

3位はTACの「趣味室」。付属部門リストの最後に付け加えられており、思わせぶりな室名なのに特記事項がここだけ空欄なので、ますます気になる。50㎡もあるので、それなりに何かする部屋だと思うのだが、答案例ではやはり3階の隅に追いやられている。

コンセプトルームのように、「任意の趣味を想定し、目的とその効果及び設いについて提案すること」という記述もセットだったらよかったのに…無駄にめっちゃ盛り上がったと思うぞ。採点が面倒なので、途中でやめたのだろう。

その他、次点としては日建の「マルチスタジオ」や「女性用フィットネス」など。スポーツ部門にある「マシンルーム」も機械室とまぎらわしくて、なかなかウィットに富んでいた。

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