平成30年一級建築士製図試験はプールの設置階とスパン割りで決まる

10月に入り一級建築士の製図試験本番まで2週間を切った。法規の勉強や昨年の反省は済ませたので、余興はこのくらいにして、そろそろ本気で対策を考えようと思う。

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製図試験は情報戦

昨年、独学でまったく歯が立たなかった経験から、製図試験は情報戦だと知った。ありとあらゆる敷地形状や要求室を予測し、可能な限り多くの課題・解答例を入手してパターンを暗記するに限る。

どんなびっくり条件が出ても、L字やコの字のプランを駆使して対応できる、アイデアの引き出しを用意しておきたい。そもそも基礎的な設計力があれば、小手先のテクニックに寄らずとも解けるかもしれない。しかし実務経験のないペーパー受験生としては、意味を理解できなくても解法を暗記する方が早い。学科の構造力学もそんな感じで合格できた。

平成30年、一級建築士合格者の平均年齢は32.4歳。高齢の受験生が不利なのは、まわりで勉強している人がいなくて情報交換できない点だ。20~30代の若い人なら、きっと職場の同僚とスクールの課題を交換したりして、和気あいあいと楽しんでいるのだろう。

さいわい今はインターネットの時代なので、秘密のソーシャルネットワーク回線を経由して、いくつかの課題を入手することができた。はっきり言って、スクールの講義課題は8月に本屋に並ぶ市販テキストとはレベルが違う。昨年のように日建の市販課題を5問解いたくらいでは、お話にならないとわかってきた。

答案例を人力ディープラーニング

例によってこの時期、予備校のオリジナル課題がヤフオクあたりで転売されている。1問5千円くらいが相場だが、学校に通えば講義1回2万円以上するだろうから安いものだ。

あらゆる伝手をたどり、なるべくお金をかけずに入手できた課題は15問くらい。10問くらい解いてみた段階で、おぼろげながら今年の解法パターンらしきものが見えてきた。試験直前に学校が出してくるハイレベル課題には通用しないかもしれないが、定石といえそうな室配置のパターンを整理してみようと思う。

予備校課題を10数問、老化しつつある脳内ニューラルネットワークを駆使して機械学習させたみた。諸条件をインプットすると、パタン・ランゲージにより瞬時に合格プランがエスキースされる、世界初のAI建築士アレグザンダー君の誕生だ。

低階層のパーセプトロンで構築した解法モデルによると、今年の課題はプールの配置で9割決まる。すなわち、間違ってプールをへんてこな配置にしてしまうと、要求諸室や眺望が悲劇的に収まらなくなりランクIIIに直行できる。年末まで執行猶予3か月、来年も懲役3か月、罰金20万~の世界へようこそ。

プールの設置階は指定なしか?

各スクールで最初の課題はプールの設置階が指定されているが、後半以降は自由になる傾向がある。6コマも8コマも使う2層ぶち抜きのでかい部屋なので、この配置をミスると収拾がつかない。おそらく試験本番も、プランニングの自由度を増すため、プールの設置階は指定なしでくるだろう。

エスキース開始から1時間経って、まだプールの階数や縦か横かで悩んでいるようなら今年の合格はおぼつかない。1/400図面を書き始めてから、プールの位置を変えることになったらもう終わりだ。

敷地の形状や接道状況、隣地の眺望はさまざまだが、プールを置ける階は1階か2階か3階の3つしかない。また、プールに給排水・空調する巨大な機械室も、常識的にはプールの下しかありえない。超広い敷地で、プールと機械室同一階指定なんて条件がでてきたら、むしろ簡単に解けてしまうだろう。

また、プール吹抜け上階のPC梁上に重たい機械を置くというのも想像しにくい。万が一、設備スペースの特記や面積が「適宜」で、ほかに置き場所がなくなったらプール直上もありかもしれない。キュービクルや空冷ヒートポンプチラーに並んで、断面図にボイラーとか貯水槽を書いておけばOKだろう。

記述的には「室内空間の有効利用、美観に配慮して屋上設置」…きっとポンピドゥーセンターみたいに楽しい屋外空間ができる。熱源を外に出せて空調負荷が減るし、ついでに日射も遮蔽してくれそうなので、屋上を緑化する手間が省ける。

プールと機械室の設置階パターン

さて、順当に機械室をプール直下とすると、機器の搬入出・維持管理の観点から1階か地階に置くのが無難だ。ありえそうな順番に階構成のパターンを整理すると、

  1. プール2階、機械室1階
  2. プール1階、機械室地下
  3. プール2階、機械室地下
  4. プール3階、機械室1階
  5. プール3階、機械室地下
  6. プールと機械室が同一階
  7. プールの上に機械室
    ※1~2は定番、3~5はマイナー、6以下は多分ない

プールも機械室も配置自由だったら、8割は1のパターンで素直に解ける。もし機械室が地下指定だったら、プールは1階が定石だ。どでかいPSとDSが下階を貫くことになるので、プールと機械室が離れる3以降はあまり合理的でない。

もう準備万端過ぎてどんな課題でも5分で解けるぜ!という講師レベルの人には、ぜひ6~7のイリーガルなパターンで試験に挑戦してほしい。プールの更衣室を縦動線でつなげば6は実現できそうだ。7をやるには、梁せい1,500くらいの基礎梁なみにごついPC梁を断面に書いておけばOKかもしれない。

基本的にスパンは7mグリッド

スパン割りは7×7mグリッドで、6×4コマの42×28mを旨とする。というか、いまだにそれしかまともに使えない。「間口4m以上のプール室Aが10個」とか、よほどのことがなければこの基本戦法はぶらさない方針だ。

スパン6mとか8mで遊んでみるのは、ほかに教えることの少ない製図学校の余興みたいなものだ。脳内トレーニングとしては楽しめるが、「試験に受かる」という本来の目的からすれば本質でない。

6mは利用者階段が面倒くさくなるので一切不要だ。柱の数も無駄に増えるだけなので、要求面積が小さい部屋は、トイレのように適当に間仕切り壁を増やしてつくればいい。ただし万が一「間口4mプール10個」が出たときにそなえて、8mだけは頭の片隅に置いておこう。

昨年は8mを使えるか否かで勝敗が決まった。リゾートホテルというお題で、50㎡とか70㎡のラグジュアリーなスイートルームばかり練習してきたのに、試験本番で出たのは違法民泊レベルの35㎡だった。旧街道沿いの宿場町の中でも、楽天トラベルの最安に出てくる一泊1,500円の木賃宿だろう。

スタジオも月までブッ飛ぶこの衝撃

昨年の課題文を見たときの衝撃を今年の課題でたとえるなら、以下のような感じだった。


要求室:以下の室は、全て計画する。

  • プール室A(計10室)…直径2mの円が入る幼児用プール…3.5㎡以下
  • プール室B(計2室)…段差のない車椅子使用者用プール…約35㎡
  • プール室C(計2室)…定員40人の和式プール。眺望に配慮した便所を設ける…約35畳

A:円の面積の公式ってなんだったっけ?そもそも直径2mだと面積3.5㎡超えそうな…「以下」って面積条件もはじめて見たぞ。

B:段差のないプールって何だ?スロープで出入りすればいいのだろうか?足洗場と思われないように水深1mは確保すると、勾配1/12で12mのスロープが必要だ。面積も厳しいから正解は多分こんな感じ?(日ごろのカタツムリ修行のおかげでフリーハンドで書けた)

サイホンボルテックス式のバリアフリーなコンセプトプールが一案できた(笑)

C:13人乗りエレベーターは2.5×2.5mで実現できるから、面積3倍すれば定員はクリアか?和風の旅館で、温泉の洗い場に畳を敷いているのは見たことがある。まさか便所はプールの中なのか?眺望とは水中から水着姿を拝めるということだろうか…


製図試験では、まず課題文の日本語を正しく解釈するところから始まる。「名峰や湖の眺望(or)」なら、どちらか見えればOKだ。「名峰と湖の眺望(and)」だと、両方見えないとアウト。「名峰とか湖などの眺望(etc. )」なら樹林も含むことができる。

プール長さの相場は15~25mのところ、数・面積・仕様のあらゆる要素で揺さぶりをかけてくる精神耐久試験。もしプールの深さが「シンクロ・飛び込み用7m」とかで出題されたら、ランクIVが4割を超えたといわれる平成17年の再来だろう。

プールのある建物と別に「設備機械棟を設けよ」なんて、上記のパターンに収まらない配置すら想像できる。延焼ラインの予告があるので、同一敷地内の2以上の建築物が出てくる可能性もありえる。

さらに去年のファンコイルユニットは、「プールの空調が単一ダクトでない」くらいの驚きだった。今年版でたとえるなら、

  • 留意事項
    空調設備は近隣の清掃工場からの排熱を利用した「コージェネレーションシステム」とする
  • 計画の要点等
    「地域冷暖房」の利用方法及びその省エネルギー効果について特に考慮したこと(3つ以上)を記述

答案としては、断面図の地中にアースチューブみたいなDSを伸ばしておけばいいのだろう。多分AHUを収めた空調機械室や屋上の冷凍機が不要になるので、これは作図を簡略化できるボーナスだ。

記述の方は、「地域冷暖房の省エネルギー効果に配慮して適切に計画した」と書いて逃げれば無難に1行埋められる。具体的な情報は何一つ提供していないが、空欄よりはましといえる。

そんな難題で無駄に悩むより、開口部のひとつにでもLow-E複層ガラスと注釈を入れた方がましだ。中身を知らなくてもそれっぽく書ける記述のマジックワード「…適切に計画した」はぜひ覚えておきたい。

プールのサイズから8mスパンを検討

今年のスパン割りはプールの大きさから決まるといっても過言ではない。プールの長さはスパンを増やせば何とでもなる。幅もスロープなど含めて10m以内なら、予定通り7mスパンで大丈夫だ。

7×2=14mもあれば、プールサイドの通路幅は2mずつ確保できる。柱の飛び出す分と、プール槽脇の笠木みたいなパーツを引いても、バリアフリーな有効1.4mはとれるだろう。

8mスパンに切り替えるべき例外は2つある。

①プールの幅が広い=8m×2スパン

もしプールの短辺が10mを越えてきたら、8×2=16mはないと十分な余白をとれない。日建学院市販テキスト答案例のように、プールサイドの片方をつぶすのは最後の手段だ。隙間の掃除が大変そうだし、動線も不利なので実例としてあまり見たことがない。

7×3=21mだと余白が大きすぎる。また、構造的にPC梁を3スパン渡していいのか自信がない。少なくともそんな答案例をまだ見たことがない。プールの中に柱の島をつくれば解決できそうだが、頭や手をぶつけて確実にケガをするだろう。

幅広プールについては、TACの課題8もしくは日建学院の演習課題3Aあたりが参考になる。どちらの答案例も、プールを横置きして8m×2スパンで収めている。

②25mプールを縦配置=一部を8mスパン

プランニングの都合でプールを敷地の短辺方向に縦配置したい場合、長さが25mだと7×4=28mでは余白が3mしか取れない。最低でも1スパンだけ8mに変えれば、両サイドに2mずつ安全な通路を確保できる。

例えばTACの課題7答案例は、南北7・7・8・8のスパン割りで25mプールを縦に収めている。もしプール以外の要求室に110㎡とか220㎡の、50の倍数でない怪しい大空間が出てきたら、8mスパンを使えというヒントだ。

次はプールの縦横配置問題

本番ではおそらく、プールは縦横どちらでも置けるサイズになるだろう。ただし、他の要求室や眺望との絡みで、どちらかの方が圧倒的に有利になる可能性は濃厚だ。少数派の配置でまとめられないこともないが、いろいろ妥協する必要が出てきて減点が増えすぎるきらいがある。

プールの設置階とスパン割りが決まったら、次はプール室の縦横決定。ここまで合っていれば(多数派に組みしていれば)8割は合格したも同然。これが素直に導けてしまうイージー課題なら、答案の平均レベルが高すぎて書き込み勝負になるだろう。

プールの縦横配置パターンと更衣室の接続関係に関する研究はこちら

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