シングルコアで解く、一級製図試験「スポーツ施設」プール1階配置案

一級建築士の製図試験向けデザインパターン「シングルコア」の適用例を紹介しよう。今年の課題「健康づくりのためのスポーツ施設」でプールを1階に配置しつつ、階段・EVコアを1コマに圧縮して、可能な限り要求通りのプランを考えてみた。

プール地下ピットの過剰な根切りによる非経済性と地下水位の懸念。機械室との地下配管にともなう構造・設備上の不利益は、今回問わないものとする。ゾーニングと動線計画のメリットを考えて、当サイトではプール1階を絶賛推奨中だ。

かなり手狭になる1階のプランニングを、シングルコアを用いることで収められるかどうか実験してみた。

シングルコアによるスポーツ施設の解答例

1階平面図

シングルコアによるスポーツ施設の解答例

2階平面図

シングルコアによるスポーツ施設の解答例

3階平面図

スパン割りと外構

スパン割りは簡単のため、いつもの7×7mで東西6×南北4スパンのグリッドを想定。単細胞なので、やはり7mの均等グリッドでないと落ち着かない。シングルコアも7×7mのコマを前提としている。特に必要なければ桁行・張間とも同一スパンの方が、きっと施工性・経済性もいいはずだ。

周知のように、今年の課題ではこのやり方だと建蔽率70%をオーバーするので、北西に置いたカフェの手前を切り欠き屋外テラスとした。どちらも桜並木側の眺望を確保することで、課題の条件は満たしてある。

南北のヘリアキはどちらもぎりぎり2mだが、東西は7mと3mとれる。西側の桜並木の方を多めに7m確保し、2m幅の避難通路以外は基本的に植栽で埋めた。敷地の西側と北側から、どちらも有効幅1.6mの避難通路で、道路または歩行者専用道路に出られるようにしてある。

念のためプールの南東に、直接南の歩道に出られる非常口も用意しておいた。シングルコアの欠点である避難経路の重複を解消するため、西側に2~3階に通じる屋外階段を設けている。無粋な屋外階段が桜並木に面していて、しかもエントランスの脇にあって目立つのはいただけないが、2階の屋外階段への通路が、1階の庇を兼ねるように工夫した。

北東の機械室からは、東側に扉を設けて機器類の搬出入に配慮した。煙突やゴミ置場は北側避難通路をふさがないよう、東側の目立たない位置に設置。

サービス部門の出入口は、利用者用とやや近いが北側に向けた。厨房の外部扉も設けたが、管理ゾーンとは動線が分裂されてしまっている。北側エントランスを潰せば厨房を管理用廊下に接続できるが、本課題での優先度は利用者エントランスの方が高いと判断して厨房動線を妥協した。

面積チェック

試験本番の反省により、スパンを決めたら最初に面積を確認しておくこと。

建築面積

42×28-28(切り欠き)+14(屋外階段)=1,127㎡(建蔽率70%、1,164.8㎡以下でOK)

床面積

  • 1階:42×28-28(切り欠き)=1,148
  • 2階:42×28-28(切り欠き)-16(吹抜け)-392(プール上部)=768
  • 3階:42×28-28(切り欠き)-16(吹抜け)-392(プール上部)-196(多目的上部)=572
    合計:2,488㎡(2,300~2,800㎡でOK)

エントランスの位置と上下足履き替え

エントランスの位置は今回自由だが、設問的に無難と思われる北と西に2か所配置した。西側は桜並木をとおして他施設との一体利用に配慮。北側は駐車場・駐輪場に向けている。おそらく車椅子使用者は駐車場がある北側から訪れると思うので、バリアフリーも想定した計画だ。

利用者から見れば施設のエントランスは多ければ多いほど便利だと思うが、プール1階で実現できるのはせいぜい2か所が限度だろう。プールを縦置きにすれば右隅に寄せられるので、がんばればT字型に3方向まで増やせるかもしれない。

北と西の利用者出入口を逆L字型のエントランスホールで接続し、それぞれの風除室の前に上下足の切り替えスペースを設けた。今回はカフェ以外の部屋はすべて上足利用と想定して、建物に入ったらすぐ履き替える方式を採用した。おそらく今年はこのやり方が多数派だと思う。

屋外テラス越しに桜並木を眺められるカフェだけは、下足利用という想定で西側エントランスに直結させた。もしここも上足利用と想定するなら、履き替え後のエントランスホールからカフェへの入口を設ければよい。

階構成の説明

プールを1階に配置する場合は、動線・配管上プール用更衣室Aと機械室も同階設置が望ましい。さらに屋外テラスと「動線配慮」のカフェ、受付のある事務室も1階に置くのが常識的だ。患者の搬送を考えると、救護室もできれば地上階にあった方がいい。

健康増進部門の中で、コンセプトルームと健康相談室は共用的な意味合いが強いので、1階に置くのもありだと思う。先日の試験本番で提出した自案では、コンセプトルームは1階に下ろしたが、100㎡もあるため他の要求室がかなり狭くなってしまった。

今回は、TAC課題2の答案例を真似して、「3階のプール屋上でノルディックウォーキングを楽しむ」という企画により、コンセプトは無理せず3階に上げることにした。健康相談室も2階のEVホールに近い位置に退避させた。

2階はドライスポーツ用の更衣室Bを中心に、トレーニングルームと天井高5m以上指定の無柱空間、多目的スポーツ室を配置。インストラクター控室がやや狭く、しかも無窓になってしまったが、2階のサービスゾーンに配置した。

3階の南側半分は、プールの屋上庭園と多目的スポーツ室の吹抜け部分で占められる。北側に残りの健康増進部門、ダンススタジオとキッズ用プレイルームを横に寝かせて配置し、屋上庭園に隣接させてコンセプトルームを設けた。

各階のホールには4×4mと小ぶりながらも3層貫通の吹抜けを設けてある。吹抜け周囲のスラブが片持ちになり、カフェの切り欠きもグリッドから外れた位置に柱を立てる必要があり、構造的には若干不利になった。

シングルコアのため、サービス用のエレベーターは省略している。利用者用のエレベーターも2×2.5mの最小サイズ、11人乗りの想定なので、建築物移動等円滑化基準には完全に準拠できていない。

断面図はつくっていないが、プールを1階に置いたおかげで各階の階高を4mに抑えることができる。提出案では多目的スポーツ室を3階に置いてしまったので、そこだけ6mになってしまった。うまくやれば、建物全体の高さを抑えられて、経済的(美観にも配慮?)というのが、1階プールの隠れたメリットだ。

1階の見どころ

縦動線を1コマに集約できたおかげで、1階の要求室はほぼ目標面積を達成できた。カフェが40席にしては若干狭そうだが、隣接した屋外テラスに並べたテーブル・チェアもカウントできるとする。自分の提出案は階段コア2つでこれにコンセプトルームも加えたので、面積的には散々たるものだ。プール用の空調機械室も入れるのを忘れた。

今回は18×10mの小さめプールに対して、なぜか約450㎡もの巨大な部屋面積が要求されている。採暖室と監視員室をそれほど広くする必要はないと思うので、適宜倉庫を設けて面積を増やした。特記事項に書かれている見学コーナーは曖昧だが、エントランスホール側に設けて温水プール室の面積には加えなかった。

面積調整のため更衣室の下にある3m幅の通路もプール室に加えてある。南西の倉庫は桜と南の公園が拝める当敷地のベストビュースポットなので、本来なら代わりにカフェでも置きたい場所だ。

アレンジ案としては、南西倉庫の代わりにガラス張りの採暖室を設けて、桜並木の出入口、旧正門から訪れる利用者に向けて、汗だくのストリップショーを見学させるというアイデアもある。技術的には耐熱強化ガラスの2層構造、間に空気を入れて断熱すれば、透け透けのサウナも実現できるようだ。

空調機械室に隣接したPSは、場所的に2×2mも必要なかったかも。プールへは隣の機械室から地下ピット経由で配管できているはずなので、2㎡分はプール空調用DSに融通してもよかった。その他、図面には表現しなかったが、トイレや厨房の水回りには適宜1㎡の小型PSを配置する想定。

2階の解説

2~3階では、エントランスホールの上に重なるかたちで、広めのEVホールを計画できた。階段を上った先に、トップライト付きの明るい吹抜けも用意されている。面積は狭いが建物中央寄りで、自然採光の効果を上げられるよう配慮している。

健康相談室とトレーニングルームがややいびつな室形状になったが、今回は面積を要求通りに合わせることを優先した。場合によっては壁をグリッドに沿わせる方を優先して、面積の方を妥協すべきという意見もあるだろう。そのあたりは好みというか、スクールの指導方針によると思う。

廊下の突き当り西側に屋外階段を設けたので、計算していないがパッと見、避難距離の重複はクリアできたと思う。直通階段が3つもあって避難に便利ということで、採点上の加点ボーナスがあったりしないだろうか。

全体的に部屋の要求面積を合わせるのを優先させたが、更衣室Bはどちらも指定より20%以上増えてしまった。利用者からすれば広い分には不便でないし、見た目もこれがすっきりしていて、いいと思う。

もし室面積の超過で減点が大きいようなら、適当に倉庫でも設けて縮小すればいいだろう。全体的にトイレの面積が狭いと思うので、2階に増設するのもいい。1階の利用者トイレも、更衣室の出入口を幅3m確保したが、間口2mでいいなら横に1mずつ広げられると思う。

3階の悩み

3階は吹抜けや屋上が多いので、ほぼ2階と同じ構成。プールの屋上を庭園化したため、この配置でキッズルームの無窓化も避けられた。

点線部分が見にくいが、キッズの上に電気設備スペースを規定の5×8=40㎡確保してある。EPSは1~2階の位置から左に2mワープさせて壁に付け、屋上電気設備の直下に計画した。

EPSという略字だけ覚えた2㎡の中身は見たことがない。そもそもPSみたいに上下階で位置をずらして許されるものなのだろうか。2階はスタッフ用のトイレを1つでも設けたかったので、プール側の通路の端をふさいでしまった。EPSはトイレ内にしか向いていなくても、操作したりメンテできるものなのだろうか。本当は便所ごときより、EPSの保守性を優先してスペースを空けた方がよかったのかもしれない。

コンセプトルームは利用者の動線上、3階のもっとも遠くて不便な位置になってしまった。上足利用の想定なので微妙だが、手に持つポールとシューズでも貸し出して(あるいは1階から手持ちで靴持参)、緑化された屋上を自由に散策できるコンセプトを提案したい。8個もあるプールのトップライトが邪魔だし、こんな狭い屋根を歩いてもすぐ飽きると思うけど。

利用者用トイレと器具庫の位置は同面積なので、ホールから便所への動線が短くなるよう、入れ替えてもいい。ただ、1・2階のトイレ内PSを横引きせずに済むのと、2・3階でトイレの位置が揃っていた方が作図しやすいので、そのままの配置とした。

利用者的にも「どの階に行ってもトイレの位置が同じ」というのは覚えやすくていいと思う。ただ各階のプラン構成が似すぎると、「自分がいま何階にいるのかわからなくなって迷った」と苦情が出たりするのだろうか。

そのあたりはインテリアデザインの方で何とかしてもらうとしよう。いずれ製図試験で、認知症高齢者向けのバリアフリーも要求されるようになるのだろう。

総括

シングルコアのデザインパターンを利用したおかげで、1階プール配置でもさほど無理なく計画をまとめられた気がする。吹抜けは面積指定がないので狭めたが、要求室だけでなくホールのたぐいも広めに確保することができた。平面計画はすっきりしたが、上述のようにエレベーターが狭いとか、屋外階段が必要とか、デメリットもある。

利用者・管理者の階段・EVで2コマ使うと、ここまで整然とプランニングするのは難しいと思う。試験本番、通常の2コアでエスキースしたら、部屋が狭くなったり廊下が屈折したり、いろんな部分にしわ寄せが来た。

今回のエスキース時間はトータル3時間くらい。ただし、課題は熟知しているうえ、自分の答案がベースになっているのでハンデは大きい。もし初見の課題でここまでブラッシュアップするとしたら、エスキースに軽く倍くらいの時間はかかりそうだ。