一級製図で不合格になった下書き用紙を分析。ダメなエスキースの例

今さらながら、昨年のリゾートホテルで不合格だったプランを検証してみようと思う。試験が終わってから1年間、汚いエスキース図を見直す気にもなれなかったが、過去の失敗から学べることもあるはずだ。

独学で一級建築士の製図試験を初受験した平成29年、どうしてこんな図面になったか、思考過程を思い出して分析してみる。

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試験中の時間配分

製図試験の最後まで残っていると、問題用紙とエスキース用の下書き用紙は持って帰っていいルールになっている。それぞれ「試験場、受験番号、氏名」を記入する欄があるが、試験官にチェックされることもないので、時間がなければ記入しなくていいと思う。

下書き図の端に、参考のため各作業にかかった時間がメモしてあった。

  • 11:15 課題文読解完了
  • 11:53 エスキース完成
  • 12:54 1/400図面下書き完成
  • 14:05 記述完成
  • 14:20 面積記入完了、製図スタート
  • 15:20 室名OK(残り2:10)

当日は終了時間ぎりぎりで、断面図を15分で仕上げ、植栽も殴り書きした記憶がある。15:20の時点で平面図の室名記入まで終わって、2時間以上残っていたというのに謎だ。おそらく部屋漏れを避けるために、仮線を引き終わった状態で早めに室名だけ入れたものと思われる。

エスキースから1/400プラン完成まで、約2時間で済んでいるのは優秀。早い段階で北側客室配置に踏み切ったのがよかったのだろう。記述もコンセプトルームがあったわりには、1時間くらいで完了しているので、ここまでのペースはよい。

作図スピードに自信がなかったので、未完即失格だけは避けるため、そこそこレベルのエスキースで見切り発車したと推測される。結果的には、すでに終わっている図面をがんばって作図するという、悲しい作業になってしまった。

14:20に製図を始めてから、少なくとも3時間10分は作図にかけられたはずだ。おそらく各部屋の面積調整や外構配置を1/200の図面上に持ち込んでしまって、時間を費やしたのだろう。やたら多すぎるPS/DSの作図にも時間がかかったと思われる。

作図中のプラン変更は禁止

プランの検討は1/400で終わらせて、1/200は作図マシーンに徹するというのが定石だ。エスキースが早めに終わっても、図面を書きながらあれこれ考えて手が止まってしまうとやばい。

1/200を書きながら、もっとよい部屋の配置を思いつくこともある。即失格レベルでない微妙な改善レベルなら、当初エスキース案のまま仕上げてしまった方がいいと思う。完成してからよほど時間があれば、消しゴムで消して修正しよう。

経験上もっとも厳しいのが、1/200完成段階での要求室漏れ、もしくは面積オーバーだ。試験終了1時間前に、突然おたけびや独り言が聞こえてきたら、多分そっち系の人だ。GO SHOES SHOW SUMMER!

要求室は共用部の廊下を削ったり部屋を入れ替えたりして、不整形でも面積不足でもなんとか収めることになる。無窓だろうが居室経由の避難になろうが、お構いましだ。部屋漏れの大減点は何としても避けたい。

面積超過が50平米未満なら、虫食いのようなスモール吹抜けを量産して調整できる。構造的に微妙なキャンティレバーになるが、微妙に下階をセットバックしてピロティー化することも可能だ。いずれにしても、見た目的・構造的に減点はまぬがれられないが、部屋漏れ・面積オーバーの一発アウトよりはましだ。

下書き用紙の解読

敷地図で埋められた左上部分以外は、プランの検討やメモ書きでびっしり埋まっている。1/400プランの右や下にもメモが多いということは、1/200図面を書きながら考えた部分が多かったのだろう。独学らしく、まったく解法がシステム化されていない野生の下書き。こんなやり方で受かるわけがない。

最初にスパン割りを検討して、東西6コマではとうてい2階客室が収まらないので、7メートル×7スパンに増やしたようだ。隣地との空きがそれぞれ2~3メートルとシビアだが、当時は7メートルしか頭になかった。

チビコマを6枚くらいかいて、収まりそうな感じだったので倍コマ検討をスキップして1/400に取り掛かったものと思われる。何度も練習した南に下る斜面だったので、地中に埋もれる地下1階の北側スパンは省略した。

ここでなぜかわからないが、上に書いてある2階の平面図に、地下1階の機械室がめり込んでいる。おかげで図面が重なってしまい、1/200作図中に自分でも読み取りにくかったのを覚えている。機械室の配置をうっかり忘れていて、あとから地階プランの上に書き足したのだろうか。

1/400プランは作図マシーン化するのに超重要。試験後に再現図を起こすのにも使うので、なるべくきれいに書いた方がいい。エスキースで紙面が足りなくなれば、裏面にグリッドを引いて書いてもいいくらいだ。

名峰の検証

敷地図に関して、明確に覚えているのは、右下の2つ目の眺望矢印を見落としていたことだ。南の矢印はシャーペンでマーキングして「タロほう」とメモしてあるのに、南東矢印はノーマークだった。もし早い段階で「東の眺望もOK」と気づいていれば、2階客室をL字に配置する奇跡が起こったかもしれない。

1階を客室にあてたとしても、すべて南に向けるのは不可能だ。レストランの特記事項にも眺望指定があるし、リラクセーションスペースも湖側とある。地下1階の大浴場横にまで客室配置をシミュレーションした、涙ぐましいチビコマプランが見受けらえる。

結局まとまらないので、犠牲系を発動して北側客室配置に踏み切った。決断の瞬間、鳥肌が立つような緊張感は今でも鮮明に覚えている。大学受験も含めて今まで受けた試験の中で、最もシビアな経験だった。

当時の思考過程を分析すると、

  1. 「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する」という段抜きの至上命令は認識
  2. だが、右下の名峰矢印に気づいてない
  3. 湖は南にある。名峰はどこだ?
  4. 北の方が木が多くて山っぽいので、こっちに名峰があるのだろう…多分

敷地図にわざわざ北の樹林に向けて「こっちもめいほう」とメモしてある。

おそらく北客配置したすべての受験生に、こうしたドラマや苦渋の決断があったはずだ。まともに勉強した受験生なら、この課題文を読んで最初から北に配置するような能天気はいない。

独学で図面数枚しか書いていない自分でさえそうだったのだから、みっちりスクールに通っていた人はもっと苦しんだことだろう。試験勉強に費やした膨大な時間とお金を考えながら、悲壮な決意で北に客室を振ったことと思う。

ファンコイルユニットって何?

名峰に続くダブルショックだったのが、設備計画について書かれた「外気処理空調機+ファンコイルユニット方式」という指定だ。日建課題に従い、「経済性にすぐれCO2排出量の少ない、非の打ち所なく素晴らしい空冷ヒートポンプパッケージ様」しかレパートリーにない。

見たことも聞いたこともない謎方式の仕組みを推測するヒントになったのが、空調機械室の特記事項「外気を温湿度調整して居室に送風する」だ。どうやら機械室から空気を送るようなので、各部屋に噴出口を設ける必要がある。

当時は「天井裏でダクトを横引きできる」という高度な知識がなかったので、安全側を見てPSのように各部屋にDSを通せばよい気がした。空気の通る穴だから、2つの部屋で1つとか共有もできないだろう。

客室の界壁に4つのPS/DS配置をシミュレーションしたメモが見られる。念のため「両方入れとく」結論に達したようだ。

南北ともべた基礎で通した

断面図の下書きによると、斜面の上も下もすべてべた基礎になっている。というより、空調設備と同じく当時はそれしか書けなかった。

この程度の下書きでちゃんと1/200に起こせたか怪しい。最後に断面図を書くころには、プランが全然変わってしまったので、やけくそで仕上げた。「断面図はがんばれば15分で書ける」という、本番パワーが最も発揮された時間帯だった。

標準解答例では2案とも良好地盤の北側が布基礎・独立基礎になっているので、不要な掘削で減点された可能性も高い。南側は素人なりに、軟弱地盤を越えてGLマイナス3メートルまで掘る作戦で合っていたようだ。

ただ、北側平坦部の造成部分まで3メートル掘っているのは、今思えばやり過ぎだ。安全側とみるか不経済と思われるか…そのあたりの採点基準が不明瞭なのは、製図試験の難しいところ。べた基礎しか知らなければ余計な悩みはないのだが、勉強して持ち技が増えるとかえって迷いが生じる。

乱雑な下書き用紙を解読して、なんとか記憶がよみがえってきた。次は再現図を起こして、敗因を分析してみようと思う。

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