製図試験でランク0.1アップできる小ネタ集と、更衣室内動線の工夫

今年は昨年より準備期間が一週間長かったので、初年度生もメキメキ力をつけて、スーパー作図マンGODたちのハイレベルな戦いになりそうだ。きっとラスト15分は、タイルに点々を打つカツカツバトルで試験場がにぎわうに違いない。

図面の完成度が高すぎて、ウッドデッキの目地ピッチや、植栽の豊かさで合格者が決まるだろう。おそらく断面図の余白にパースを描いたり、色鉛筆で着色(※受験票の注意事項を読んだら着彩はNG)する受験生まで出てくる。

あまりに問題が簡単すぎて接戦になった場合、ちょっとした図面の印象でランク1・2が分かれるという。「線を濃く書く」秘訣は紹介したので、今からでもちょっとだけ印象度をアップできそうな小技や注意事項をダメ押しで伝授しよう。

課題の混同に注意

試験中、最大の敵は無用な先入観だ。勉強し過ぎたせいで、「プールには特記になくてもスロープ設置」とか、「吹抜けは3層でパッシブ強調」のような独自ルールを刷り込まれてしまったはず。

覚えたスキルを発動すべく、100点満点のプランを目指すとエスキースでドツボにはまる。本試験では、各スクールの常套手段をふさぐ数々のトラップが散りばめられているのだ。

「特記無視とゾーニング破綻、減点が少ないのはどっち!?」

こんな究極の選択に対して、学校の答案例を思い出してもヒントは得られない。

また、あまりにも似たような課題を解き過ぎたせいで、別の課題の条件を取り違えてしまいがちだ。健康相談室や面談ブースが1つでよいのに、ついつい小部屋を2つ設けてしまうのは、製図試験でよくある話。要求されてもいない施設長室や職員休憩室を、勝手につくらないよう注意しよう。

室名は一字一句忠実に

書き込む室名は研修室かセミナー室か、更衣室かロッカールームか、体育館か運動室なのかは、最後に問題用紙を見ながら確認すること。

便所=WCまでは許されるが、試験元が腐心して考案した室名が気に食わないからと勝手に変えるのは、大減点という噂だ。最悪、室名の一字違いですら欠落扱いされる不条理な試験。

日建学院が発明した「だれでも○○」は画数が少なく便利だが、標準解答例に出て公認されるまで使用は控えておこう。健康増進部門は面倒だからヘルスケア部門に読み替えるというのもご法度だ。

見落とした部屋は多機能風除室へ

共用部門リストの下の方にある地味な控室や、エントランスホールの特記に含まれたショップコーナーとかも、ついうっかり見落としやすい。忘れていた部屋をねじ込みやすいところは、エントランスやEVホールだろう。

せっかく吹抜けに面して開放的にデザインしたホールが、便所やセミナー準備室で埋まってしまうのは残念だ。上級テクニックとしては、1階の風除室に突っ込むという技がある。風除室は最低間口3mも用意すれば十分。7mスパンで脇に空いた4mは、うっかりミス用の保険的スペースといえる。

日建学院生なら、最初から幅7mみたいな巨大風除室を設けていることだろう。無駄にゴージャスな風除室を圧縮すれば、4×3mくらいのちょっとした小部屋をつくれる。課題2Aで風除室横に空調機械室を設けて、隣接する3層吹き抜けに床置きダクト接続型のエアコンを設置しているのは参考になる。

屋外に公衆便所を設ける

風除室が満員なら、次に削れるのはトイレだ。オプションの多機能便所を潰して、小型の相談ブースを2室つくれる。便所をリノベーションした極小2㎡の無窓ブースなんかに呼び出された日には、日が暮れるまで折檻されそうだ。

犠牲にしたトイレは屋外に移設することができる。いっそ災害対応のマンホールトイレとして戸外に開放すれば、地域住民も気軽に利用できるし記述のネタにもなる。トイレが狭くなって「ちょっと便器の数が足りないなあ」というときは、駐車場や駐輪場の脇に無駄なスペースがないか探してみよう。

製図の勉強を始めて5枚くらい図面を書いた段階で、トイレ内の什器レイアウトは勘で書けるようになる。男性用は小便器が入るので、PSなどで面積が狭い方を女性用に。施設の規模や立地条件からフロアごとの人数をフェルミ推定して、適当な数の便器を描けばよい。

最初の方の練習課題では、余裕で1コマ便所に割り当てられたと思うが、終盤の難問では廊下や器具庫の隙間にしか収める余地がなくなる。重要度は低いが欄外に書かれている以上、適切に計画しないとアウトなのが、トイレの難しいところだ。

更衣室内の家具配置はとても重要

今年のスポーツ施設で悩ましいのはロッカー室内の配置だ。更衣室がプール用とその他用で2種類、男女4つに車椅子用まで出てくると、1/400でレイアウトを考えるのに10分は取られる。できれば更衣室は男女対称形に設けられると、作図で定規を動かす回数が少なくて済む。

今年の受験生が総じてハイレベルだった場合、ロッカールーム内書き込みの巧拙が合否を決するのではないかと思う。このあたりはスクール課題でもあまり掘り下げられていなかったので、プラスアルファの知識を伝授しよう。

実例から学ぶロッカー室の設え

趣味と実益を兼ねて、夏休みはちびっ子たちに混ざっていつもより多めにプールに通ってみた。背筋を強化できたおかげで、作図中の中腰キープもつらくなくなった。

プールのロッカー室

近所の公営スポーツ施設を観察すると、25×10m程度の規模で更衣室は男性用150㎡くらいある。試験に出るよりは若干広めだが、利用者動線に沿って備え付けられてある設備を分析してみよう。

  1. 更衣室入口(自動ドア)
  2. トイレ(ドライ)
  3. 洗面台
  4. 履き替えスペース
  5. ロッカー
  6. カーテン付き着替えブース
  7. シャワー室(1.5×1.5mブース4個)
  8. 採暖室(プール内にサウナなし)
  9. トイレ(ウェット)
  10. シャワースペース(2×2m、足洗い槽はなし)
  11. 防火戸(非常時のみ開閉)
  12. プール

注目すべきは、ドライ側とウェット側に2つのトイレが用意されている点だ。プール室内にトイレがない施設なので、泳ぎながら催して来たら更衣室のトイレに駆け込むことになる。必然的にサンダルは水でびしょぬれになるので、靴下を履いた状態では利用したくないトイレだ。

そのため、履き替えスペースの外に、下足で利用できる別のトイレが設けられている。TACの解答例でも似たような配置が見られたが、更衣室にゆとりがあれば、ドライ側トイレも描いておくと利用者に親切だ。

先日、利用させてもらった某国施設内のプールでは、男性更衣室内の着替えブースにおむつの交換台まで設置されていた。

おむつの交換台

子育て側のバリアフリーだが、記述のネタに困ったら付け加えるといいだろう。

開口部には網戸の設置推奨

ちなみにこの規模のプールだと、空調は教科書通り単一ダクトで天井からの軸流吹き出しだった。古い施設なので床暖房まではついていない。

併設のトレーニング室は天井高6mくらいあるのだが、空冷ヒートポンプパッケージの室内機を置きまくって済ませていた。やはり単一ダクトに比べると効率はいまいちなようで、夏はエアロビ教室のおばちゃんや、ルームランナーやエアロバイクから発する熱量でムンムンしている。

中間期には盛大に窓を開けて外気冷房しているのだが、蚊が入って来るのでせめて網戸を設けてほしい。DIYで後付けできるタイプもあるので、一級建築士になって儲かったら寄贈して差し上げたいくらいだ。

他の人と一味違う記述を決めるなら、開口部・トップライトにはロウイー・日射遮蔽ルーバーだけでなく、虫除け対策も考えておこう。

「開口部に高気密サッシ及び耐候性ポリプロピレン製のハイメッシュを設け、通風時の防虫性・防塵性を高めるとともに、利用者の南側公園への眺望を妨げないよう配慮した」など。