H30製図試験の推奨パッシブ設備はトップライトとルーバーだけ?

年々重要度を増してくる製図試験のパッシブデザイン対策。今年も地中のアースチューブから屋上緑化まで、ありとあらゆるネタを仕込んで試験にのぞんだ。課題文で特にパッシブ対応は指示されなかったが、7月の事前告知に含まれていたので対策は必須だ。

果たして標準解答例にあらわれた、今年の推奨パッシブ要素はなんだったのか?

トップライト、ルーバー…それだけだった。強いていえば、あとは南の植栽で日射を遮蔽するくらい。開口部の「自然採光」矢印はなく、通風アピールもやけに控えめだ。

頭を使わず加点を狙えるパッシブデザインはおいしいネタだったのだが、あれほど作図練習したアースチューブやソーラーパネルは現れなかった。少なくとも標準解答例2案の「どちらにも」出てこなかったパッシブ設備は、今年の課題で重要性が低かったとみなせる。

でかすぎるトップライト

温水プール室の特記事項、「自然採光を十分に確保する」の解釈については、解答例に明確な指針が示された。「外壁に面して窓があればいいのか」「南向きでないとだめなのか」など憶測が飛び交ったが、「トップライトを設けること」が必須だったようだ。

①案は中央に横長、②案は4つに分けられて複数の天窓が設けられている。受験者以外はピンとこないかもしれないが、日建学院とTACの見慣れた答案例からすると、どちらのトップライトも想像したより「かなりでかい」。ホール吹抜け上部に設けられた天窓も同様だ。

プールの上に部屋を重ねたりしてトップライトをつくらなかった人は、採点に不利だったと考えられる。そして今後の試験で自然採光に関する特記が出たら、壁側の開口部だけでなくトップライトを積極的に計画するのが穏当だ。

そして夏期の日射というデメリットを打ち消すには、(開閉可能)(一部開閉式)のカッコ書き注釈、もしくは「電動式ロールスクリーン」というハイテク設備がおすすめなようだ。

ルーバーは1階までびっしり

東西の開口部に縦型、南に水平型のルーバーを設けるのは、どの予備校の答案例にもみられる常套テクニックだった。縦型ルーバーは1/200図面上で微細なチョンチョンを書くのが主流だったが、点線で図示すればそこまで細かい表現は不要なようだ。

そして解答例①②では「縦ルーバー」「垂直ルーバー」と微妙に名前が異なっている。これも試験元らしい心配りだ。南面はどちらも「水平ルーバー」なので、勝手に「横ルーバー」とか書いたら減点かと思うふしもあるが、縦がOKなのだから横でも問題ないだろう。

プール室の吹抜け空間では、高い位置にある開口部にルーバーを配置する方が日射の遮蔽効果は高い。しかし解答例①のプール南面はその逆で、1階にルーバーがあるのに2階は省略されている。

2案とも地上階の南側の部屋は、植木のおかげで日射は多少防げそうだ。それでもわざわざ水平ルーバーを配しているところを見ると、これは南の歩行者専用道に対する「目隠し」というニュアンスが強いのではないかと思う。

そしてプール2階にルーバーがないのは、例の「このくらい勘違い(ミス)してもOK」という試験元からのアピールに見える。

植栽で日射遮蔽?

敷地の南に植えた高木樹は、基本的に日射遮蔽のパッシブ要素とみなせる。解答例は両案とも、南~東側を中心にまばらに外構を緑化している。

日射遮蔽が目的なら、東西に断面を切る場合は断面図の南側にも木を書いておくと効果をアピールできる。さらに冬は積極的に日射を取り込む落葉樹とメモしておけば、さらなる印象アップを期待できる。

解答例で断面図に植栽は出てこなかったので、どれほど積極的に遮蔽効果を狙った樹木かわからない。平面図に書かれている木々の枝張りも小ぶりなので、どちらかというとパッシブ狙いより景観調整のための植栽に見えなくもない。

便所の開口部、通風効果は限定的

開口部からの「自然通風」矢印は解答例①の断面図に5か所、やや多めに書かれているが、ほかには出てこない。トップライトからの「自然採光」も、特に断面図ではコメントされなかった。

今年の解答例は「トイレに窓があるのが特徴」と書いた。自然採光には役立つと思うが、自然通風にはどれほど寄与するのかわからない。便所のドアに換気口やアンダーカットは設けると思うが、窓全開にして中間期の空調コストを削減できたりするのだろうか。

普通に考えるとトイレは臭い漏れを防止するため、厨房と同じく機械換気を行うだろう。ほかの部屋に比べて負圧に保つには、外壁に設けた窓は閉めておく方が効率的だ。開口部から入って来た新鮮空気がすぐ排出されてしまい、ショートサーキットで換気効率が悪くなるからだ。

とすると、トイレの窓はあくまで採光用。自然通風という意味では、ほかの大部屋外壁に設けられた開口部の方が効果が高そうだ。今年の課題は「卓越風」の記載がなく、平面図に通風経路を示す矢印も書かれていない。

アースチューブは一体どこへ…

パッシブデザインの観点からは、今年の解答例・断面図はやけにあっさりして見える。地下ピットにアースチューブは一本もない。地中熱・井水利用さえ行われていない。地底人アースチューバ―の面目丸つぶれだ。

予備校の課題で、あれほど生やした屋上の草はなんだったのだろう。日射遮蔽の屋上緑化はもとより、太陽光発電・集熱パネルすら一枚も書かれていない。だだっ広い屋上の空間が、もったいなく見えて仕方ない。

もちろんこれらを図面に書けば、採点上プラスになったと想像することはできる。しかし解答例のパッシブ表現がここまで消極的とは思わなかった。プール・吹抜けの巨大なトップライトと、1階まで張り巡らされた水平・垂直ルーバー。これさえ書けばOKだったということだろうか。

来年以降の試験対策として、時間がなければ天窓・ルーバーのどちらか優先して書き込めばよさそうだ。少なくとも標準解答例を見る限り、アースチューブや屋上の草をチマチマ表現するよりは、でかいトップライト1つでも設けた方がポジティブに思われる。