製図試験の標準解答例に現れる、謎の什器・コーナーに関する考察

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昨年のリゾートホテル標準解答例を分析して、課題文に出ていない追加要素がやけに多いと気づいた。コンシェルジュやTELボックス…別にあっても不自然ではないが、時間のない製図試験本番で、そこまで作図する必要があるのだろうか。

昨年はリゾートという設定だから、多少費用がかかってもラグジュアリーな提案は歓迎されると思った。しかし今年のスポーツ施設でも、課題文で要求されていない意味不明なパーツがやたらと多い。

果たしてこれらは何なのか。そして試験元は余剰なコーナーや什器を通して、受験生に一体何を伝えようとしているのだろうか。

必要ないのに書かれているもの

標準解答例①②を見比べて、課題文に書かれていないのに勝手に書かれている要素・文言をピックアップしてみる。太字は答案①②の両方に現れた共通要素だ(おそらく重要度も高い)。

  • 外構のフェンス=H1100
  • 敷地内通路の斜めの目地
  • 設備機搬入口と斜めの目地
  • 屋外テラス以外のデッキとテーブル・椅子
  • ラウンジと自販機
  • 事務室のロッカー、棚
  • トイレ内の流し台(SK
  • プールのジャグジー、スロープ、洗顔
  • プール・吹抜けのトップライト
  • 南側開口部の水平ルーバー、東西の縦/垂直ルーバー
  • 健康相談室の相談・身体測定・情報コーナー
  • トレーニングルーム内の受付
  • トレーニングルーム内のマシン配置(点線表示)

順番に見ていこう。

外構フェンスと斜めの目地

今回の敷地は隣地に建物もなく、敷地の隅に暗がりや死角は生じない。管理者用の出入口を強いて閉ざす必要もないので、セキュリティー上の外構フェンス及びオートロックは不要と思われた。

しかし両案とも、植栽のまわりに高さ1100程度のフェンスを設けるのが推奨のようだ。ただし、無数に設けられている1階の各非常口に対して、隣地境界に防犯上の扉は設置されていない。

また敷地内通路はわざわざ斜めの格子模様で強調してある。そして①の設備機搬入口の前も45度の斜線表記だ。

一級建築士、標準解答例の敷地内通路

「斜めの目地」は毎年標準解答例に出てくるので、図面に表現できれば印象アップでは?と考えていた。本番では時間が足りずそこまで書けなかったが、やはりがんばって目地を斜めに引けば、それだけで他の答案より目立てて好印象でないかと思う。

ピッチは目分量でも、三角定規をあてれば簡単に作図できるだろう。ぜひ挑戦してみてほしい。

ラウンジと自販機

図面②の外構南西に現れる謎のテーブル・椅子セット。そして両案とも3階に現れるラウンジ。こういうゆとりを感じさせるリラクセーション的なスペースは、今年の課題でも歓迎されたようだ。

一級建築士、標準解答例のラウンジ

要求室のリストを見直して、「見学コーナー」はあるが「ラウンジ」とはどこにも書かれていない。しかし例年の傾向から「空間豊かさ要素」は歓迎されると踏んだので、自分もホールにテーブルセットを盛んに書き込んだ。

そしてラウンジにはどちらも自販機が併設。もちろんこれも課題では要求されていない。

夏場の脱水、熱中症防止のために、水分補給は欠かせない。むしろ他施設やグラウンドの利用者用に、外構に自販機をたくさん置くのもありだったと思う。

豪華なツインジャグジー

事務室のロッカー・棚、トイレの流し台、プール関連の設備も同様だ。これらは課題文に明記されていないとはいえ、リスト最下欄には、

その他必要と思われる室、什器等は、適宜計画する

と書かれている。

ほかにもスポーツ施設にありそうな冷水機(ウォータークーラー)やチラシコーナー、さらに売店まで追加してよかったのだろうか。加点/減点の度合いは読めないが、解答例を見る限りは「適宜」追加しまくった方がポイントは高そうに思う。

解答例①に現れるプールのジャグジーにいたっては、中央の監視員室を挟んでシンメトリーに2つも用意されている。「気泡浴槽」というのは予備校課題でもたまに出てきたが、任意に、しかもダブルで追加するとは大盤振る舞いだ。

一級建築士、標準解答例のジャグジー

ときどき解答例に表れる、こうしたゴージャスな設備は何なのだろう。製図試験で特に「予算が厳しい」とか「年間維持費を抑えること」とか、お金の面については触れられていない。

この調子でいくと、流れるプールとかウォータースライダーくらい「適宜計画」しても全然オッケーだったのではないかと思う。製図試験は年々自由提案の要素が増えて、あらゆる要求室が「コンセプト化」してきているように感じる。

パッシブ関連

パッシブデザインのトップライトとルーバーについてはすでに触れた。これらもバリアフリーと同じ事前告知の必須事項として、当然記載すべき要素と思われる。

健康相談室の3コーナー

解答例2案に共通して存在する、健康相談室の3コーナー。

  1. 相談コーナー
  2. 身体測定コーナー
  3. 情報コーナー

「あれ、こんな指定あったっけ?」と思って課題文を読み直したら、確かに書かれていた。

健康相談、身体測定や体力測定を行い、健康増進に関する情報も提供する。

特記事項に「コーナー」や「スペース」、「…を設ける」とは明確に指示されていない。しかし、今回の健康相談室に関しては各機能を分離してパーティションで仕切るのが推奨だったようだ。

一級建築士、標準解答例の健康相談室

①②の室内レイアウトは同じなので、コピペして済ませたのかと思いきや、相談コーナーと身体測定コーナーの位置が入れ替わっている。こんなところまで巧妙に、「バリエーションと自由度を許容している」というアピールだ。

トレーニングルームのマシン表記

すぐに気づいた人も多いと思うが、2案ともトレーニングルーム内のマシン配置が点線で図示されている。機械室のように設備機器の内訳が特記で書かれているわけではないので、大きさや数は適当だ。

一級建築士、標準解答例のトレーニングルーム

しかし特記に「各種トレーニングマシンを設置する」と書かれている以上、トレッドミルやエアロバイクなど複数の機器を書いておくのが模範解答らしい。

思い出せる限り、予備校課題でマシンの位置まで表示していたのはTACの課題8のみ。本番ではとても時間がなくて、そこまで手が回らないと思っていた。しかし解答例を見ると、ジム室の什器は事務室並みに重要視されているようだ。