一級建築士の製図で気になる試験中の食事とトイレ事情をご説明します

一級建築士の製図試験で話題に上がることは少ないが、初めて受験する人は必ず気になる内部事情を詳しく説明しよう。下世話だが、食事と排せつの話だ。

11:00スタートで17:30終了の製図試験。昨年初めて受けた際は、「えっ、一体どこでお昼ごはん食べるの?」と不思議に思った。

結論から言うと、ランチの休憩タイムなど用意されていない。「崖から飛び降りながら飛行機を組み立てる」と言われるように、レストランを作図しながら製図シャーペンを箸にして弁当をつつき、多機能便所に便器を描き込みながらその場で用を足すのだ。

6時間半の長丁場に及ぶ製図試験は、頭脳と身体を駆使する総合格闘技といえる。栄養補給をおろそかにして、エスキース中の思考力が低下したら致命的。後半の作図でお腹が空いたら、印象の良い濃い図面を書けない。

ましてやトイレを我慢しながら作図するともなれば、便所に便器を書き込むたび、そわそわして仕方ない。油断して、うっかり吹抜けの中空に便所を設けてしまわないとも限らない。

作図中にスクワットが必要な理由

製図試験は思った以上に体を使う。作図中、製図板の上の方で横線を引こうとすると、どうしても厚みのあるスケールで下の用紙が隠れてしまう。目標の位置に正確にプロットするには、板ごと思い切り傾斜をつけるか、椅子から立って手元をのぞき込むしかない。

DSのバッテンや特定天井のブレースなど、斜めの線は三角定規をシャーペンの上に当てて書く変則的なやり方が有効だ。学校でやると行儀が悪いと怒られそうだが、定規のポジションによって上から当てた方が早いときがある。ペン先も確実に目視できて便利なので、やっている人は結構多いと思う。

平行定規のスケール自体、180度反転して上からシャーペンにあてられると便利だと思う。手元が隠れないので合理的だし、芯の当たる角度を手前に向ければ、定規の隙間にはまって砕けずに済む。そういう便利な仕組みの製図板が存在しないのは、ロードバイクのUCIルールのように試験元が禁じているからだろう。

不安定な姿勢や手元が見づらい体勢で書くと、たいてい線が曲がったりして図面が汚くなる。木工と同じで、正確に材料を加工するにはまず土台を安定させる必要がある。

グリッドの寸法や断面図の天井高を縦に書くときは、体をひねるより製図板の右側に移動した方が確実だ。自分もこれまでは製図板を持ち上げて90度回転させていたが、体を動かした方が早いと気づいた。椅子が跳ね上げ式でバネ仕掛けの会場では、勢いよく製図板にぶつけないよう、ゆっくり立ち上がろう。

試験中の身体負荷は持久系競技に匹敵する

トータル6時間半の製図試験において、高強度の頭脳作業と作図中の頻繁なスクワット、腕の上下を続ける運動量は、フルマラソンに匹敵すると思われる。運動強度のMET値は軽いジョギングに相当する6程度で、全体の消費カロリーは推定3,000kcalくらい。

試験中、高度の緊張で心拍数は平均120拍/分くらいあった気がする。当日、カンニングを疑われそうなスマートウォッチは着けなかったので、誰か計測した人がいたら教えてほしい。6時間以上120BPMもあれば、それだけでも心臓から循環器系への負荷は相当なもの。基本的に着座姿勢なので、肩・腰・膝への局所的な負担も大きい。

マラソン完走で6時間半はかなりのスローペースだから、あまりうまいたとえでない。所要時間的には、エスキース・記述・作図の3種混合競技、ミドルディスタンスのトライアスロンに近いといえる。

となれば当然、レース中の栄養補給は必須だ。自分の場合、連日のプール視察で代謝が良くなったのか、試験前はいつもよりお腹が空くようになった。試験中の食事時間もなるべく減らしたいので、数日前からカーボローディングして体内にグリコーゲンを蓄えた。

主食と副菜をバランスよく準備

今年の試験で用意した食事の内容を紹介しよう。

製図試験用の食事

メインのカロリー補給源は定番のランチパック。試験では袋から出すのに手間がかかるおにぎりより、菓子パンの方が手軽でいいと思う。ただし、メロンパンやデニッシュ系の生地だと、図面の上にぽろぽろカスがこぼれてよろしくない。

以前、日建学院の公開模試に参加したとき、うっかりパンくずを図面にこぼして油染みができてしまった。エタノール入りのウェットティッシュで拭いても効果なし。クライアントに届ける大事な図面に食べかすをこぼすとは、建築士の試験として非常に印象が悪い。

図面を汚しにくいランチパック

事前にいろいろ食べ比べて、本番中はランチパックがベストと判断した。定番商品なので、どこのコンビニでも安定して手に入る。長年の実績から、体に入れてもアレルギーや腹痛の心配が少ない戦闘糧食として信頼性がある。

ランチパックはパンくずがこぼれにくく、袋の中に入れたまま食べれば手に油もつかない。また1パック2個入りなので、1個食べて残りは温存し、時間差補給も可能になる。同じ理由で、本番ではクリーム玄米ブランも用意しておいた。

そこまで空腹を感じなくても、脳への糖質補給のため一定時間ごとに甘いお菓子を摂取しよう。マラソン大会で定番のスポーツ羊羹でもいいが、試験中は成分不明の変な汗しか脇にかかないので、塩分補給はそこまで必要ない。安い普通の羊羹と、好物のよもぎ大福も混ぜてみた。

アウトドアショップのモンベルで買った、チョコ味の羊羹という変わり種もスタンバイ。長距離レースの途中で、梅干しや朝鮮人参味のエナジージェルを飲むようなイメージだ。変わった味の食品も摂取すると、脳が刺激されてリフレッシュできる。

甘めのコーヒーで糖分・カフェイン摂取

ドリンクは上島珈琲の黒糖ミルク珈琲を2本用意した。昨年発売されてから、すっかりはまってしまった上島珈琲の看板商品。家でも真似してコーヒーに黒糖を入れているくらいなので、濃い目で甘すぎるくらいが口に合う。外出時はたいてい携帯するので、箱買いして家に常備したいくらいだ。

まさか試験本番で居眠りすることなんて考えられないが、血中カフェイン濃度は適度に高く保っておいた方がパフォーマンスは上がる。気分だけでもポジティブだと、「うわっ、完璧すぎるぜ俺のプラン」と勘違いしたまま作図に熱中できる。

「どうせダメだろうな、客室北側じゃ…」と作図の前から落ち込むようなら、栄養ドリンクでも合法ドラッグでも何でもいいから注入して気分を持ちなおそう。明るい気分で図面を書くと、きっと線にも勢いが出て印象が良くなる。

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ペットボトルの蓋はワンタッチタイプに

試験中は蓋ありペットボトルのみ持ち込み可能だった。補給を素早く行うひと工夫として、ワンタッチで開閉できる取り替え式のキャップを用意しておこう。これに差し替えると、両手でボトルを持たなくても一瞬で蓋を開けられる。

自転車用のドリンクボトルでもいいかと思ったが、机の上で安定しそうな製品が少ない。倒れて床に転がるのは目に見えていたので、落としても見捨てられるよう、小型のペットボトルを複数用意する方針にした。

カフェイン摂取用コーヒーとは別に、ミネラルウォーターもナルゲンの水筒に入れて持参した。500mlたっぷり入れてきたのだが、緊張して無意識に水を飲み過ぎたのか今年は中盤から足りなくなった。コーヒーに含まれるカフェインの利尿作用で、水分補給が間に合わなかったのだろう。

試験中、食事をした後に歯磨きする余裕はない。口に含んでくちゅくちゅうがいに使えたり、水は何かと便利なので、本番でも多めに用意した方がいい。

食料は机に並べて大丈夫

本番で食料をどこに配置するか迷ったが、カバンの中からごそごそ取り出すのも試験官に怪しまれそうだ。こんな感じで机の脇に並べておいたが、特に問題はなかった。

製図試験用の食事例(テーブル上の配置)

まわりの人もこれほど量は多くなかったが、似たような感じで適当におやつを並べていた。前夜に家の中をあさったら、賞味期限の近いくるみ柚餅子や洋菓子も見つかったので、追加しておいた。

当日の朝はいつもと同じ、納豆卵かけ玄米ご飯を一合と味噌汁。よく動く日は、宮沢賢治なみに一日四合くらい玄米を食べる。今年は前日の食いだめも効いたのか、試験開始直前にランチパックとウィダーのゼリーを食べたら、試験中はお菓子数個で補給が間に合った。

食事をとるタイミングとしては、記述の前に各欄のネタを考える際や、作図開始前に1/400プランをインプットするときが有効だ。30秒くらいお菓子をほおばりながら、少し図面から離れて俯瞰してみると、頭がすっきりすることだろう。

たいしてお腹が空いてなくても、試験中のもぐもぐタイムは必ずとろう。マラソン中の水分補給のように、脳が疲労を感じてからでは、すでに補給は遅くなっている。

トイレの利用は計画的に

試験中のトイレは、試験官の迷惑にならない範囲で積極的に行った方がいい。歳をとってからますます頻尿で、夜も2~3回トイレに起きるタイプだが、今年は5回くらい試験中に用を足した。

序盤のエスキース中、良いプランはたいていトイレで思いつく。プールを1階か2階に置くかで悩んだが、トイレに行ってすっきりしたら、「よっしゃ今年は1階に賭けよう」とスピーディーに決断を下すことができた。

作図中もたまにトイレに行って作業を中断すると、「今やっている○○の記入はあと○分、次はあれやって、これやって…」と、段取りを確認できる。細かい作業に集中しているときは、どうしても近視眼的になりがちだ。特に時間が不足気味でパニックになりそうなときこそ、背極的にトイレにしけ込もう。

便所は基本的に1人ずつしか行けない

製図試験でトイレは1度に1人しか行けないルールらしく、去年の会場では手を挙げて尿意をアピールしても、試験官に待たされることが多々あった。今年は50人もいる大部屋なので、相当激しいトイレ争奪戦になりそうだったが、さすがに後半は排泄希望者が殺到してルールが緩和されたようだ。

こちらとしては、失敗すれば定規で腹を切る覚悟の大舞台。トイレに行くのに待たされるようなら、「いいのか?年寄りは我慢できないぞ。漏らすぞ。ここで出すぞ」と強硬に訴えるつもりだった。

さいわい早い段階で「こいつは頻尿だ」と認識してもらえたのか、後半では速やかに挙手の合図を見つけてもらえるようになった。