一級建築士製図試験の合格発表後、日建学院の統計結果を考察

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3日前の合格発表。通知書も届いて間違いないことは確認できた。免許登録の費用がやけに高いのは気になるが、ひとまず受かったということでつつましく祝杯を上げた。

合格後はもう試験のことなどすっかり忘れてしまうだろうと思っていたが、標準解答例の中身が気になって仕方ない。印刷して赤ペンを入れながら、ついつい夜更かししてしまった。製図を勉強しすぎると、図面を肴に酒が飲めるようになるようだ。

標準解答例に隠されたメッセージ

解答例をじっくり観察すると、「これはこういうことだったのか!」という発見がいくつも出てくる。まるで試験元からのメッセージが隠された暗号文のようだ。

おそらくこれは、そこそこ勉強して実際に試験を受けた人でないわからない感覚だろう。去年のリゾートホテルはろくに勉強しなかったので、落ちた後に解答例を見てもなんとも思わなかった。自分が受けていない過去問の解答例を見ても、いまいち勘所がつかめない。

来年以降の受験生のために、合格直後の感想をメモしておこうと思う。いろいろ失敗したが、きわどく受かった受験生のコメントとして、予備校のありふれた講評より参考になるかもしれない。

「プール設置階」は何だったのか

今年の課題で論点のひとつだったプールの設置階。「構造・設備的に不利」「ほかに1階に優先すべき部屋が多い」、さらには「全体の1割程度しかいない少数派」という理由で、試験後に叩かれ続けたプール1階組。

標準解答例の1つ、しかも①の方がプール1階だったのは、受験業界にとって驚きを持って迎えられたことだろう。しかし大手予備校の予想に反して、1階設置の答案例を公開していた勇気ある個人塾があったのも確かだ。もはや製図試験のスクールは、規模で選ぶ時代でなくなったといえる。

日建学院のウェブサイトに公開された集計結果によると、プール1階は縦横合わせて6%。まさか3階の18%より少ないとは知らなかった。それほどGL-2.2mの地下水位が警戒されたということだろうか。

アンケートのサンプル数は約100名。しかも日建学院内だけなので偏りはあるが、機密情報といえる分析結果を公開しているのはすごい。TACが突然過去2年分の自社課題を公開したのに触発されたのだろうか。

合格率はプール2階がダントツだが、なんとなく「2階を選ぶ良識派は他の部分もよくできていた」と推測できる。自分のまわりでプール3階にした人はいなかったが、日建では合格者が出ているので、結局設置階はどこでもよかった(あるいは減点で済んだ)のだろう。

少なくともプールの設置階に関しては、試験後にいわれたように昨年北客のようなランクIII直行の足切り項目ではなかったということだ。

「エントランス方向」は何だったのか

次に気になるのはエントランスの方向。「いずれに設けてもよい」という曖昧な文章が物議をかもした、もうひとつの論点だ。

スポーツ施設の特記事項

日建学院の統計表で、2番目の表のタイトルが「温水プール室の設置階」と重複しているが、これは「エントランス方向」の誤植だろう。公開から3日経っても、あいかわらず修正されていない。試験後の講評ビデオもそうだったが、微妙な間違いをそのまま残しておくところが日建らしい。

仮に「エントランス方向」と考えてこの表を見ると、「南側の合格率(61.1%)がいちばん高い」という意外な結果だ。東が低いのはなんとなくわかるが、桜並木や駐車場を向いた北と西より、南がベターというのは不思議に思う。

「受験者の割合」が合計100%を超えるところを見ると、この統計は複数エントランスを設けた人も重複してカウントしているのだろう。もっと詳しく場合分けしないと、「どの方向が有利だったか」は判断できない。ただ少なくとも言えるのは、「どの方向に出入口を設けても合格できた」という点だ。

曖昧な条件は無視してよい

以上をまとめると、

  • 明確な設置階指定がなかった場合(今年のプール)
  • 「いずれに設けてもよい」と指示された場合(今年のエントランス)

そういった要素は、「どう書いても足切りにはならない」という仮説を立てられる。プールやエントランスが1つも存在しないのは、さすがにまずそうだ。しかし、深刻に悩んでエスキースの手が止まってしまうよりは、消しゴムでも転がして表か裏かでさっさと決めてしまった方が、受かりやすい試験なのだろう。

結局、他施設との「一体的に使用」はなんだったのだろう。標準解答例からも、いまいち具体的なソリューションを読み取ることができない。昨年リゾートホテルの眺望指定と比べれば、今年はずいぶん思わせぶりな表現が多かった。

「一体的に使用」「世代間交流」「健康増進」…課題文に書かれている曖昧な文言は、「相手にしなくてよい」というメッセージなのかもしれない。