一級建築士製図試験総評~今年の問題はTACの課題2にそっくり!?

今年の製図試験は大手3校の中で、「TACの一人負け」という噂が流れている。当日夜中に公開された模範解答もあまりにお粗末な出来栄えで、不遜にも「自分の方がまだましでは」と思ってしまった。「講師の答案がこれじゃあ報われない」と、今頃TACの受講生は嘆いているだろう。

来年に向けて、60万とか85万もする他校の長期製図コースを検討している人もいるかもしれない。ただ、個人的には今年のTAC課題も捨てたものではなかったと考えている。特に課題2は本番試験に酷似していて、大いにプランニングの参考にさせてもらった。

敷地は賑やかだったが基本は変わらない

TACの8課題の中で、「外部施設との連携」を前提としたものはひとつもなかった。たいてい南側に公園がある角地の横長敷地で、バリエーションとしてはせいぜい課題6で公園が「堀と城跡」に変わったくらいだ。

日建学院の後半、特訓課題や特訓模試にはえげつないくらい周辺環境が出てきたので、日建生の驚きは少なかったと思う。中には本番課題より複雑な設定で、施設内更衣室から外部のプールに送客する連携まで想定されていたりした。

多くのTAC生は、外構盛りだくさんな本番の敷地図を見て、思考停止に陥ったはずだ。ただ、冷静に問題文を読み解けば、特殊な知識がなくても基本のゾーニング・動線計画で十分対応可能だったと気づくだろう。むしろ余計な知識が少ない分、素直にプールを2階に配置できたのではなかろうか。

プール・機械室1階配置を知らない強み

製図試験において、予備知識や持ち技が多いに越したことはないが、ときとしてそれらはエスキースの足かせになる。南面道路からの斜線制限を気にして、上層階をセットバックさせた人もいるが、TAC生なら「高さ制限」など端から思いつきもしなかったはずだ。

TAC課題の答案例をよく覚えてきた人なら、「プールと機械室の同一階設置はない」と判断できたはず。プール1階設置の課題では、必ず地下に機械室があった。自分がもし、日建課題の1階プール・機械室パターンを事前に見ていなかったとしたら、本番では恐ろしくて試せなかったに違いない。

直前に欲張って日建の演習課題なんて解くんじゃなかった。後半の奇抜な答案例は、「まあそんな考え方もある」くらいの軽い気持ちで眺めておくのが正解だ。設問の意図を汲んで、通常案と応用案をどのくらいミックスして繰り出すか調整できるくらいでないと、真のエスキーサ―とはいえない。

今回はプールの設置階自由で地下室もないから「機械室1階・直上2階にプール」、このワンパターンしかないと推測できただろう。それを前提として、健康増進部門の中から1階に下ろせる部屋を探すというゲームになったはず。

試験前にプールの階配置を整理した段階で、「8割はこの組み合わせでいける」と予測していた。非効率なので「多分ない」と言っていた同一階設置を本番で選んでしまったのは、なんととも皮肉な結末だ。

試験日が1週間早い10/7だったら、迷うことなくプール2階の王道パターンを選べたと思う。1週間余計に勉強して日建の変則パターンを覚えてしまったため、見事に罠にはまってしまった。判断理由の2割くらいは、敷地断面図に掘られた旧プールにおびき寄せられたふしもある。

TAC課題2が本番試験にそっくり

スクール課題のうちどれか一問、試験本番に最も近かったものを上げるとしたら、今年はTACの課題2を挙げたい。多目的スポーツ室の特記仕様、

  1. 天井高5m以上
  2. 辺長比1.5以下
  3. 無柱空間
  4. 約200㎡
  5. 空調機械室併設

という5点セットは、TAC課題2のトレーニングルームとまったく同じだ。エントランスホールの3層指定吹抜けや健康相談室まで酷似している。去年の日建みたいに「的中!」とかやればいいのに、タックは謙虚だ。これは社歴に残る大当たりと言ってもいい。

無意識にこの課題をイメージしていたのか、自分の解答もTAC2の答案例と近い感じになった。特にプールと更衣室、トレーニングルームの組み合わせがそっくりだ。

単一ダクトか床置きダクト接続型の空調機械室は、多目的スポーツ室の隅に20㎡くらい確保。上階の吹抜けには空調室の直上にDSのみ残す。3階設置なので吹抜けは書けなかったが、7×8mの4コマ割り当てているところまで、答案例とまるっきり同じになった。

1階プール横置きで左に更衣室。多目的スポーツ室は3階に上げたが、更衣室直上でプール脇の4コマ利用。3層吹き抜けはプールの上側長辺、中央左寄りに配し、その隣にプール観覧ギャラリー=見学コーナー。

管理部門や機械室は敷地右寄せでプール直結。健康相談室は1階よりむしろ上階に上げて、管理ゾーンと共用ゾーンの中間部に設ける。利用者もスタッフも、相互に短い動線でアクセスできるよう配慮。

プールが平屋の1階なので、答案例どおりピット下は独立基礎で、しっかり3mは根掘りしておいた。

地下水のことは認識していたが、それが何を意味するのかピンとこなかった。むしろ記述では、「地下水位に配慮して基礎底面はGL-3.0m、適切に計画した」なんてトンチンカンなことを書いてしまった。これは恥ずかしい。

屋上ウォーキングつくった人いますか?

TAC優等生なら、さらにプール屋上にウォーキングトラックを設ける。これと連動させるため、あえてコンセプトルームは3階に設置。ポールやストックを貸し出し、屋上でノルディックウォーキングできるコンセプトなんて素敵じゃないか。ウォーキングなら高齢者も参加できて、世代間交流を促進できる。

3階の約100㎡軽運動室をコンセプトルームに変えれば、そのまま今年の模範解答になりそうなくらいの完成度だ。

自分はパッシブデザインのトップライトを優先して、8個たっぷり屋上に設けてしまった。課題2的な散策路をデザインする余地がなかったので、ウォーキングコースはあきらめて緑化程度にとどめておいた。

一応、ギャラリー横から屋上に出られる扉を描いておいたが、施設利用者が草ぼうぼうの屋根に出て何をするのか意味不明だ。唐突にテーブルセットを置いてテラスっぽく見せてもよかったが、プラスになるかどうかわからないのでシンプルに手つかずの大自然を残しておいた。

草刈り・水やり・開閉式トップライトの掃除くらいであれば、管理ゾーンから屋上に出られる扉を設けた方がよかったと思う。プール1階設置した場合の3階屋上の利用方法…もっとシミュレーションしておくべきだった。

吹抜けに面するEVホール

プール横置きで3層吹き抜け、観覧ギャラリーというのは、TAC課題にさんざん出てきたお決まりのパターン。相当数のTAC生が、課題2よろしく利用者階段とエレベータを横に並べて、EVのある2コマ目の余白にホールを設けたことと思う。

「7m×7m×2コマの横置きコアに3m廊下を通す」、プール横置きの場合の必勝法だ。階段を上ったら開放的な吹抜けに迎えられ、プール開口部を通して南の公園まではるばる見渡せる。タック式採点なら満点に近い共用部のデザインだろう。

本番ではややアレンジしたが、吹抜け隣接の見学コーナー、EVホールはバッチリ計画できた。というよりも、建蔽率超過気味だったのでスペースが余っただけの話。2~3階の利用者廊下などは、すべて幅7mで大変ゆったり設計できた。

こういうホール連続型の通路は非効率なので、むしろ減点という噂もある。バリアフリーという観点から、余分なスペースは多めにみてほしいものだ。廊下幅が7mもあれば、車椅子5台は同時にすれ違いできる。

今年は未完も少なく減点勝負か

今年の課題は、一体利用アプローチの計画にさえ惑わされなければ、要求室も少なくプランニングの難易度は低かったと思う。問題用紙は法外に巨大だが、設問自体は例年より易しかったとする意見が多い。

確かに試験終了後まわりを見回してみると、空白だらけの未完組は一人もいなかった。エスキース中に呆然と固まっているとか、作図中に何かやらかして耳障りな舌打ちや独り言が聞こえてくるのも皆無だった。

課題の解読に時間は取られたが、外構の駐車場・駐輪場がないだけでも作図時間は短縮できたと思う。かなりの数の受験生が、余裕を持って完成度の高い図面を仕上げてきているので、あとは細かい減点争いと見栄え勝負になりそうな予感だ。

今年はプール1階・3階でも、エントランスがどの方位でも、一発ドボンの失格はないと思う。防火区画や延焼ラインも減点で済む。最低限、建蔽率や床面積をクリアした良識ある受験生同士で、減点争いの消耗戦になると予想される。