一級建築士製図~市販テキストの発売日と7月中からできる試験対策

今年の一級建築士、製図試験の課題は「スポーツ施設(温水プール付き)」。各スクールの説明会や講座が始まる前の7月末、最初に目を通しておくべき資料は当該テーマの『建築設計資料』だ。

8月になれば、今年の課題に対応した練習問題を含む市販テキストが、いくつか発売される。各テキストの発売日と、参考になりそうな『建築設計資料』をまとめてみた。

7月中からできることはある

今年学科試験を受けた人は、ひとまずお盆休みまでゆっくり休みたい気分かもしれない。しかし去年学科に合格したときの記憶をたどると、試験直後に自己採点して「受かった!」とわかった直後が一番気力に満ちていた。

この勢いで製図の準備もどんどん進めた方がいい。もし製図初受験なら、7月からどんどん図面を書いて枚数を重ねないと、過年度生に追いつけない。「8月にテキストが発売されてから…」と油断してはいけない。

7月中も、参考資料を読んだりウェブで情報を集めたり、対策できることはある。最初はウラ指導さんのエスキース本でも読みながら、過去問に目を通してプランニングの基礎を学んでおこう。階段やエレベーターの寸法も、いずれ暗記が必要になる。

ひたすら過去問を暗記する学科に比べると、製図の練習は目や手先を酷使するので体力勝負だ。特に8~9月の暑い時期、汗を垂らしながら慣れない製図版に向かうのは苦行といえる。7月中から作図して、早めに体を慣らしておくのが得策だ。

日建学院の課題対策集は8/17発売

8月に発売されるテキストのうち、本番と同じ形式の練習問題が含まれるのは日建学院『設計製図試験課題対策集』と設計製図対策研究会『直前対策と課題演習』の2冊だけだ。

課題をすべて解ける時間がなく「どちらか一冊」というなら、日建学院の方をおすすめしたい。今年の「スポーツ施設」版は8/17発売の予定で、アマゾンの予約注文を受け付けている。

昨年、日建学院の解答例客室はすべてツインコリドー型に偏っていた。このパターンしか覚えなかった受験者は、本番で泣きを見たことだろう。一方、後者の設計製図対策研究会の本も、掲載課題がすべて配置図・1階平面図分離型になっていて、見事に予想を外していた。

対策研究会の問題集は8/22発売

『直前対策と課題演習』の方は7月中からアマゾンで予約注文を受け付けている。しかし今年は試験日が1週間遅いからか、8/22の発売予定になっている。

昨年の『直前対策と課題演習』は、最後の方になると敷地図の北が用紙の上方向でなかったり、アートガーデン・遊歩道とか出てきたり、ひねりまくった設問でいい刺激になった。今読み返すとE課題に湖が出ていて、湖畔ラウンジは「湖への眺望に配慮する」と特記されている。これが「すべての客室は…」となっていたら、大当たりだったといえる。

製図学校に通っている人も、念のため市販テキストに目を通しておいた方がいい。日建学院の書籍は講座でもらえる課題を流用したものだが、対策研究会の課題はほかで手に入らないはずだ。

日建以外の予備校受講生なら、2冊とも買って目を通しておくのがベター。あらゆる出題パターンをしらみつぶしに網羅して、試験本番でのサプライズを減らすのが目的だ。

製図参考書の定番『建築設計資料』

試験用のテキストではないが、当年テーマのビルディングタイプに理解を深める参考資料として、建築思潮研究所の『建築設計資料』がよく引き合いに出される。

公共施設を中心に、水族館や植物園などかなり特殊な用途も含めて、設計のポイントと作品事例を紹介している本だ。設計事務所の本棚には、たいてい何冊か並んでいる。

建築設計資料 28 記念展示館

すでに100種類を超えて出版されており、中には『公衆トイレ』なんてニッチなテーマもある。なぜか『葬儀場・納骨堂』にいたっては、美術館や学校並みに2冊も出ている。美術館・学校・病院などのメジャーな分野になると、大型レンタルビデオ店の映画ジャンル並みに細分化されている。

スポーツ施設関連の3冊

出版が古いものは古本を手に入れるしかないが、安いものは150円からプレミア級だと1万円以上と、価格もまちまちだ。今年のテーマにマッチするのは、『2 体育館・スポーツ施設』『41 体育館・武道場・屋内プール』『25 スポーツクラブ』の3冊。

課題発表直後に、通販の在庫はすぐ売り切れたようだ。手に入りにくい3冊分の概要は、こちらの記事にまとめてみた。

日建学院のウェブサイトなら、上記3冊それぞれ税込定価4,089円のところ、3,500円の特別価格で買える。通学生でなくても注文できるようだが、フォームを見ると住所や受験番号の入力が必須になっている。電話番号は省略できるようだ。

図書館には置いていなかった

『建築設計資料』が近所の図書館に置いていないか、建築コーナーをチェックしてみた。自治体の中央図書館クラスで40冊は並んでいたが、目的の3冊は見当たらなかった。念のためパソコンで検索してみたが、近隣市町村も含めて今年の3冊は所蔵していないようだ。

図書館にある建築設計資料

ためしに大学のOPACも検索してみたが、建築学科の図書室も含めてこのシリーズは1冊も在庫がなかった。実務に寄り過ぎていて、学生には不要ということだろうか。あるいは実例が古すぎて時代に合わないのかもしれない。