一級建築士製図試験~今年はどうやら少数派らしいプール1階擁護論

製図試験の採点はブラックボックスなので、12月の合格発表まで外野で何を議論しても茶番でしかない。それでも、もっともらしい持論をぶつけ合って楽しむのが、毎年恒例の暇つぶし行事といえる。

自分はプールと機械室を1階に設けたが、スクールの見解によると、どうやら今年は少数派だったようだ。しかし、あえてプールを1階に配置したのはそれなりに理由がある。去年の試験で客室を北側に持ってきた人も、それぞれなにかしらの事情があったはずだ。

あらためて、プール1階のメリットとデメリットを比べてみようと思う。

プール1階ドボンはない

日建の総評でプール1階アウトとは明言されていないが、「2階に計画した受験者が多かったようです」とやんわり強調されている。昨年リゾートホテルの眺望のように、「プール1階=ランク3直行ドボン」説もささやかれているが、いろいろ考えるとその線はないと思う。

もし地下水位や地盤構造を理由に「1階プール=即死」とするなら、要求室リストの最上段、昨年眺望指定があった欄に、もっと目立つよう記載されるはずだ。今年はここが「エントランスは…いずれに設けてもよい」という曖昧な指示だったので、なんにせよ1発アウトはないとみた。

万が一、昨年と似たように「エントランスは、桜並木との動線に配慮する」と書いてあったら、西側アプローチ以外はダメだろう。まわりに聞いた限り、去年の課題で客室の眺望を無視して受かった人は、自分も含めて一人もいない。

「いずれに設けてもよい」と書かれた以上、方向はどこでもよいし、数もいくつでもでもよいと考えるのが素直な解釈だ。これは単に受験生を惑わせて、時間を浪費させるためのトラップに過ぎないのではなかろうか。

少なくともプールやエントランスの配置に関して、一触即発の地雷はなかったと信じたい。

ゾーニング的にはプール1階もあり

健康増進、階層分離のシミュレーションは、エスキース中にさんざん行った。

最初は定石どおり「プール2階&機械室1階」のパターンで検討したが、健康増進部門の諸室を1階に下ろしてもまだスペースが余る。むしろ思い切って、「プール&更衣室A」という独立したブロックを1階に持ってくるのもありかと思った。

利用者の動線を考えると、

  • 1階:更衣室Aで着替えてプールへ
  • 2~3階:更衣室Bで着替えて健康増進部門へ

というように、階別でゾーニングするとすっきりする。

製図試験本番の階振り分け案

更衣室から利用諸室に向かう動線は短いに越したことはない。1階の更衣室Bで着替えて2~3階に向かうというのは、あまり魅力的に思われなかった。TACや製図試験.comさんの答案例のように、入館直後に上足履き替えさせるなら、まだありだと思う。

地下水位の問題

「GLマイナス2.2m」と明記された地下水位。プールを1階においてしまうと、どうしてもそれ以下の地盤にピットを掘らざるを得なくなる。いろいろ悩んだが、練習問題で地下水の扱いに慣れていなかったこともあって、階別ゾーニングを優先させてしまった。

事前に解いた課題で、地下水位を取り上げているものは1つもなかった。優先度が低いと思って、勝手に無視してしまったのかもしれない。なんとなく「地下水位以上に基礎を設ければよい」くらいの軽い気持ちで考えていた。

TACでも日建でも、1階にプールを設けた場合は、基礎底面がGLマイナス3mはあった。本番で、プールサイド下の配管ピットを圧縮して地下水位2.2mに合わせる案も考えた。しかし、かえって「プールの構造がわかってない」と減点される可能性を考え、念のため3m掘っておいた。

まさに「練習で試していない技は本番で出せない」という感じだ。一か八かで変なリスクを負うよりは、減点覚悟で持ち技を繰り出した方が、精神的に楽に感じた。

基礎構造の「経済性」も問題用紙で強調されていた点だが、これは独立基礎を選んだことでクリアできたと思う。日建課題3Bは1階プールでベタ基礎だったが、TACの場合はプールが平屋だと独立基礎になっていた。

構造の合理性・経済性という観点からは、「重たいプールを2階に上げる方が不利」という考え方もできる。ピットに沸いた地下水も、ポンプで排出して対策できないことはない。湧き水の問題は技術的に解決できるが、ゾーニングはやり直しがきかないとも言える。

プール配管の問題

プールと機械室が隣接する場合、地下ピットを通じて給排水のパイプを通さなければならない。DSほどではないが、プールに必要な配管は相当太くてかさばるものだろう。

両者1階設置だと、配管のため余計に地盤を掘らないといけないデメリットがある。プール2階で機械室直下の方が、温水の流れもスムーズだろう。

しかし断面図を書いてみると、2つの部屋を1階で隣接させれば、PSの長さ自体はわりと短くて済む。あくまで「配管の長さ」という面では、管を上に上げるか横に通すかの違いで、そう違いはないように思う。むしろ位置エネルギー的には、温水を上階に押し出して自然落下させるより、同一階で横流しする方がポンプの負荷が小さそうにみえる。

プールのポンプ室

もしかすると、「配管の横引き」には気づいていないデメリットがいろいろあるのかもしれない。プールが1階だと地下から配管するため、ここでもまた地下水の問題が出てくる。

一級建築士の製図試験で、構造・設備的なメリットと動線計画のメリットが対立する場合は判断が難しい。事前告知の留意事項を参照すると、「ゾーニング・動線計画」は「構造耐力上、安全、経済的…」よりも上になっている。

全体的なバランス感覚を問われる試験なら、プール2階の方が無難かもしれない。しかし階別ゾーニングの明快さが、構造・設備のマイナス面より評価されるなら、プール1階も間違いではないと思う。

公共施設はプール1階が多い

設計者というより利用者としての印象だが、公共施設のプールは1階にある場合が多いように思う。

近所にある公営のスポーツ施設を、どこでもいいのでイメージしてもらいたい。典型的なパターンだと、エントランスを入って右か左に券売機があり、その近くに受付カウンターがある。券売機で売っていない回数券は、受付で個別に販売している。

プールの券売機

プールの受付はそのままエントランスホールに直結していて、そこにサブ受付がある。プール受付で先ほど買ったチケットを見せてチェックイン。下足と上足の切り替えは、受付前か更衣室の中にあるはずだ。そして脱いだシューズは使いまわされたビニール袋に入れて、ロッカーの中に入れる方式。

オープンな下足入れで間違えたり盗まれるトラブルを避けるためか、シューズはロッカー内で自己管理するケースが多い。あるいは下足入れが鍵付きの場合もあるが、管理の手間を考えると更衣室ロッカーひとつで済ませた方が簡単だ。

施設によっては、いったん地下の更衣室に下りてから階段でプールに上がる場合もある。それでもなぜか、プールはたいてい1階だ。

3階や地下配置のプールも存在する

プールが1階にないスポーツ施設の事例も思い出してみた。自分の知る中でイレギュラーな配置としては、参宮橋の国立オリンピック記念青少年総合センター(3階設置)や、目黒区民センター体育館(地下1階)などが挙げられる。

今年の試験では「プール3階」も分が悪いといわれるが、最上階プールも実例がある以上、不可能ではない。なにかしら構造なデメリットはありそうだが、地下水位には触れずに済ませられるので、1階より有利かもしれない。

上記の事例のように屋根を膜構造にしたら、すばらしく解放的なプールを実現できそうだ。建物の高い位置にあるので、窓からの自然採光にも有利と思われる。

そう考えると、1階と同じく3階プールもあながち悪くない。プール2階配置に比べて1階や3階が断然有利とは言えないが、少なくともそれを理由に足切り採点されることはないと思う。

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