一級建築士製図試験の面積区画はこう書け!試験元からのメッセージ

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平成30年製図試験の解答分析。延焼ラインに続いて、防火区画の表現方法をおさらいしてみよう。

例外的に今年は解答例に詳しいメモが追加されたので、今後は指示通りに図面表現すればいいと思う。試験元が積極的にコミュニケーションをとってきた、歓迎すべき傾向だ。

面積区画については、解答例①②の2パターンあることがわかった。問題は来年以降の試験で、どちらの方法を選ぶかということだ。

異様に細かい面積計算

今年の標準解答例で、試験元の狂った本性が垣間見えた図面右下の注釈欄。図面①では異様な細かさで小数点第2位まで区画の面積を算出し、その根拠を説明している。

西側(1階428.75㎡、2階499.6㎡、3階230.6㎡ 計1,158.95㎡<1,500㎡)

東側(1階712.25㎡、2階285.8㎡、3階316.4㎡ 計1,314.45㎡<1,500㎡)

標準解答例①より

面積区画の注釈

敷地中央、各階の防火設備で区切った東西面積を計算しているのだが、この説明スタイルはちょっと異常だ。まさか受験生が試験中に電卓を叩いて、ここまで計算できるとは思えない。

きっとこの調子で、すべての採点項目について法令集くらい分厚い規則集が存在するのだろう。そして今年はルールブックに「プールサイドの柱」という一節が追加されたはずだ。

「採点が理不尽だ、不公平だ、雑だ、適当だ」と叩かれ続けている建築技術教育普及センター。長年クレームに耐え、ついにブチ切れた採点官の姿が背後にうかがえる。

答案② 竪穴区画を特防に格上げ

解答例①②では、防火区画の表現としてまったく異なる2種類のソリューションが示されている。もちろん「どちらもあり」という意味だろう。

まず②の方から見てみよう。これは各スクールの練習問題に出て来た標準的スタイルで、大半の受験生が選んだ方法と思われる。

竪穴区画は…(中略)…所定の防火設備で足りるが、面積区画を行うため所定の特定防火設備により区画した。

標準解答例②より

1フロアの延べ面積は、敷地面積1,664㎡×建ぺい率70%=1,164.8㎡から1,500㎡に収まることが保証されている(そうでなければ別の意味でやばい)。そのため、階段・エレベーター・吹抜けなどの竪穴区画を「特定」防火設備に格上げすれば、自動的に面積区画も達成されるという考え方だ。

プールの2階、吹き抜けの室内側はすべて壁でふさいでしまい、防火設備なしで済ませている。トレーニングルームや廊下の突き当りをガラスにして、上階から見下ろせる方式(第2の見学コーナー)にするのもありだと思う。その場合もプールに面した開口部を特防にすれば、竪穴・面積区画を同時にクリアできる。

対策としてはルールが簡単なため、試験前の防火区画まとめ記事でも推奨したテクニックだ。本番もそのとおり実行して難なく合格できた。解答例②と同じ方法だったので、間違いはなかったと思う。

答案① 各フロアを特防でちょん切る

解答例①で表現されている防火区画は、予備校課題で紹介されなかった方式だ。しかし実務の現場では、こちらの方がスタンダードなのかもしれない。

階段・EV・吹抜けの竪穴は法令どおり「所定の(普通の)防火設備で済ませる。その代り、間仕切りと廊下を縦断して、建物を真っ二つに区切る面積区画ラインを設定する。この仮想ライン上にある通路・開口部に、特定防火設備を設置するという考え方だ。

防火戸の図面表現

②のように竪穴をすべて特防で区画するよりは、①案の方が設備代が安く済んだり、施工が楽だったりするメリットがあるのかもしれない。逆に「特防設備をまとめ買いしたら割引がきく、工事が簡単」とか事情もありそうなので、素人考えでは何とも言えない。

今後の製図試験では基礎構造のように、防火設備の「経済性」まで問われてもおかしくない。区画も延焼もいっしょくたに解決するため、すべての開口部にマル特マークを書く手抜き(手間かけすぎ?)図面は速攻排除されるだろう。

今後は面積表に区画面積も?

今後の受験生が取るべき防火区画の対策としては、答案②の竪穴=特防が許されているならそちらが無難だと思う。①のように上下階合わせて縦に面積区画を設けると、延べ面積の検算が必要になる。計算が面倒な分、②よりプラスに評価されるという保証もない。

もしかすると、来年は建築面積・床面積の表の中に、面積区画の算定式を書かせるスタイルになるかもしれない。一見作業が増えて地獄に見えるが、自分のように設計センスがなくマニュアル化で切り抜けたい受験生には有利だ。この試験は常に4割が受かる相対試験であることを思い出そう。

SSの定番化

SS(スチールシャッター)の記号は、PS/DS/EPSほどなじみがなかったので、問題用紙に凡例もなく本番で使ってよいのか迷った。しかし解答例は両案とも吹抜けの防火設備に「SS」と書いてあるので、今後は試験標準の表記法と考えてよさそうだ。

来年はPSなどと同様に、要求図書の特記事項に凡例としてSSが記載されそうな気がする。今年は特に記入の指示がなかったので、最低マル特・マル防マークだけ書いてあれば済んだと思う。

吹抜けのシャッター点線に追記するだけなので、覚え方としては簡単だ。ミミズみたいに2画で済む簡単記号なので、作図の負担は少ない。もちろん断面図のシャッターにも、忘れずに追記しておこう。