一級建築士製図試験~本番の感想と反省。北側客室配置でランク3

独学でチャレンジしてみた初めての製図試験。試験当日の会場の様子と、課題の内容、反省点など振り返ってみよう。結局ランク3で不合格だったが、本番の心理状態やミスしやすい点を参考にしてもらえればと思う。

試験会場の様子

製図試験は11時開始なので、当日の朝はゆっくり準備できる。普通に家で朝食を取りながら、記述ノートの見直しを行った。さすがに直前で新しい課題を解いたり解答例を分析しても、消化しきれるとは思えない。

平行定規と道具類、コンビニで買った昼食、座席に敷くクッションを持って、電車で出発した。A2サイズの製図板は、不安定だが網棚にぎりぎり載せることができる。試験会場に近づくと、徐々に製図板を抱えた受験生が増えてくる。

試験会場は学科と同じ大学で、教室も一緒だった。6人がけのシートの両端に2人ずつ座らされるので、スペースは余裕がある。最前列だったので、まわりの様子が見えずにつまらないと思ったが、開始前に目の前に積まれた図面を観察できるという特典があった。試験中も、他の人のペースを見て焦らされることがないという点ではプラスだった。

一級建築士、製図試験会場の注意事項

開始時間が近づくと、スタッフの方が机の上に問題と解答用紙を並べて、配布する準備を始めた。最前列に座っていたため、手前に束になって置かれた下書き用紙が裏から透けて見える。

下書き用の紙は薄いので、裏返しても印刷された内容が見えてしまう。配布物が多いので事前に列ごとに分けてスタンバイする必要があり、前の方の人に見えてしまうのは仕方ないのだろう。

エスキース用紙など別に見てもしょうがないと思ったが、何やら敷地図のようなものが見える。今年は変則的に下書き用紙の方にも何か書かれているようだ。下側は水面、道路は上側なので、上が北なら南北に下る傾斜地だろうか。まわりの建物や桟橋らしきL字の出っ張りもうっすらと確認できた。

度肝を抜かれる課題の文章量

試験が始まって問題用紙を見ると、敷地図が省略された代わりに、文字でびっしり埋められていた。敷地の情報は下書き用紙の左上1/4を使って、例年より詳しく書き込まれているようだ。開始前に裏表逆に見ていたせいで方位が混乱したが、日建学院の予想通り南側への傾斜地になっていた。

課題を上から順番に読み進めて、まず気づいたのは要求されている客室が多すぎる。客室Aが35㎡という結構な広さで10室。プラス車椅子用のBとファミリー用のCが2室ずつ。そして指定床面積は 2,400~2800㎡と広めに指示されている。

一級建築士、製図試験の問題用紙

大浴場やトレーニングルーム、地域ブランドショップは想定内として、内風呂だけでなく露天風呂が要求されているのは面倒だ。さいわい日建学院の市販テキストに、最上階に露天風呂がある解答例が載っていた。男湯女湯、左右対称に風呂場の一部を外に開けばよいので、イメージすることはできた。

「コンセプトルーム」という見慣れない要素があり、記述の方に自分でコンセプトを書いて提案するとある。これはおもしろそうだとポジティブにとらえたが、ネタを考えるのに結構時間を取られた。

車回しと空調・給湯中央制御

外構の駐車台数は4台と少なめだが、「直径12mの車回し」という未知の要素が出題された。課題では一度も練習していないが、要は12mの円が収まる広場を用意すればいいのだろう。

試験本番にコンパスは持って行こうと考えていたが、すっかり忘れて置いてきてしまった。テンプレートではサイズが足りず円が書けないので困ったが、とにかく寸法さえ合わせておけばよさそうに思われた。

設備計画で「外気処理空調機+ファンコイルユニット、熱源機器+貯湯槽による中央式給湯方式」という指定が出て仰天した。客室ごとの空冷ヒートポンプしか練習しておらず、ファンコイルユニットや配管をどう作図すればよいのか、さっぱりイメージできない。

とにかくすべての部屋にDSもPSも張り巡らせておけば、空調も給湯も中央制御になるかと考えた。外気も機械室で調整してから、DSで各室に供給すると仮定した。2階の客室には、すべての部屋に1m四方の竪穴を設けて、DS/PSを配置した。シャフトが多いせいで、いつもより作図に時間がかかった。

配置図は単独出題でなかったので安心した。記述については、コンセプトルームと地盤条件以外はなんとかなりそうだ。ダクトルートに対する回答は意味不明だが、手持ちのボキャブラリーを組み合わせて適当に行間を埋めてみた。

犠牲系を発動して北側客室配置

室名表の最上部に「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する」という特段の指定があった。さすがに目立つので、マーキングして重要事項とチェックした。決して見落としたわけではない。

ところが敷地図を見ると、湖は南に見えるものの名峰がどれなのかわからない。とりあえず南側にグレーの大きな矢印があり、「湖と遠くに山並みが見え景色がよい」とコメントがついている。客室を南に向けておけば条件を満たすかと思って、部屋の配置を考えてみた。

いつも通り7mスパンで考えてみたが、敷地は54mと幅広でも2階に客室が収まらない。どうやってもAの10室すらすべて南に向けるのは難しく、1階にも客室を回さないと収まらない。10分以上試行錯誤したが、うまいやり方が見つからない。

課題文を読むのに時間がかかってしまったので、早く記述や作図に入りたいという焦りもあった。これがウラ指導さんの本に書いてあった「犠牲系」かと思い、全室南側眺望は諦めて進めることにした。

日建テキストの課題で練習した通り、2階は吹き抜けを中心に、南北に客室配置するツインコリドー型。客室Aの半分は北向きになってしまうが、そちらも道路越しに樹林が見えるから、悪くないと考えることにした。

客室Cはいちばん長めのよさそうな2階の南東に配置した。バリアフリーのB室は2階に収まらなくなったが、「エントランスから段差なしでアクセスできた方が便利だろう」と考えて1階に下ろした。

地階は北側1スパンを省いて造成を最小限に抑えた。「経済性」という語句は課題の必須事項に入っていなかったが、配慮してあればプラスになるはずだ。

もうひとつの矢印を発見

エスキースが終わってプランが決まったところで、敷地図の右下にもう一つの矢印があることに気づいた。「遠くに名峰が見え景色がよい」…矢印がやや東に傾いていて、見れば敷地の東も斜めに樹林が伐採されている。ということは、客室として「南だけでなく東の眺望もあり」ということに今さら気づいた。

南東配置という縛りなら、他にもやりようがあったかもしれない。しかし客室Aの「間口は心々4m以上」という制約から「8mスパン」を思いつけなかった時点で、全客室を2階に収めるのは不可能だったといえる。6~7mのスパンなら練習したので使えたが、8mというのは試したことがなく、本番でも思い浮かばなかった。

今からエスキースをやり直すのは時間的に無理だとあきらめ、北側客室配置のまま作業を続行することにした。課題の指示に違反していることは承知のうえだが、図面が未完成で終わることだけは、なんとしても避けたい。

手が震えて字が書けない

エスキースの途中で妙にスペースが足りないと思ったら、敷地図に1/4を占有されているためだった。時間もないので倍コマプランにとどめて、1/400図面は清書しなかった。そのため、かえって本番の1/200図面を書きながら、考える時間が増えてしまったといえる。

記述も分量が多かったので、いつもより長く1時間以上かかった。最初の書き出しから手が震えて、5回も消してやり直した。練習と違って、試験本番の緊張では文字がまともに書けない。

しばらく書いても震えが止まらず、画数の多い漢字を書くのは無理だと思った。「配慮した」「考慮した」は「…とした」に統一して、なるべく簡単にひらがなで書けるよう工夫した。

作図時間が足りない

作図についてはそろほど不安要素がなかったが、やはり練習で書き上げた枚数も少なく、ペースが遅かった。断面図に着手したところですでに17時。平面図の家具とタイルの書き込みもまだだったので、見直す時間はないと悟った。

一瞬「もう無理か」と思ったが、気を取り直して超速で断面図を仕上げた。植栽は殴り書きになってしまったので、まだ書かない方が見た目的によかったかもしれない。最後に書き入れた室名は、自分でも読めないくらい字が汚い。

風呂場にサウナが必要だったのを思い出し、シングルラインで追加した。屋根の太陽光パネルや防火シャッター、ドライエリアのタラップなど書き忘れたパーツは多い。また、ラウンジやレストランの家具はひとつも書けなかった。採光や通風などパッシブデザインに関するコメントも書く時間がなかった。

今思い出すと、ガラスのサッシ線を0.3mmシャーペンで細く書いたり、奇妙な作業をしていた。練習でも使わなかった0.3mmなので、当然芯がポキポキ折れて苦労した。なぜあんな無駄なことをしたのか、自分でもよくわからない。

残り30分でなんとか断面図を完成させ、最低限の室名と植栽を記入して終了時間を迎えた。相当雑な図面になってしまったが、未完成で即失格という事態は避けられたと思う。

不合格図面を作図する悲しさ

北側に客室を配置してしまったことが、作図中もずっと気がかりだった。重要事項に違反して足切り失格か大幅減点…そんなことを考えながら、自分でも出来が悪いとわかっているプランを仕上げるのは心理的にきつい。

「当日中にランク4確定だけは避けたい」という一心で、なんとか書き上げた。まるで敗戦撤退のしんがりを務めるような悲壮な気分だ。学科試験のときよりも、試験中のプレッシャーは3倍くらいあるよう感じた。

帰りの電車でも意気消沈していたが、目の前にラオウの「我が生涯に一片の悔い無し」というTシャツを着た人がいて、思わず噴き出してしまった。

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もし来年再受験することになったら、勝負Tシャツとして本番に着ていきたいと思った。

「北」に翻弄された2017年

翌日から続々と各予備校の解答例が発表され、2階の客室については「南東のL型配置」が正解とわかってきた。8mのスパンを2分割すれば、客室Aを細長くして5スパンで収められるというテクニックには脱帽した。これを思いつけるかどうかで勝敗が決まったといえる。

2017年「今年の漢字」は「北」。製図試験の課題製作者は、これを予言していたとの説もある。「条件を無視した答案があまりに多いので、北客でも受かる可能性がある」という説に望みをかけたが、やはりだめだった。

12月に届いた不合格通知のハガキによるとランク3。遠くから見ると太いIやIIに見えなくもないが、やはりIIIだ。「知識及び技能」が著しく不足しているもの…

一級建築士、製図試験会場の不合格通知

それでもランク4ではなかったので、部屋の配置や細かいミス以外に重大な失敗はなかったと思われる。例年より合格率の下がった製図試験だったので、難易度は高かったのだろう。

試験後もしばらくは本番課題をエスキースする夢に悩まされた。合格発表まで2か月も経つと、さすがに心の準備もできて気にしなくなった。やはり独学では厳しかったかという反省もあるが、それ以前に勉強量が全然足りなかったと思う。