TAC課題8をプール縦型で解いてみた♪無理やりスロープを設ける裏技

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TACのスポーツ施設課題は前半ほとんど似たような問題ばかりだった。車は2~3台、2面接道で必ず南に公園が用意されている。今年はおそらくこの形式しか出ないという強い信念のもと、縦横プールと吹抜け、屋上庭園の組み合わせを網羅し尽くす作戦なのだろう。

城跡が出てくる課題6あたりからプール設置階自由、要求室が大きくなり制約が増してくる。最後の課題8では、特大プール、眺望指定、無柱空間ホールと、これまで出た要素の全部乗せという感じだった。

全国ランクF☆☆☆のエスキーサーが晒すプール配置案

TACの課題から1問選ぶとしたら、お堀の眺めに癒される6もよいが、難易度的にはやはり8だろう。プールが25×10mと巨大すぎて、スパン割り的に東西横置きしかありえないといわれている。間違ってプール縦置きを選んでしまうと、永久に解けないのだろうか?

試しに何日か、エスキース合計10時間くらいかけてプール縦型で解いてみた。吹抜けや3階ホールのかたちがいびつになったが、もう2時間くらいかけて修正すれば、採点官もうならせるプランが完成すると思う。

TAC課題8の答案例

今年のスポーツ施設は、プール縦でも横でも、おそらく解ける。ただし、難しい方を選ぶとエスキース時間が圧倒的に不足する。試験本番で4時間かけて完璧なプランを考案したとしても、記述と作図が間に合わず絵に描いた餅に終わる。

8×8mスパンはありなのか?

この課題でなぜプール縦型が難しいというと、25m長さの長辺の方で8mスパンを使わざるを得ないからだ。先日整理したスパン割り仮定によると、

  1. プール幅10m超
  2. プール長さ25m

いずれかの場合でスパン8mを採用することになる。しかし両者を同時に適用すると、8×8mという構造的に際どいグリッドが出現する。現実的には可能なのかもしれないが、試験的にはNGといわれる禁じ手だ。どのスクールの答案例でも見たことがない。

課題8ではプール幅10mなので、両脇プールサイド2m足して14m。7m×2スパンで間に合うのでは?という考えは甘い。TACではプール室の特記事項になかったとしても、任意で1/12スロープを付けないと死刑なのだ。

プールにスロープが必須な理由

課題文の上の方に、以下の文言が書いてある。

なお、計画に当たっては、特に次のことが求められている。

…②スポーツ施設部門におけるバリアフリーに特に配慮した計画とする。

湖畔のリゾートホテルで過ごしたことがある人なら、こういう注意事項の重要性は重々承知しているはずだ。「特に」「特に」と2回も強調されている以上、スポーツ部門の主役たるプールにバリアフリーのスロープを設けないわけにはいかない。

というわけで、TAC課題8のプールサイズは実質的に25×11.5mという要求仕様。そして答案例はプール短辺方向に8mを2スパン使って16m稼ぎ、長辺方向は6mスパンを連続させて解いている。

ホールやトレ室の大空間が50の倍数でない微妙な床面積。ストレッチスペースの直径6m、屋外テラスが80㎡という条件から、7×6=42を2コマという数字が連想される。

基本的に6mスパンは使いたくないので、7~8mスパンで収めたい。しかし敷地の長辺間口が48mしかないので、ヘリ空きを考えると東西方向8+8+7+7+7+7=44mが限界だ。縦型プールの横幅で8mを使い切ってしまうのはもったいない。

TACの鬼門であるプールスロープ。これを今までにない方法で縦型プールに接続できないか考えてみた。ランク3の頭脳をフル回転させて、思いついた方法を3つ紹介しよう。

①プールサイドを片方潰す

課題8は盛りだくさんなので、全階トレースすると半日くらい費やしてしまいそうだ。試験前なので、プランの肝となるプール室のレイアウトだけ起こしてみた。

TAC課題8のプール配置案

日建学院生ならまず間違いなくスロープを無視するだろう。あえて入れろとなれば、プールサイドの壁側を1つ潰すと思う。壁から柱が出っ張るので厳密には幅10mなさそうだが、これはこれですっきりして見える。

プール右側の更衣室や屋外テラスの接続は参考程度。その右側に7m×2スパン残せば、2~3階の要求室はなんとか収まる。日建生としては、こんなちょろいプールで悩むよりも、やたら広くて天井の高い運動室たちをさばくのに忙しいのだ。

残念ながらTACにもう一つの裏ルールがあり、プールサイドは四方とも最低2m残さないとアウト。こんな答案例は出ていないので、死刑とまでいわなくても終身刑は必至だろう。

日建学院ならパーフェクトだが、タック式採点でランク3。来年も良いお年を。

②更衣室を後退させる

続いて、更衣室側を2mセットバックさせてスロープもプールサイドも確保した改良案。なかなかすっきりして見えるが、スロープ脇に残っている柱が何とも気まずい。プール内に突っ立つよりはましだが、実用的にはかなり不便そうだ。

TAC課題8のプール配置案

この柱を取り払って3スパンPC梁を渡すのは、8×8mグリッドよりもっとまずいと思う。上階がなければトラスの鉄骨屋根で21m飛ばせそうな気もするが、愉快な断面図を書けそうだ。混構造はよくわからないし、湿気や塩素が充満しているプールで鉄骨を使うのは不利だろう。

TAC的にはOKだが、柱が邪魔なので一歩及ばずランク2。惜しい!

③スロープをL字に接続

3つ目はスロープの接続方法をアレンジしてみた案。ストレッチサークルを挟んで屋外テラスが1スパン遠ざかるが、プールの付属室をずらしたら更衣室にゆとりができた。

TAC課題8のプール配置案

水深1.1mのプールに1/12勾配でスロープを設けると、折り返してもこのくらいの長さは必要になる。階段もセットで付けるとこんな感じだろうか。プールサイドの南北を1.5m幅に圧縮してしまったので、TAC的には減点項目。これも改善の余地あるプランだ。

昨年課題の湖畔にあったL字型桟橋は、実は客室配置でなく1年後のプール形状を暗示しているという説がある。接岸している小舟が2艇なのは、駐車場が車椅子&サービス用各1台でTACの見込み通りという話も。

湖の桟橋

L字プールはユニークだが、スロープが屈折しすぎていまいち使いにくそう。フラットな踊り場で休めると思えばポジティブだが、何となく見た目の無理やり感が強いので、これもランク2.5くらい。

プールサイドがちょっと狭いので、TAC生なら「製図シャーペン百つつきの刑」。時間をかけて工夫したわりには残念賞でした。

プール縦型、南北7mスパンでも解けそう

答案例を見ていてふと気づいたのだが、長辺6mスパンのまま90度回転させればよいのではなかろうか。

やはり8mはプール短辺で使ってしまった方が素直に解けると思う。25mプールなら長い方に8mを組み合わせる4スパン構成がイージーだが、別に6mでも7mでも連続させればいくらでも伸ばせる。

ためしにTAC課題8を解答例どおりのプール横置きで、東西7mスパンにアレンジしてやってみたら、さほど無理なく解けた。6mスパンでないとコマ数が足りず、ホールやトレ室が整形でなくなる。テラスも公園に向かなくなるが、最低限の仕様は満たしているので減点は少ないだろう。

TAC課題8の答案例(プール横置き案)

マンネリ化しているプールのスロープを改良できないかと思ったが、スクールの答案例にはかなわなかった。3ランカーではしょせんこの程度でした。