君は気づいたか?製図試験の課題文に出てくる「適宜」と「適切」の違い

製図試験の標準解答例に現れた任意追加要素を見直すと、その半分くらいは「特記事項に明記されていた」という印象だ。健康相談室の情報コーナーなんて完全にアドリブではないかと思ったが、「…情報も提供する」とこっそり書かれていた。

試験元は課題文の微妙な文章表現から、解答例のささいなディティールまで、周到に対応させている。製図試験の過去問研究を本気でやろうとしたら、この調子で1年分1週間くらい解読に時間がかかりそうだ。

今年の課題で気になった「特記事項」と「適宜計画」の解釈について、もう少し補足しておきたい。その中には「適宜」と「適切」といった、微妙な表現の違いも含まれる。

特記と適宜計画の試験対策

図面に書くべき任意追加の要素については、次のような方針を仮定することができる。

  1. 特記事項に書かれた要求室内の「モノ・機能」はなるべく図面で表現する
  2. 当該施設に普通ありそうな空間・備品(ラウンジ・自販機など)は積極的に追加する

いずれも「作図で時間が余れば」という程度のオプションだが、「図面の完成度」が大きな採点ファクターであると仮定すれば、あなどれない要素だ。

1. 特記内機能のコーナー化

まず特記内の家具・什器は、ささいなものでも可視化した方が好印象と思われる。カフェや事務室のテーブル・椅子は誰でも表現すると思うが、機械室内の各種設備やトレーニング用マシンも、点線囲いで図示する指針が示された。

そして特記に「情報を提供する」と書かれていたら、「コーナーを設ける」とは指示がなくても「情報コーナー」が必須なようだ。今年は2案ともそうなっている。予備校の課題でも、ここまで一字一句、特記の中身を吟味すべしとは教えられていなかった。

しかし事務室の「管理及び運営を行う」という注釈に対して、わざわざ「管理コーナー」「運営コーナー」は設けられていない。あくまで「情報コーナー=チラシ置場」のように、具体的に空間をイメージできる機能だけコーナー化すればよいのだろう。

2. 休憩・飲料の適宜計画

次に、たとえ要求室リストになくても、スポーツ施設にありそうな自販機などは、「適宜計画する」というのが鉄則らしい。

何が必要かは、過去の解答例を研究して想像力を働かせるしかない。今年の施設なら、プロショップやストレッチコーナーを設けてもよかっただろう。スクールの課題によく出る要素が参考になる。

過去2年の標準解答例を観察して、

  • 休憩場所(ラウンジ、リラクセーションスペース)
  • 飲み物(自販機、ドリンクコーナー)

の組み合わせは必ず出てきている。

確かに「ちょっと休んでお茶でも…」というのは、ホテルでもスポーツセンターでもあり得そうなシチュエーションだ。そして試験元が大好きな、地域住民や世代間との「交流」をイメージさせる。

今後の試験でも、ホールや共用廊下の余ったスペースには積極的にソファを置いて「ラウンジ・自販機」2点セットをインストールしておこう。インテリアとして微妙でも、そのくらい下世話な方が試験としては好まれる。

「適切」と「適宜」の違い

ここまで来て、要求室リスト最下段にある2行の違いが気になってきた。

  • 従業員等の通用口…適切に計画する
  • その他必要と思われる室…適宜計画する

適切に計画する。適宜計画する

微妙に「適切」「適宜」と使い分けられているところにヒントがある。前者はほぼ設置する前提で、位置や数を「適切に」選べという指示だろう。

後者の「適宜」は辞書によると、2つの意味がある。

  1. その状況に合っていること=適当
  2. 個々の状況に合わせて判断すること=随意

受験生としては作図の手間を減らしたいので、2番目の「随意(必要なければ省略可)」と解釈したい気持ちがある。しかし、標準解答例では必ず追加要素が書かれているところを見ると、1番目の「適当」すなわち1行目に書かれた通用口・倉庫・ゴミ置場と同じく、「適切に計画する」意味に近い気がする。

いずれにしても「計画する」というのが大前提で、「適宜」は「適切」より「適当」寄りの形容動詞にすぎないという見方が妥当だ。とすれば、一見どうでもよさそうな自販機ひとつとっても、「一級建築士として備えるべき知識」の不足とみなされても不思議はない。

要求室漏れよりクリティカルでないが、「ラウンジ・自販機漏れ」も実は減点対象かもしれない。少なくとも標準解答例2案でしつこく存在をアピールされているところから察すると、これらが単なる図面の賑やかしとは考えにくい。