一級製図試験で必要な面積/竪穴区画と(特定)防火設備の使い分け

日建学院のテキスト答案例に記載されている謎のマーク、○特・○防。防火区画に設備を示しているようだが、使い分けの方法が気になる。

防火設備の記号

異種用途に引き続き、面積区画と竪穴区画の面から記号の使い分けを調べてみた。

→平成30年標準解答例で、試験元から示された指針はこちら

防火設備と特定防火設備の違い

まずは普通の防火設備と特定防火設備の違いを整理してみる。施行令112条1項によると、特定防火設備は令109条の防火設備で1時間以上の遮炎性能を持たせたものである。令109条の2に従えば、普通の防火設備の遮炎性能は20分で済む。

防火設備の分類

平成12年建設省告示によると、素材によって要求水準が分けられている。例えば鉄製なら特防は厚さ1.5ミリ以上、防火設備は0.8以上1.5ミリ未満、RC造なら厚さ3.5ミリ、土蔵造なら厚さ15ミリが境目。

遮炎性能の強化に従って、特防の方が素材の厚みに対する基準が厳しい。ちなみに防火設備としては許される、網入りガラス、石膏ボードや亜鉛引鉄板を張った木材などは、特防の規定から除かれている。特定防火だとガラスは許されず、相当頑丈な鉄板やコンクリート壁で区画するイメージだ。

RC造の面積区画は1,500㎡

製図試験で設計する建物は、基本的に鉄筋コンクリート造なので、耐火構造、耐火建築物に該当する。木造や鉄骨造の温水プールというのもおもしろいが、25メートルで400トンもある水の重量を支えるのは難しそうだ。

面積区画に関して、施行令112条1項によると、主要構造部が耐火構造なら「1,500㎡以内ごとに特定防火設備」で済むとある。準耐火構造の壁でも間に合うが、部屋の仕切りはRC壁で満たされているとすると、問題は可動式の特定防火設備だ。

面積区画の説明

条文の下に除外条件として、「体育館…これらに類する用途に供する建築物の部分」とある。さすがに天井の高い体育館内部を区画するのは面倒だし、壁で仕切ると用をなさない、そういう配慮だろう。

万が一、試験で1,500㎡超のプールや屋内運動場が要求されても、その中で面積区画する必要はない。常識的には、プールに通じる通路やロッカーの出入り口で区画する感じだろう。その場合、面積区画を想定しているなら、設備は特防=マル特印になる。

敷地の広さ的に区画必要ない説

ただし、試験に出てくる敷地の広さはせいぜい50×36メートル程度。建蔽率を考慮して外構や駐車場を設けると、長辺方向に8メートル×6スパン、短辺に7メートル×4スパンくらいが現実的なスパン割りだ。1フロアの面積は最大1,344㎡で1,500㎡に満たず、そもそも面積区画は必要ないといえる。

短辺を8メートル×4スパンに拡大すれば1,536㎡になるが、そのくらいはみ出した分は、別途階段やエレベーターの竪穴区画で削減できるだろう。8×8メートルグリッドというのは技術的に問題ないと思うが、答案例として見たことはない。スパン調整で6メートルや8メートルを選ぶことはあっても、縦横どちらかは7メートルのままというイメージだ。

※面積区画の対象は「延べ面積」だった

施行令112条1項の冒頭をよく読むと、「延べ面積…が1,500㎡を越えるものは…」とあった。面積区画なのでイメージ的に水平方向で考えるものと思い込んでいたが、複数の階を含んだ延床面積で計算するらしい。

とすると、1フロア1,000㎡もあれば2層で軽く1,500㎡は超える。階段・エレベーター・吹抜け・設備シャフトなど上下につながる部分で断絶すれば、1層ごとに区画が切れるので複数階の延べ面積は計算不要になるという発想のようだ。

製図試験で「面積区画は当然」とされている理由がやっとわかった。おそらく実務でやっている人にとっては当然の知識なのだろう。業界では当たり前すぎるのかどこにも説明がなく、一人でずっと悩んでいた。

学科からスクールに通っていれば、こういう常識も体系的に教えてもらえたのかもしれない。自己流の独学で重大な勘違いをしたまま、学科を通過してしまった弊害だ。「無窓居室がよくない」というのも最近やっとわかったくらいなので、ほかにもいろいろ恥ずかしい間違いをしていそうな気がする。

竪穴区画の対象

竪穴区画については同じく出典元の施行令112条9項を読むと、「吹抜き、階段、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペース、その他これに類する部分」が適用対象となっている。「吹抜き」というのは「吹抜け」と違うのか気になるが、「これに類するもの」と考えて間違いない。

前提条件として主要構造部が準耐火構造だが、RC造の耐火構造もあてはまる。「地階又は三階以上の階に居室を有する…住戸」の一文は前提条件でなく、吹抜き、階段…と並列の扱いになっているのがまぎらわしい。

竪穴区画の説明と除外事項

3階建ての建物に竪穴区画が必要なのかは、法規の試験で狙われどころだった。メゾネットや木造は除外、3階以上に居室がない、あるいは面積200㎡以内の住宅・共同住宅も対象外になる。このあたり、住宅系のややこしい緩和条件は製図試験に関係なさそうだ。

吹抜きの除外事項

除外項目として気になるのは、9項一号の吹抜きに関する指定。「避難階からその直上又は直下階のみに通ずる吹抜きとなっている部分、階段の部分…」。壁と天井の仕上げ・下地が不燃材料なら除外対象になるようだが、製図試験では内装まで指定されない。

もし内装が不燃でなかったら、竪穴区画の省略は許されないことになる。躯体をRC造にしたうえで、防火上重要な吹抜けや階段の仕上げを、わざわざ燃えやすい木材や藁でつくることなどあるのだろうか。

殺風景な階段室をウッディーにリフォームするとか、透明なエレベーター向けにシャフトの内装をおしゃれに見せたいとか。あとから変に改造されるかもしれないので、避難階直通の2層吹抜けでも区画しておいた方がよさそうだ。

2階どまりの中途半端な階段

避難階が1階として、3階まで通らない2階どまりの階段はあり得るだろうか。たとえば2階にスポーツ部門の受付・更衣室を設けて、3階へは会員専用の階段でしかアプローチできないとか。現実には有料利用者の動線を分けるパターンが多そうだが、今年見た答案例ではそこまで配慮している図面がない。

プールの吹抜けや巨大ロッカールームに場所を取られて、ただでさえ面積が少ない今年の課題。サービス用、利用者用、有料会員用とコアを3つも設ける余裕がなさそうだ。

昨年のリゾートホテルのように、「トレーニングルームは会員のみ」という条件が出てきたら、想定内のサプライズといえる。この場合も1階の階段・EV前に料金徴収所を設けて2~3階を利用者専用フロアにすれば、「2階でストップ=竪穴区画不要」な階段をわざわざ設ける必要もない。

同様に地階が機械設備室だったとしても、サービス階段を地下まで延長すれば専用階段を設けずに済む。時間と面積に余裕があれば、管理部門から地下室専用の階段を設けてみて、あえて竪穴区画を省いても合格できるか試してみたい。しかし地下室の平面図は要求されないから、そもそも区画を書く必要がない。

プールの竪穴区画要否

今年はエントランスホールの吹抜け以外に、高天井の温水プール室も竪穴区画が必要になる。25メートル程度のプールなら面積区画は不要な予感がするが、竪穴区画の方がシビアに効いてきそうだ。

プールの設置が1階避難階なのか、2階以上にあるかによって緩和条件が変わってくる。1階のプールについては、面積区画と竪穴区画の両方とも適用条件が曖昧だ。上述のように耐火構造で1階全体の床面積が1,500㎡なければ、面積区画は不要に思われる。また内装が不燃材料で高さが2階までなら、竪穴区画からも除外される気がする。

日建テキストに記載の4課題は、2層構造のプールないし屋内運動場がいずれも2~3階に設置されている。吹抜け上部のガラスにはびっしりマル特シャッターが張ってあるが、設置階で接続するロッカーや廊下の出入り口には、防火戸があったりなかったりする。

早期対策課題Iには1か所だけ廊下に「非常時下開」の扉があるが、ほかは書き忘れかもしれない。課題③のプールは3階最上階にあるので、天井が高くても吹き抜けに該当しないという解釈だろうか。

(原則)面積=特防、竪穴=防火

面積区画は特定防火設備で確定だが、竪穴区画の場合は令112条9項により「法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備」、令109条に戻って「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」すなわち普通の20分遮炎、防火設備で済む。

結論としては、以下の使い分けで問題ないように思う。

  • 面積区画を想定=特定防火設備
  • 竪穴区画を想定=防火設備

耐火構造1,500㎡を越えず、面積区画が必要ないなら今年の課題はすべてマル防でよいのではなかろうか。延焼ゾーンの開口部も標準の防火設備でよいはずだ。

※(試験対策)延焼=防火、それ以外=特防

複数階の延べ面積を合算すると確実に1,500㎡は超えるので、竪穴区画はすべて面積区画を兼ねて特定防火設備に格上げしておくと手っ取り早い。プール上層階の窓くらい、防火設備の網入りガラスで済ませる方が安上がりかもしれないが、特に経済性に配慮すべき部分でもなさそうだ。

テキストの答案例も他の受験生もみなマル特印なのに、ひとりだけマル防だとやばい。逆に、面積区画に関係ない外壁開口部の延焼ゾーンを特防にしてしまったら、そちらはマイノリティーの恐れがある。

整理すると、とりあえず今年の試験対策は以下のルールでよさそうに思う。

  • 竪穴区画=上下フロアの面積区画を兼ねて特定防火設備
  • 面積区画=竪穴区画の特防で自動的に達成されるので考える必要なし
  • 延焼ゾーン=防火設備

日建テキスト答案例の謎

日建学院の答案例を見ると、階段とエレベーターの出入り口、吹抜けシャッターがすべてマル特となっているのは不思議だ。場所的に竪穴区画のためと思われるが、面積区画も兼ねたいという意図だろうか。

一方、ロッカールームやプールに通じる廊下の出入り口は普通のマル防になっている。これがプールの竪穴区画を意味しているなら、そもそも共用部側でなく、プールとの出入り口に防火戸を設けるべきでなかろうか。

プランを見ると、なんとなく防火戸があってもよさそうな出入り口なので、「面積・竪穴でもない安全対策として軽く防火戸をつけている」という感覚なのだろうか。「人命第一で疑わしき開口部にはすべて防火設備をつけておく」「ただし特防までつけるとやりすぎと思われるので、マル防くらいで済ませておけ」というメッセージに受け取れる。

テキストに防火設備の説明がない

法令の根拠はわかったが、答案の記載例がちぐはぐなので、全然すっきりしない。安全側を見たのなら屋内の区画はすべて特防でよさそうのものを、中途半端にマル防が混ざっているのが不可解だ。

日建テキスト自体も大半は昨年買ったものと同じ内容で、スポーツ施設の注意点が少しだけ追加されているだけ。今年重要な防火区画については、まったく触れられていない。試験に出ない梁伏図はどうでもいいから、答案例の解説を充実させてほしい。

それとも謎の答案をチラ見せして読者を欲求不満にさせ、講座の受講生を増やそうという魂胆なのかもしれない。末尾にスクールの宣伝もしっかり織り込んであるので、毎年不安に駆られて駆け込み受講してしまう受験生が出そうだ。