一級建築士の製図試験で狙われた新出「延焼ライン」の予想問題

平成30年の製図試験で議論の的になったのが、新規出題の「延焼のおそれのある部分」通称「延焼ライン」。9月の二級建築士で不意打ち的に出題されたため、翌月の一級製図も問われるのは確実視されていた。

予備校課題で1階3m、2~3階5mの点線は何度も引いた。開口部のマル防マークも練習はバッチリだ。「延焼ラインは東西南北4方向、どこからでもかかって来い!」という心構えだったが、本番では見事にずっこけた。

単に「延焼ラインを書く」というルーチンワークでなく、この隣地境界・道路から「延焼ラインが必要なのか」を考えさせる、メタ課題だったのだ。そして試験後、誰もが確信した南側歩行者専用道の延焼ラインは、標準解答例で不問とされた。

プール用の空調機械室と同じく、受験業界が試験・解答の2度にわたって翻弄されたハプニングだった。果たして何がそこまで判断を難しくさせたのか、そして今後の試験に役立つ延焼ラインの練習問題を紹介しよう。

延焼ラインの除外項目

7月に出題が予告された製図試験の新要素「延焼ライン」。

  1. 隣地境界線か道路中心線から1階3m、2階以上5mに点線を引く
  2. その間に含まれる開口部に防火設備(マル防マーク)を書く

試験対策としては、この2つで済む単調作業だった。時間はとられるが、特に悩むことはない。避難経路を書くより簡単なはずだった。

しかし本番で問われたのは、まさに重箱の隅。基準法2条にある定義のうち、後半の除外事項が狙われた。

…ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。

建築基準法第2条6号

「公園、広場、水面」というのは、施行令134条にも出てくる文言で、どちらかというと「高さ制限」に関わる話だと思っていた。学科の法規で必ず出る建物高さの計算問題。前面道路の向こう側が、まず公園っぽい引っ掛けでないかチェックするのは基本中の基本だ。

謎道路+公園除外

試験対策で延焼ラインの条文を確認した際、確かに公園関連の除外事項も目に入っていた。しかしそれは、「隣地が公園 etc.」だった場合で、高さ制限のように「道路の向こうが公園 etc.」は含まないと勘違いしていた。

過去問によく出てくる遊歩道は道路か?」と疑問を呈しつつも、結局本番までうやむやなままだった部分が狙われた。そして試験に出たのは、さらに高度な組み合わせ技。

歩行者専用道路+その向こうが公園

試験後に大手予備校が出した解答例は、すべてこの歩行者専用道から延焼ラインを引いていた。「安全側」という観点からは開口部を防火対策して悪くないが、受験業界全体が、試験本番・標準解答例と2回も裏をかかれることになったのは象徴的な事件だ。

高さ制限と間違えやすい

ご承知のように、今年のスポーツ施設課題はプール設置階からエントランス方向まで、自分で考えさせる設定が多かった。さらに西側は「桜並木なのに隣地境界線」という曖昧な設定で、受験生の頭はすでにパンク状態。南の歩行者道に自信をもって延焼ラインを書けた/書かなかった人は、ごく一握りだと思う。

中には「道路の向こうが公園」という学科法規の既視感から、南の高さ制限を連想して計算してしまった人もいた。特に日建学院では、高さ制限も含めた練習課題をやっていたため、つられた人が続出しただろう。

延焼ラインの有無で惑わせるだけでなく、高さ制限のミスリーディングまで誘発する、最高難易度のトラップだったと思う。

延焼ライン(道路判定)の予想問題

初出の今年でここまでハードルを上げられてしまったので、将来の延焼ラインはさらに難しくなると予想される。ベテランの実務担当者でも頭を悩ませそうな、難しめの練習問題をいくつか考えてみた。

すべて解答できたらお見事。「延焼判定一級建築士」という新資格に合格できる腕前だ。

次の道路らしきもの・隣地境界から延焼ラインを考慮する必要があるか答えよ。

  • 旧住宅地造成事業による砂利敷きの私道で、向こう側が用水路
  • 建築審査会の同意を得ていない幅1.8mの踏み跡で、その向こうが線路
  • 特定行政庁が指定する幅80cmのサイクリングロードで、干潟に面する
  • 森林開発公団が定めたスーパー林道で、その先は墓場もしくは霊園
  • 稲刈り後のワラが積まれた農道だが、準耐火構造の柵で仕切られている
  • 民間人は立ち入り禁止のドローン専用滑走路。そこから先は米軍基地

霊園は公園だろうか?隣の敷地にワラだけでなく、ガスボンベやスプレー缶といった怪しい可燃物が保管されている場合もある。隣地境界が国境だったら、基準法はどこまで適用されるのだろう。たとえばこんな感じの道路…

有事の際、パスポートも持たずにうっかり隣地に避難したら、撃たれても文句は言えないという延焼より怖いゾーン。写真撮影も命がけだった。

万が一にも国交省の課題作成者が、このサイトを見てくれている可能性もある。ネタとして学科の法規に出題してくれるかもしれない。いったい何の法律を調べたらいいのかわからないが、できるだけ予習して備えておこう。