製図試験の解答例は、利用者目線で動線をイメージするとわかりやすい

スポーツ施設の標準解答例分析。メインエントランスに書かれたアプローチの注釈と、階段・EV縦動線の配置から、今年は西側が利用者の主要経路と判明した。

もう一点、施設利用の「チケットもぎり」という観点からも、単一アプローチが合理的だったとわかる(北側は単なる通用口)。実際にスポーツセンターを利用するユーザーの目線で、動線を分析してみるとわかりやすい。

チケットのもぎり

解答例は2案とも、利用者エントランスと縦動線を西側に集約させている。そして両案とも、事務室・受付カウンターは西エントランス、券売機、階段・EV出入口を見張れる位置に置かれている。

一級建築士、標準解答例の受付カウンター配置

セキュリティー上の配慮として、受付から利用者の入退館を管理させるのは、予備校課題でも常識だった。この点では、スクールの指導方針が的を得ていたといえる。日建学院や総合資格の答案例に出て来た3~4面アプローチでは、受付からすべてのエントランスを見張るのが難しいと思う。

するとチケットのもぎりに関しては、2案とも「事務室受付で各部屋の利用券をチェックする」方式と推測できる。玄関を入ってすぐの券売機でチケットを買い、隣の受付カウンターに提示するイメージだ。

一般的には入口で券を買った後、プール更衣室やジムの入口で個別にもぎりする方法も考えられる。しかし今回の図面は、トレーニングルーム以外にそれらしき受付ブースが見当たらない。まさか廊下に長机でも置いて、部屋の入口でスタッフが確認するわけでもないと思う。

トレーニングルーム受付の役割

トレーニングルームの特記事項に書かれていなかったが、解答例①②とも任意で受付カウンターが追加されているのは気になる。

一級建築士、標準解答例トレーニングルームの受付

最初はこれがチケット確認用で、ジムの利用者は1階受付をスキップして直接3階に上がれるのかと思った。しかし1階受付が上階への出入りを監視できる位置にある以上、もぎりは1階で集約した方が合理的だ。利用者ごとに行き先を問いただす必要がない。

素直に考えれば、トレーニング室の受付は常駐スタッフの事務作業用と考えられる。プールの監視員と同じく、各種マシンの利用説明やメンテ・清掃、事故防止のため、この規模のジムには担当者が配置されるだろう。

そしてダンススタジオの方で行われるヨガやエアロビのレッスンも、トレーニング室の受付で予約・申し込み管理すると推測される。そう考えると、解答例①②とも3階にトレーニングとダンスの部屋、控室を配置している理由がわかる。

ダンス室のレッスン参加者は、目的のプログラムが始まるまでエアロバイクやルームランナーでウォームアップする。レッスンが終わったら、今後はマシンで筋トレする人も出てくるだろう。汗だくの運動着で両室を行き来する人が増えるので、同一階で動線を短く連絡していると想像できる。

更衣室Bの位置は不便

そう考えると、プール以外の利用者が着替える更衣室Bが、1~2階の奥まった位置にあるのはなんとも不便だ。

特に解答例②では、1階の玄関・階段から一番遠い位置に更衣室Bが設けられている。3階の利用客が着替えたり物を取りに行くのに、いちいち館内のもっとも遠いエリアまで、階段を上り下りして往復しないといけない。

おそらくこれは、2階の多目的スポーツ室利用者とも共用させるための妥協策だろう。3階に更衣室Bを設けて、多目的室の利用者をいったん3階に上げて下ろす、逆動線になるよりはましだ。

そしてプール室の上部スペースを利用することなしには、3階に更衣室B、多目的スポーツ室まですべて置くことはできない。プールの上はトップライトで自然採光が推奨されているため、更衣室Bの関連諸室を同一階に集約するのは不可能だ。

新たな更衣室Cの提案

もし利用者の立場になって考えれば、更衣室Bを分割した更衣室Cを3階に設けるのがベターだと思う。設備や配管は冗長になるが、使う人は分散するので規模は小さくて済む。

そうすれば、トレーニング室だけ使いたい常連客が北側サブエントランスから入館して、券売機も介さず直接3階にアクセスすることができる。回数券か年間パスの発行を前提とすれば、トレーニング室の受付で確認させることも可能だろう。

さすがに試験本番ではそこまで頭が回らなかったが、空調機械室を任意に増やすのがOKなら、更衣室も増設してよかったのでないかと思う。解答例で3階にインストラクター用と思われる「控室」が増えているところを見ると、什器だけでなく「部屋を増やす」という提案もありだと思う。

部屋の要否まで問われる時代

もしかると来年は、要求室リストの最下段にあった「必要と思われる室…適宜計画する」の文言が、段抜きで最上段に出てくるかもしれない。コンセプトルームが2年も続いたから、次は「部屋が必要かどうか」まで考えさせてもおかしくない。

「第3の更衣室C」はあくまで思考実験だが、今後の試験ではコンセプトルーム以外にも自由提案の要素が増えてくるだろう。その際、「自分が利用者だったら、どういう部屋の配置が便利か」「施設の職員だったら、どこに控室があると助かるか」…ユーザー目線で使い勝手をイメージしてみると、室配置や動線設計のヒントを得られると思う。