今年の製図試験もすごかった。先に配られた答案用紙の方は、敷地図とか透けて見えなかったのでほっとしたのだが、最後にやってきた問題用紙が2倍サイズ。昨年よりさらに増えた盛り盛りの敷地図や地盤断面図に、思わず笑ってしまった。
敷地図に四魔既存部が集結!
七英雄とまではいかなかったが、今年の敷地図には四魔貴族くらい出た感じだ。
- カルチャーセンター(旧校舎)
- 全天候型スポーツ施設(旧体育館)
- グラウンド(旧校庭)
- 老朽化屋外プール=当該敷地
開いたのはアビスゲートの方だった…
敷地内にある呪いの廃プール。うっかり引き寄せられて、中央にプールを掘ってしまった人がいるのではなかろうか。グリッドの中央にプールというのは斬新だが、採光はトップライトだけだし、そもそも余白に要求室が収まらない気がする。
エントランス何個つくった?
他施設との「一体的に使用」がくどいほど強調されているので、これは今年の名峰だと判断した。さらに昨年、眺望について書かれていた要求室冒頭の段抜き部分には、「エントランスは東・西・南・北側のいずれに設けてもよい」とある。
両者を勘案すると、一体利用させたい施設群にエントランスを向けるのは明白だ。駐車場も駐輪場も敷地内に設けず、「東側道路を介することなく…」という条件はよくわからない。見たことない条件だが、通常は利用者エントランスを設けるべき、東側道路に対して閉じていてもよいと考えた。
利用者の使い勝手を考えると、東西南北4方向からアプローチできるのが便利だと思う。四方に出入口を開きまくって、十字型のエントランスホールを計画した人もいるだろう。健康増進部門をすべて2~3階に上げれば、1階はカフェとコンセプトルームに事務室程度で済むので、可能かもしれない。
実際のところ、管理部門やプールの配置を考えると、せいぜいエントランスは2つかなと思った。「一体使用」優先で、西の桜並木~グラウンド側と、北の駐車場~旧体育館側に風除室を設けてL字にホールを接続した。
「一体的に使用」の意味するものとは?
「隣地施設と一体利用」というのが何を意味するのか、具体的なことは何も書かれていない。普通、カフェとかテラスの関係について指定されたら、直接つなげておけばよいだけの話だ。
日建学院の課題であったように、施設内で着替えさせたりいろいろ面倒だなと思ったが、旧体育館の使用状況欄に「更衣室を完備している」と小さく書いてあった。同様に、グラウンドの管理や運営事務もカルチャーセンターで行うとなっている。
当該施設として提供すべきアメニティーとは、共用部門のカフェやコンセプトルームだろうか。記述でもわざわざ「一体利用」について書かないといけないので、単に「短い動線で行き来できる」くらいでは足りない気がしてきた。
全然思いつかなかったが、とりあえず人間に必須で、余分にあっても困らない設備として、「便所」にフォーカスしてみた。きっとグラウンドを走りながら尿意を催したランナーが、桜並木を突っ切って駆け込んでくるはずだ。西側風除室に直結する位置に、道の駅並みの巨大なトイレを用意して、一体使用に配慮したことにしておいた。
あとから問題用紙を見ると、普段は一番下に「適切に計画」と書かれている便所類が、わざわざ共用部門欄に持ち上げられている。多機能トイレもセットで特記事項通り「各階に」便所を設けないと、今年はかなりまずいだろう。オストメイトも明記されているから、日建的に2×2の多機能便所だと狭い気がする。
プール横置きで無理やりスロープ追加
プールは「自然採光を十分確保」だったので、2面くらい外部に接して開口部を設けてあれば十分だと思う。ダメ押しでトップライトもたくさん設けておいた。
求められているのは採光であって日照ではない。南に向ける必要はないと思ったが、北と西にエントランスを設けたので、必然的に南東隅に横置きすることになった。敷地の東西は広めに52mあるが、南北は32mとかなり狭い。ただ、プールの長さが18mなので、実際は縦置きでもいけるのだろう。
プールの幅は10mで、プールサイド2mずつ確保すると7mピッチの2スパンを使い切ってしまう。横置きだと南北ヘリアキがかつかつなので、8mに伸ばせる余地はない。結局最小14mにとどめ、悩んだスロープと階段はプール10m幅の中にねじ込んでしまった。
課題文に「バリアフリー」という文字は、他施設の改修状況にしか記載されていなかった。ただし、今年は試験会場のいたるところに、事前告知のあった留意事項が貼られまくっていた。おそらく「バリアフリーは言わなくても配慮しておけ」という意味だと思い、プールのスロープは無理してでも記入した。
しかし、足洗い槽の微妙な段差にスロープを書くのは忘れた。TACの最初の方の課題では、ロッカーとプールの間の足洗い槽に、長さ1.5mくらいの小スロープが設けられていた。
カフェと屋外テラスはどちらも桜並木か公園の眺望指定があるので、贅沢に「どっちも」ということで南西に一体化して確保。少々狭いが1階下半分は、西から桜並木>テラス>カフェ>更衣室>プール横型、というレイアウトにした。
見学コーナーって必要?
エントランスホールの3層吹抜けについては、自然採光や空調エネルギー抑制が記述で問われている。建物内部に光を入れるなら、風除室上部とか端っこでなくグリッドの真ん中に設けた方が説明しやすい。
中央部に吹抜け、かつプール鑑賞用ギャラリーが出てくる場合は、やはりプール横型の方が解きやすいと思う。長辺・短辺の2方向を開けるので、更衣室やその他をつなぎやすいからだ。
更衣室を横置きプールの左に置いてL字動線としたため、プール上側の間口は広く余った。吹抜け1コマ接して、さらにEVホールを兼ね3層にわたって観覧ギャラリー的なコーナーを設けておいた。
プールの特記に「見学コーナーや廊下などから…見学窓」という記載がある。廊下はいいとして、言及されている「見学コーナー」が要求室に見当たらない。よくわからないが、とりあえずそれっぽくプールに面した一角を点線で囲んで、コーナー名を記入しておいた。
健康増進2~3階だと1階がスカスカ
経験上、地下室がなくプールも機械室も設置自由な場合は、1階機械室>2階直上にプールを置くと解きやすい。しかし階別の部屋振り分けを行った段階で、2~3階に健康増進部門を集めると1階がスカスカになるとわかった。
床面積も上限2,800㎡までとそこまで広くはないので、何かを1階に下ろして上階吹抜けにすべきなのだろう。面積の大きい部屋では多目的スポーツ室(200㎡)があるが、辺長比1.5かつ無柱空間、さらに天井高は5m以上と指定が多い。
プール2階なら1階の天井高は6m必要なので、TAC課題1に出てくる小体育館のように、プールに重ならない1階に設けることもできそうだ。ただし、上に部屋を乗せるのは構造的に不安なのと、上階も無柱という制約が増える。無柱空間の上にプールというのは、エキサイティングな試みだ。
ここは順当に「無柱室=最上階」かつ日建式に「天井の高い部屋は3階へ」という法則に従って、多目的は3階にキープしておいた。更衣室Bと一緒に、トレーニングルームやダンススタジオを1階に設けるのもありだったが、ふと記述に「履き替え」説明があるのを思い出した。
プールと機械室を1階に配置
スポーツ部門を上階に追いやりたいのは、階別ゾーニングで上足/下足がすっきりするからだ。コンセプトルームがなぜか健康増進部門に入っているが、「世代間交流」とかコミュニケーション重視だと、これは1階にあった方がよいだろう。
コンセプト以外のスポーツ系を更衣室Bとともに上階隔離する場合、結局1階に下ろしてすっきりするのはプールということになる。更衣室Aのプール動線はウェットゾーンで直結だから、他の部門と動線交錯するおそれがない。
そういえば機械室がたった80㎡しか求められていないというのが、どうも怪しい。空調と電気を追い出したとしても、ポンプやボイラーでもっと必要そうだが、ここは課題に従うしかない。
なんとなくこれは「プール&機械室を両方1階に置け」という合図な気がして、イレギュラーだが同一階設置を試みた。TACの8課題にはなかったパターンだが、日建の答案には同一階の事例がいくつかある。
階構成のまとめ
自分がやってみた階別の部屋構成をまとめてみる。
- 1階:プール、更衣室A、機械室、カフェ、コンセプトルーム、広い便所、事務室
- 2階:更衣室B、トレーニングルーム、キッズ用プレイルーム、救護室、器具庫、見学コーナー、電気設備スペース(機械室の屋上)
- 3階:多目的スポーツ室、空調機械室、ダンススタジオ、健康相談室、インストラクター控室
※プール上部2階は吹抜け、3階は緑化屋上にトップライト配置
※エントランスホール吹抜けはプールに接して3層設置
「一体使用」によるエントランス、アプローチの解釈が難しいが、要求室の配置は楽だったと思う。部屋の数も多くないし、プール以外に巨大なものもない。管理部門の休憩室とか更衣室のたぐいも少なすぎて、拍子抜けだった。
電気設備は、いつも通り屋上にキュービクルを置こうか迷った。ただ、特記事項の部分になぜか約40㎡と具体的な数字があるので、平面図の見えるところに書いておいた。たまたま隅に置いた機械室の上が使いようなかったので、2階を屋根にしてその上に電気設備を乗せた。
延焼ラインは北側駐車場だけでOK?
予告通り出題された、防火区画と延焼ラインの表記。ほとんど予想されていた通りの、マル防、マル特マークだった。竪穴と面積区画はさんざん練習したので問題なかったが、気になるのは延焼ラインの方だ。
四方を見渡してみて、東側の車道は幅12mもあるので延焼は考えなくてよい。南側の幅5m歩行者専用道路は、建築基準法上の道路なのだろうか?道路の先が公園だと、延焼ラインも緩和される条件なんてあったっけ?そもそも歩行者って燃えるの?
日建の課題では、そういう曖昧な道路を「※法律上の道路です」と書いてある例もあった。今回は注釈もなく、時間もなかったので、南の延焼ラインを考えるのは省略した。
西側の桜並木は幅も不明なので同様。まさかグラウンドの人工芝が燃えやすいとか?念のため調べたら、樹脂製の芝は溶けたり焦げたりするが、延焼はしないよう防炎性能が強化されているらしい。西の桜並木は延焼ライン考慮しなくてOK…多分。
隣地の駐車場については、まず延焼を考えるべきだと思うので、結局北側3/5m開口部だけマル防マークをつけておいた。余裕があれば南の歩行者専用道路にも配慮したかったが、プールの窓にたくさんマル防を書くのが面倒だったのであきらめた。
コンセプトルームは今年も平凡
まさかのコンセプトルーム再来。一応対策はしておいたつもりだが、ギャグっぽいネタしか頭に浮かんでこないので困り果てた。
「廃校にまつわる怪奇現象を紹介する部屋。心霊写真を展示したり、跡地から出てきた遺骨や地蔵を供養する祭壇を設ける」
今回のコンセプトは観光でなく「健康増進 or 世代間交流」という目的があり、まったく自由というわけではない。高齢者も参加できて、子供も大人も楽しめるスポーツ…インドアゲートボールとか?100㎡の部屋で間に合うのかわからないし、なんかジジ臭いのが嫌だ。
結局、幅広い年齢層に対応できそうなスポーツとして、ジョギングを選んだ。「ランニングシューズをレンタルして、旧校庭のグラウンドを走れる」…皇居のまわりとかによくありそうな施設。普通過ぎておもしろみに欠けるが、標準解答例も昨年は彫刻や陶芸だったから、メジャーなスポーツで出してきそうだ。
一応、プールに絡めたコンセプトも考えてみたが、ゾーン分離してしまったので難しかった。
「泳ぎの達人といわれる地域の名物老人が、畳の上で古式泳法のフォームを教える」
いや、コンセプトルームにも小プールと更衣室を設ければよかったか。そこまで作りこめた人はすごいと思う。
記述は想定内だがうまく書けない
記述は今年も手が震えまくって、2mmのへんとかつくりすらまっすぐ引けない。あれだけきれいな字を書く練習をしたのに、本番では一切役に立たなかった。
頭の中に書きたいことは1万字くらいあるが、アウトプットできないのがもどかしい。キーボードで入力したい気持ちを押さえて必死に書いたが、行数半分くらいしか埋められなかったのが残念。
「一体使用」以外は想定内の設問といえる。温水プールの構造計画、下の方で屋根について聞かれた部分に「天井等落下防止対策」をつらつら述べたが、ちょっと勘違いだったかもしれない。上欄のスパン割りでPC梁の特徴は書いてしまったし、基礎については別欄が設けられていて、それしか書けることがなかった。
基礎は1階プール下が独立基礎で、ピット含みGLマイナス3m。ほかの部分はベタ基礎でGLマイナス2m。何となく昨年の傾斜地、標準解答例が「3種基礎混構造」みたいな感じだったので、試験元は基礎形式を組み合わせるのが好きなんだと思う。
今年は地盤条件に「経済性」が強調されていたので、独立基礎でいける部分はそうした方がよさそうだ。地下水位がGLマイナス2.2mだけど、湧いてきた水はそのままプールに補給すればいいだろう。
今までにないほどの書き込みっぷり
ここまで説明したところで、記述はともかくエスキースはランク1.5くらいまで行けたんじゃないかという気がしてきた。開始2:15くらいで1/400が完成し、プール上層の空白も多かったので作図は意外と早く終わった。
ラスト15分は植栽・タイルの書き込みに時間をとれたので、テラスのデッキも33mmピッチで細かく横線が引けた。トップライト、ルーバー、Low-Eの採光・通風・日射遮蔽パッシブトリオもばっちり追記。「桜が見える」とか「プールを見られる」など、特記事項の注釈もうざいくらい書き込めた。
エスキース1/400図は解読困難といえ、図面の密度は上げられたと思う。さすがにタイルに点を打ったり植栽を塗る時間まではなかったが、ラスト5分は見直しに時間を割けるという幸運にめぐまれた。
試行錯誤したスパン割り
最後にスパン割りを紹介しよう。プール横置きで最低14mスパンPC梁を飛ばすため、南北方向は北から7・6・7・7=合計27mとした。少々狭いが、北側隣地に3m、南側歩道に2m空きを設けた。
最初は6・6・7・7で進めていたのだが、1/400を書いた段階で横置きした利用者階段の脇に2mしか通路が取れないと気づいた。吹抜けが多く、床面積は試算した段階でボリュームゾーンの下寄りだったので、1mくらい追加しても問題ないはず。
今から考えれば、利用者階段3.5m幅、通路2.5m幅で調整すればよかったかもしれない。階段縦置きして6mスパンで回らせるという知恵はなかった。EVホールの見栄えを優先して、ちょっと危ない橋を渡った気がする。
東西方向は西から8・8・7・7・7・7=合計44m。余白は西側テラス用に5m、東側道路に3m確保。屋外テラスが無駄に広かったので、南の歩行者専用道路に2m避難通路を設ければよかったと後から気づく。敷地の北から回れば東の道路に出られるから、それでOK?
8mを使ったところは、更衣室Aや上階の多目的スポーツ室など。横置きプールの左側、60㎡要求の更衣室Aに7×8=56㎡は確保したかった。カフェに更衣室の廊下をめり込ませたせいで、40席あるわりにはかなり狭め。屋外テラスのテーブル・椅子もカウントしてよかったのだろうか。
建ぺい率70%
床面積はプール吹抜けと屋上フリーが効いて、2,500㎡弱のちょうどいい感じだ。庇は1m出しで、避難距離もさほど問題なさそうだったので、屋外階段は設けなかった。念のため建築面積を計算してみると、44×27=1,188㎡。
問題用紙の上の方を見直してみると、あれっ?建蔽率が意外と少なくて70%。敷地の面積1,664㎡に0.7かけると1164.8㎡。
なんか微妙にはみ出てるけど、建蔽率オーバーの減点ってどのくらいだっけ?