一級建築士の製図試験に向けて、字がきれいに書けるシャーペンの研究

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手書きの製図試験に臨むにあたって、悩みのひとつが「字が汚いという」点だ。ときどき手帳に書いた予定が自分でも読めなくて困ることもある。

建築士の製図試験においては、図面のきれいさや線の濃さが合否を分けるとまでいわれている。圧倒的なハンデを負った気分だが、今から少しでもきれいな字を書けるようになれないか、試行錯誤してみた。

字が汚いという悩み

ときどき建築家の描いた図面を見ては、きれいで味のある文字を書けるのはうらやましいと思う。

字が汚いコンプレックスを克服するため、ペン習字の教科書を買って練習したこともある。写経のようにお手本の文章を写していたが、いっこうに成果が感じられずやめてしまった。

今はパソコンでテキストを打つ方が主流になったので、字の汚さで悩む場面は少なくなった。簡単な手紙や申請書のたぐい以外で、人に見せる文章を書くのは久々だ。

字をきれいに書く練習

ペン字の本は今さらやり直す気になれない。ボールペン字とシャーペン字もちょっと違う気がするので、とりあえずウェブで「字をきれいに書くコツ」を調べてみた。

技術的な要素を分解すると、「横線を右上がりに書く、隙間を均等に開ける」など、それらしいテクニックがあることを知った。理屈としてわかっていても、実現できないのが悩みなのだ。唯一「漢字>ひらがな>カタカナの順に小さく書く」という小技は実践できそうな気がする。

かたつむりを書く

字をきれいに書く知識よりも、手先の不器用さがボトルネックではないかと思い、「カタツムリを書く」という特訓からスタートしている。5mmの方眼マス目にカタツムリ一匹…受験生の朝はカタツムリの写経から始まる。

記述用のシャーペンを替えてみる

字をきれいに書く方法をいろいろ調べているうち、シャープペンシルという道具が進化していることを知った。作図に使うのは製図用の専用品だが、記述は汎用シャーペンでもいいはずだ。

大人になってからはボールペンや水性ローラーボールを使う機会が多く、最近シャーペンを使うのは後で修正できるよう、手帳に予定を書き込むときくらい。手帳にフィットする小型シャーペンというジャンルに興味はあるが、普通の筆記用は学生時代に買ったステッドラー1本で済ませてきた。

廃番品の925ブラック。先端のパイプが曲がったので、口金だけ交換できないかステッドラーに問い合わせたところ、現行品のシルバー色しか用意できないとの回答だった。安い製品なのにパーツ単位で交換できるとは、それだけでも素晴らしい。さすがステッドラー。

ステッドラーの製図用シャーペン

鉛筆時代から使い慣れているという観点からは、六角形軸のカランダッシュを登場させたい。しかし手持ちのエクリドールはXSの短軸タイプなので、クリップが手に当たって使いやすいとはいえない。

カランダッシュ、エクリドールXSシャーペン

ペリカンやラミーなど趣味性の高い舶来筆記具は、製図試験では封印しようと思う。実用性とコスパを重視すると、やはり文具は国産品に軍配が上がる。

芯が折れにくいシャーペン製品群

昨年、製図試験に向けて0.7mmのシャーペンを買い足すべく、ぺんてるのグラフ1000を入手した。たまたま文具屋で、同社からオレンズネロという新商品が出ているのを知って、そちらにも興味を持った。

発売当初は品薄のプレミアム価格だったので、とりあえず廉価版のオレンズ0.2mmを買って試したところ、おそろしく細い線が書けることに驚いた。パイプから芯が出ていないのに、先端を紙にこすると線が引けるのが不思議だ。0.2mmの極細ではメーカーの売り文句ほど「折れにくい」というメリットは感じなかったが、最新技術に舌を巻いた次第。

何十年も前の大学受験の頃には、シャーペンのノック方式やグリップ感は発明され尽くしたと感じていた。握りやすさや疲れにくさの人間工学は、Dr. Gripで究められたように思う。「本体を振る or 軸を折ると芯が出てくる」という機能も、すでに昔からあった。

ここ最近になって、ようやくシャープペンシルにおける本質的な筆記機能の改良が進んできたようだ。特にオレンズのほかにも、オ・レーヌ、デルガード、モーグルエアーなど、芯を折れにくくした製品は各社から発売されている。

相変わらず日本の会社が考える製品ネーミングはダジャレっぽくて変なものばかりだが、妙に記憶に残る。デルガードなんて一瞬、尿漏れパンツのネーミングかと思った。

クルトガの回転機構がすごい

最近のシャーペン新製品の中でも際立つのが、三菱鉛筆から出ているクルトガシリーズだ。他社のように、芯の折れにくさでなく「きれいな字が書ける」という性能に特化した商品。その理由は、「筆記時の筆圧で芯を自動回転させ、線の太さを一定に保つ」という仕組みにあった。

ためしに回転力2倍のアドバンス0.5mmを買ってみたところ、確かに「書き続けていると自然と線が太くなっていく」現象が起こらない。先端が紙に触れると、筆圧を動力にして内部の軸が回るという機構は見ていて興味深い。アドバンス版だからか、ものすごい速度で芯が回転し、書き出すたびにフレッシュな角を当てることができる。

また、アドバンスは軸形状が素直な円筒形ですっきりしているのも好感が持てる。国産製品としてはめずらしく装飾的なパーツが少なく、LAMYのscalaあたりを彷彿とさせるミニマムなデザインだ。

クルトガのペン先

ただし、グリップ部分は透明化して売りのクルトガ機構を見せる必要があったのか、まきぐそのようなマークが回転して見えるのは愛嬌である。

専用芯は高いが濃く書ける

あまりにクルトガが気に入ったので、専用替え芯と0.3mmのスタンダード版も追加購入した。0.3mmはさすがに細くて、筆圧をかけるのが不安に感じたので却下。アドバンスは芯が回り過ぎる気がするが、スタンダード版でも接地時の沈み込み量は大差なかった。

クルトガのバリエーション、専用替え芯

クルトガ専用芯は、従来品と違って「芯の外側が柔らかい」という特徴どおり、他の芯より同じ硬度でも濃く書ける気がする。ただしその分、芯一本当たりの価格は他社の2倍する。ステッドラーや三菱ハイユニのシャー芯より単価が高いセレブなアイテムだ。不用意に折ると悔しくなる。

内部の回転機構のため、筆記時に若干ペン先が沈み込む違和感はあるが、線幅を一定に保てるのはそれ以上のメリットといえる。技術的に字をきれいにするというより、字が汚く見える要因を一つ取り除いただけのアイデア商品。それでもノートを見比べると、普通のシャーペンより整った文字に見えることは確かだ。

モノグラフは便利すぎて反則級

今年の記述はクルトガで行こうと盛り上がって来たところ、文具店でさらにユニークな新商品を見つけてしまった。トンボのモノグラフシリーズだ。

MONOといえば消しゴムのブランドだが、カートリッジ式で補充できるペンホルダータイプに、シャーペンを合体させたような製品を出してきた。普通のシャーペンでもたいていお尻に小さい消しゴムはついているが、それが本気のMONO消しゴムだと話が変わってくる。

製品ラインナップによって消しゴムの太さも性質も様々だが、いずれも2.6cm程度と余裕の長さがあり、回転繰り出しできる機能が他社製品と一線を画する。もちろん替えの消しゴムも簡単に手に入るので、惜しみなく使えるのがありがたい。

モノグラフの消しゴム

ちょっとした修正なら、わざわざ消しゴムに持ち替えず、手元でシャーペンをひっくり返して済んでしまう。これまでのように、右手で消しゴムを握って左手で字消し版を当てるという一連の動作を省けるので、時間短縮にすさまじい効果を発揮するチートアイテムだ。

作図にも使える製図仕様のペン先

さらにモノグラフがすごいのは、どのタイプも先端から4mmパイプが突き出した製図仕様になっている点だ。ローレット型以外はプラスチック製で軽量・チープだが、厚みのある定規と干渉せずに点線も問題なく引ける。ペン軸がセットバックして視界がクリアーという面では、製図用シャーペンに求められる要件は完全に満たしている。

とりあえず記述用にスタンダードなMONO graphを使っていたら、消しゴムを頻繁に使うエスキース作業でも効果絶大だと気づいた。しばらくすると、作図中でも消しゴムに持ち替えるより、ついついペンをひっくり返してしまう癖がついてしまった。

ためしに作図でモノグラフを使ってみたが、ペン先形状も製図仕様でまったく問題ないと判明。最初は壁の実線だけ0.7mmのグラフ1000を使い分けていたが、そのうちモノグラフ1本ですべて済ませるようになってしまった。

金属軸のモノグラフゼロは消しゴム細すぎ

モノグラフが発売されたせいで、ペンホルダータイプのMONO消しゴムはもはや時代遅れに思われる。シャーペンなのか消しゴムなのかはっきりしない気色悪い文具だが、見た目に反して攻撃力はめっぽう高い。

あまりにモノグラフが気に入ったので、0.3mm/0.5mmも含めて全シリーズ買い集めてしまった。あいにく0.7mm以上は発売されていないが、0.5mmでB~2B芯を入れれば、十分作図にも使える印象だ。

モノグラフのバリエーション、替え芯

シリーズの中では一見、金属ローレット軸のモノグラフゼロが、製図用らしく試験に最適に思われる。しかし、売りの機能である2.4mm径の極細消しゴムはいまいち使い勝手がよくなかった。

漢字のへんやつくりというパーツ単位で超精密に消せるのだが、自分の場合は部分的に書き足し修正してもきれいな字にならない。どうせ1文字丸ごと消すなら、太目の消しゴムの方が当てやすい。作図の線を消す際も、2.3mmだと細すぎて効率が悪く感じた。

さらにzeroモデルのデメリットは、消しゴムが細すぎてノック時に手に刺さるという不快感がある。もちろん相手は消しゴムなので血が出るほどの刺激はないが、何度もノックしていると指先が痛くなってくる。

眠気覚ましにはちょうどよいが、ほかのモノグラフがなぜサイドノックやクリップノック・フレノックを採用して通常ノックを避けているのか、理由がわかった。普通のシャーペンのように、消しゴムキャップがないのは時間短縮に役立つが、ノック時の感触は損なわれる。

ダストキャッチ版は筆記ノイズが残念

一方、消しゴムの種類でいうと、サイドノックのモノグラフワンにだけ、カスが出にくいダストキャッチを搭載したモデルがラインナップされている。見た目は精悍なオールブラックで好印象。軸も消しゴムも他モデルより若干太く、安定感がある。

しかしモノグラフワンは定価250円と最安なだけあって、全体的なつくりがチープに感じた。なぜだかわからないが、どの紙にペン先を当てても、シャーシャーという高周波ノイズが発生して耐えられない。

昔、ロットリングの最高級製図シャーペンを買ったときも、同じく筆記時のノイズに悩まされたことがある。金属軸でずっしりしたシャーペンでも異音が出ることはあるので、こればかりは金額以前に、個体差か相性としかいいようがない。

付属のダストキャッチも在庫中に劣化してしまったのか、いまいち硬めで消し心地がよくなかった。スタンダードなモノグラフか、グリップ版についているノーマルMONO消しゴムで十分使いやすいと感じる。使っているうちに消しゴム先端にカスがまとわりついてくるので、たまに左手で揉んで消しカスを落とせば十分だ。

グリップタイプは金属クリップがいまいち

グリップタイプは軸に滑り止めのゴムが付いている以外、通常タイプと違いはない。三菱ユニのアルファゲルほど柔らかくなく、作図にはちょうどいいゴムの固さだ。ただしクリップが薄い金属パーツで無駄な高級感を演出しており、ノック時はプラスチック製のクリップより不安定に感じる。

全シリーズ試したが、結局標準版のモノグラフが無難だとわかった。0.3mm芯は細い字が書けるが、個人的には試験本番のプレッシャーに耐えるには心細く感じた。

念のため、モノシリーズの専用芯も試してみたが、ステッドラーやぺんてるのシュタイン芯より濃度のむらが出やすいと感じた。

それにしてもMONOのロゴと黒白青ストライプカラーで中身はシャーペン芯とは、まぎらわしすぎるパッケージデザインだ。

記述はクルトガ、他はモノグラフ

試験本番で配られる記述用の用紙はA3サイズ横型。5mm方眼よりは字を大きく書けた記憶があるので、横書きで罫線の間隔は6mm以上あったと思う。紙質は製図用紙と同じ、厚手のケント紙だったような気がする。

各シャーペンで書いた文章を見比べてみると、さすがに5mmマスで0.7mm以上の芯は太すぎて文字が潰れてしまう。同じ0.5mmでも、モノグラフよりクルトガで書いた線の方が、一定して細く見える。クルトガは回転力が追加されて芯の硬度より濃い目になるので、他製品を比べて評価するなら一段階濃い目の芯をセットした方がよい。

シャーペンの筆跡比較

試験本番のシミュレーションで時間を測りながら取り組むと、やはりモノグラフで全体を通してしまうことが多くなってきた。余裕があれば記述はクルトガに持ち替えたいが、消しゴム一体型の分、モノグラフの方が筆記スピードは上回る。作図でも室名と注釈の記入だけクルトガを使いたいが、試験終盤でシャーペンを使い分ける余裕がなさそうに思う。

0.5mmのモノグラフに合わせる芯は、記述も作図もB以上が最適。クルトガの方が字はきれいに見えるが、消しゴム一体型・ペン先製図仕様という絶対的なメリットのため、今年はモノグラフで攻めるか迷っている。あまりに便利すぎるので、建築士の製図試験は数年のうちにモノグラフが席巻してしまうのではないかと思われるくらいだ。