製図試験のもっとも深い闇…「記述」の未完がランク4という新説

合格発表後の一週間、ひたすら標準解答例の分析を続けてきたが、そろそろ記述にメスを入れてみようと思う。

「合格水準の標準的な解答例」を示す図面に対して、一切ヒントを与えられない「計画の要点等」通称「記述」。試験後に作文した内容を再現する人も少ないのか、図面に比べるといまいち話題になりにくい。予備校も記述については、ノウハウ流出の懸念から答案例の公開を避けている。

今年も例年どおり、試験元から記述の解答例は公表されていない。答案用紙は出ているが、個々の項目について議論するのは不毛だ。

しかし、図面中の任意表現要素と「適切/適宜計画」の対応を考えていると、記述についても似たような指示があったのを思い出した。

…補足してもよい

何とも曖昧な問われ方だが、ひょっとするとこれがランクIVの原因でないかという、恐るべき仮説を思いついた。

補足図を書かないデメリット

「(任意に)補足してもよい」というかたちで回答をうながされた記述の【補足図記入欄】。前回分析したように、要求室の「適宜」が「ほぼmust = sub essential」 だと仮定すれば、このお絵かきコーナーも似たようなものと考えることができる。

当該事項に対する考え方等をイラスト、システム図等により補足してもよい

答案用紙II. 3. 計画の要点等

常識的に考えれば、たとえ補足図を書かなかったとしても減点されるとは思えない。しかしわざわざ紙面を割いてスペースを確保してある以上、丁寧に対応すれば「何かしらプラス」と考えるのが人情だ。

もしランク1・2の差が微々たるもので、最終的に図面の印象や記述の密度でジャッジされるとしたら、任意補足図の効果は軽視できない。そしてほとんどの受験生が補足図を埋めて来るとしたら、「書かないこと」のデメリットは計り知れない。

ブラックボックスの最深部を暴く

ブラックボックスと呼ばれる製図試験の中でも、記述はエクストラブラックといえる核心部分だ。一切解答例が明かされないため、スクールの練習問題は「すべて的外れ」という仮説すら成り立つ。

そのため受験業界全体が疑心暗鬼になって、採点比重の予測が年々高まっているように思う。今では「図面と五分五分でないか」という説さえ、真実味がある。「記述と図面の整合性」という意味では、それ以上のウェイトを占めていてもおかしくない。

実体験としても、今年の図面は相当ミスをやらかした。エスキース時間が押した焦りで、記述の文章欄も半分くらいしか埋められなかった。しかし補足図記入欄は下手なポンチ絵だが、一応、埋めた。まったくの空欄は、なかった。

ひょっとすると…

平成30年、4人に1人がはまったランク4の足切りとは「記述の空欄」だったのではなかろうか。

記述の未完=重大な不適合

時間の限られた製図試験で、手間のかかるイラスト作成は誰もが避けたい作業だ。図面とはまた違った絵心、コミュニケーション能力が要求される。

建築士を目指す人がすべて、イラスト化や図解が得意とは限らない。設問の「補足してもよい」という表現から、【補足図記入欄】を書かずに済ませてしまった人が、少なからず存在すると思われる。

試験終了後に会場を見渡して、未完の図面は1枚も見なかった。しかしその下に隠れた答案用紙IIに、「未完」の補足図があったのかもしれない。

あらためてJAEICの「合格基準等」資料を確認しよう。ランクIVの理由と想定される「(5)重大な不適合」の中には、以下の項目、通称「未完」条件がある。

②「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「計画の要点等が完成されていないもの」又は「面積表が完成されていないもの」

「合格基準等について」 建築技術教育普及センター

「補足してもよい」という【補足図記入欄】に、何も書かなかったために「完成されていない」重大な不適合とみなされた。そう考えると、今年のランクIV、25.9%という高い割合も納得できる。

製図試験の「ドボン」は一見それとわからない落とし穴だからこそ、受験生から恐れられるブラックホールなのだ。そして今年のドボンは、記述の答案用紙にひそんでいたのかもしれない。