製図試験の答案例~プールより健康増進部門を優先させるという考え方

一級建築士の製図試験翌日に、日建学院の総評が出ていたので読んでみた。具体的な答案例が出ていないので何とも言えないが、推奨とされるポイントが列記されている。

プールの2階設置については、単に1階が構造的・設備的に不利という理由だけではないようだ。ほかの健康増進部門を、共同利用に便利な1階に優先配置したという思惑も見受けられる。

試験当日夜に公開されたTACの解答例も含め、気づいた点を補足してみよう。

1階に下ろすべき健康増進部門

日建学院としては、健康増進部門のうちプールでなくキッズとコンセプトおよび健康相談室を1階に下ろす方針のようだ。

確かに共用寄りのこれらの諸室は、地上階にあった方が地域住民に利用してもらいやすい。特殊な用途のコンセプトルームを設定した場合は上階設置もありだろう。特に理由がなければ、桜並木に面して配置した方が他施設の利用者の目にも触れて、外部からの利用を促進できる。

キッズプレイも常識的には低層階の方がいいと思う。自分は更衣室Bを2階に置いてしまったので、子どもたちも着替えや履き替えが必要かと思って2階に置いてみた。健康相談室も気軽に利用できるよう配慮するなら、1階がベターだろう。

プールを1階に置くと、パブリックな健康増進部門1を1階に設けるスペースがなくなってしまう。これはデメリットと認めざるを得ない。

ゾーンの中間に位置する曖昧な部屋

自分はプールで1階がふさがってしまったので、やむなく健康相談室を3階に持ち上げた。相談室は健増部門の中でもスタッフが行き来できる管理ゾーンに近い方がいいと思ったが、1階は事務室に場所を取られて空きがなかった。

スクールの練習課題では、セミナー準備室や講師控室のようなゾーニング的に曖昧な部屋は、たいてい管理ゾーンと利用者ゾーンの中間帯に設けられていた。どちらのゾーンにも出入口を設けて、相互に直接アクセスできるかたちが理想的だと思う。

実は2階のEVホールに相談室を置けたのだが、利用者の多いラウンジ的スペースを優先してあえて3階に上げた。これには理由がある。

健康相談室を3階に上げた理由

個人的なイメージだと、スポーツセンターにある相談室は、月に1回くらいスポーツ系の大学の先生が訪問してトレーニングメニューをつくってくれる部屋だ。予約制か先着順になるため、部屋の稼働率は低い。

2階の吹抜け隣接ベストポジションを、ほかに使い道が少ない相談室で埋めてしまうのはもったいない。1階のサービスゾーンにも少しだけ余裕はあったが、外部に患者を搬送しやすいよう、そちらは救護室を割り当てた。

TACの課題でも、ヘルスケア部門を3階に隔離する解答例はいくつかあった。特殊用途の部屋は利用目的が明確なので、あえて「ふらっと立ち寄れる」1階共用エリアに置く必要はない。それよりはカフェやコンセプトルームを優先した方がいい。

また、この規模の施設ではアルバイトの監視員以外に、プロのインストラクターが常駐しているとも考えにくい。ヨガやダンスなど週数回のレッスンのときだけ持ち回りでやってきて、控室を利用するはずだ。

講師用の控室も稼働率が低いと考え、スタッフ動線短縮のためスタジオと同じ3階に設けた。一方で、「従業員の着替えは1階で済ませられた方が良い」という意見もあるだろう。もしプールが別の階でスペースに余裕があれば、更衣室系は素直に1階に置いたと思う。

風除室から券売機へのUターンはなし

細かい点だが、TAC解答例のように風除室を出てからUターンして券売機にアクセスする利用者動線は不便に感じる。上下足の切り替えが迫っているので、スペース的に仕方なかったのだろう。

風除室脇のくぼみの扱いに悩んだが、ここは管理用倉庫など適当なスペースで潰し、出てすぐ横に券売機を設けた。あるいは実例を参考にすると、こういう飛び出し型の風除室を設けた方がすっきりするだろう。

平面図としてはあまり美しくなさそうなので、TAC課題6の答案例のようにグリッドをくぼませてから引き込むのがよさそうだ。

プール・機械室隣接の隠れたメリット

近所のプールを長年観察していて気づいたことがある。ボイラー室に常駐している職員さんが、2時間おきくらいにプールの温度や水質をチェックしにやって来る。作業着姿のまま男性更衣室を横切り、履き替えしながら往復するのが大変そうで気の毒に思う。

うっかりシャワースペースの人感センサーを作動させてしまうと、びしょ濡れという悲劇。施設の設計時に、更衣室を通らない管理動線を確保できなかったのだろうか。それとも人員削減や運用ルールの変更で、イレギュラーに発生したルーチンなのかもしれない。

プールと機械室が上下でなく水平に隣接していると、担当スタッフが直接行き来できるというメリットが生じる。風呂の湯を沸かすように、たびたび湯加減をチェックしに来ることもできる。

プールにいるお客さんが「ちょっと水が冷たいよ~」と声をかければ、隣のボイラー室で調整してくれる。そんなプールがあっても、おもしろいと思う。

公営プールで入館直後の履き替えは不自然

公共プールをイメージすると、「玄関入ってすぐ履き替え」というスーパー銭湯方式はちょっと考えにくい。公立中学校のプールを夜間一般開放しているところでは、それに近いケースを見たことはあるが少数派だ。

今回の敷地と用途からすれば、プールは更衣室直前、ほかの健康増進部門は1階か2階の階段まわりで履き替えさせるのが普通ではなかろうか。課題文に「履き替え」に関する強い拘束条件がなかったので、階別ゾーニングだけして、あとは更衣室B内で任意に履き替えさせる方式を選んだ。

2階の階段と更衣室Bの間で、上下足が混ざるデメリットはあるが、TAC課題の解答例でそういう事例はあった。それよりも、スポーツセンターのエントランスに施設全体の下足入れが存在する風景は想像しにくい。記述の方では履き替えの説明が求められたが、課題文の方にはどこにも「下足入れを設けよ」とは書かれていなかった。

希望的観測だが、健康増進2~3階で階層ゾーニングができていれば、玄関・階段前の履き替えスペースはなくても構わないのではなかろうか。もし「履き替え忘れで一発ドボン」なら、これも昨年の眺望のように特段の警告があってしかるべきだと思う。

上下足が明確に分離させている方が理想だと思うが、多少混ざっても小減点で済むことを祈りたい。