一級建築士製図試験翌日~続々公開されるスポーツ施設の答案例を分析

今年の製図試験トラップは「一体使用・任意エントランス」と見せかけて、70%の建蔽率だったようだ。標準的な7×7mグリッドで6×4スパンだと、建築面積は42×28=1,176㎡。これを微妙に下回る建蔽率を設定してきたところが、ますます確信犯だ。

スパン7mのワンパターン野郎は今年もあえなく撃沈。南北7・7・7・7に設定した時点で、避難通路が狭く減点だろう。昨年の教訓で8mは使えるようになったが、いい加減6×7mの利用者階段を覚えないとまずそうだ。

煎じ詰めれば、これも結局スパン割りの話。昨年はイレギュラーな8mを思いつけるかという課題だったが、今年は7mから縮小できるかという試験だった。6mを適度に混ぜたり、グリッド切り欠き、あるいは思い切って東西5スパンにすれば、建蔽率オーバーせずに解けたのだろう。

一晩明けて、いくつか答案例がネットに出てきている。失礼を承知で適当にコメントしてみよう。

あくまでスロープにこだわるTAC

「特記になくてもスロープ追加」という掟に最後まで忠実だったTACの解答例。

10m幅のプールに1.5m幅のスロープ追加なので、必然的にプール短辺は8mスパン。となると狭い南北に8mはきついから、プールは縦配置しかないという流れだろう。南北がっつり7・7・7・7、その代り東西5スパン、西側に10m開けて面積を減らしている。

TACよりむしろ日建課題に近いパターンだが、西側風除室のすぐ前に上下足切り替えを設けている。常に受付で料金徴収する公共施設のイメージだったTACが、急に健康ランド方式に鞍替えした感じだ。

上下足の切り替えというより、建物全体上足化して逃げるという安全側の解釈…えっ?コンセプトはともかく、カフェまで上足利用でいいの!?畳敷きで雑魚寝できる和カフェなのだろうか。40席にしては狭いから、屋外テラスの縁側にも展開する作戦だろう。

細部に切れがないTAC第一報

我々受験生のように6時間半みっちり考えたのでなく、適当に30分くらいでエスキースしたプランに見える。1階に廊下や小部屋が入り組んでいて、いつもの切れ味がない。

健康相談室はプラン中央、無窓でよいのだろうか。更衣室Bから廊下を迂回してトレーニングルームに向かう動線も、なんとなく冗長だ。

3階の南側開口部にマル防書き忘れているが、そのくらいはいいとしよう。北側余白は有効1.6mが、問題用紙であれだけ強調されているわりには、ちょっと狭く感じる。

3層吹き抜けは面積指定がないので、1コマ使わず縮小するのもありだろう。自分も吹き抜けで廊下が通せず悩んだが、この手があった。狭くても採光優先で、吹抜けは敷地の中央に設けた方がいいと思う。

3階のプールと見学コーナー、サービス階段の位置関係はTAC課題6の答案例そのまま。1階にしか管理用トイレがないのは気になる。自分だったら廊下の通風・採光を潰して、階段とダクトの隙間に小便所を設けたい。建物の雰囲気より排泄機能を重視するタイプだ。

キッズのボルダリング対策

TAC解答にはキッズ用プレイルームにボルダリング用ホールドがないが、みなうまく書けたのだろうか。クライミングは最近流行っているので、プール見学のついでに練習しておいてよかった。

キッズ用のレベルはわからないが、本気でやるならぐっと反らせて、壁から1mは厚みが必要だ。競技用のボルダリングだと高さ5mはあるイメージだが、子どもには危ないだろうか。

足立区のギャラクシティにある小学生用のウォールは高さ3mらしい。プレイルームに天井高指定はなかったのが、断面図で表現するならそのくらい確保しておけばよさそうだ。

延焼ラインは三方配慮?

延焼ラインは南北西と3方向確保だった。「歩行者専用道路も道路として扱うのが妥当」…きっと歩行者だけでなく自転車も通るから、桜並木に電動自転車が衝突してリチウムイオン電池が発火したりするのだろう。

廃校にまつわる祟りで、桜で首を吊るとか自転車衝突事故が続出。グラウンドで催されるらしい「地域の祭り」で、暴発した打ち上げ花火がプールに飛んでくる。当然、祭りの日には桜並木に屋台が並ぶだろうから、ガソリン携行缶に引火して爆発するのは目に見えている。

どうやら今後の製図試験は、歩道や桜並木の曖昧な道路を、「法律上の道路」かどうかジャッジさせる問題になりそうだ。この調子だと来年は、けものみちとかペンギン・ハイウェイまで出題されそうだ。

南のプール開口部にLow-E複層ガラスと書くよりは、網入りガラスとでも書いておいた方がよかった。西の屋外テラスも、ウッドデッキだと燃えやすくて減点かも。もう桜並木は燃える前提の可燃物、罠にしか見えなくなってきた。災害時の非常用発電、薪ボイラーの燃料と考えるのが妥当だ。

製図試験.comさんはプール1階

こちらも早々に解答例を公開している製図試験.comさん。興味深いその答案例は、プール・機械室1階配置。TACと同じで8mスパンを横に使ったプール縦置きだが、北や西に利用者エントランスを取るとなれば、この位置しかないだろう。

大手スクールと設計思想が異なるのか、機械室がプールと分離していたり、監視員室上部に唐突にDSが出現する奇妙な表現が見られる。1階プール下もベタ基礎になっているので、豊富にある地下ピットを通じてプールにPS/DSを貫通させるのだろうか。

プール室上部の半分だけ部屋を乗せるというのも、見慣れないパターンだ。自分は多目的スポーツ室を吹抜けにせず3階に上げてしまったので、プールの上は全部緑化屋根にできた。トレーニングルームのマシンやダンベルは重そうだが、PC梁で耐えられるのだろうか。

1階便所は下足利用がいいと思う

こちらは1階健康相談室だけでなく、救護室まで無窓。健康増進を目的としたスポーツ施設で、無窓居室を乱造するのはネガティブだと思う。しかも今回の健康相談は、コーナーでもブースでもなく「室」だ。

建物へのアプローチは西側がサービス用出入口で、利用者エントランスは北になっている。これも桜並木を考えると、逆が正解ではなかろうか。

自分の場合は以下のパターン。西と北に均等に風除室を設けて逆L字接続。サービス通路は北側の東道路に近い位置に設置。機械室は右上隅で「搬出入及び更新に配慮」。エントランスの配置はエスキース中に練り回すより、最初に直感で思いついたアイデアが正しかったりする。

TAC解答例と同じく、こちらも風除室直後で履き替えさせる系。正直、グラウンドから駆け込んでくるトイレ利用希望者は、シューズを脱ぐ暇もないと思う。まさか券売機でチケット買ってトイレも有料とか?

他施設の使用状況に「便所完備」とは書いていないから、やはり施設のトイレを一体利用させるべきだろう。そう考えると、1階フロアの共用便所は下足利用が便利だ。

製図試験.comさんのプランは各部屋面積調整のためか、柱のグリッドを崩して間仕切り壁を設ける傾向がある。多目的スポーツ室と更衣室B、1階機械室まわりが顕著だ。人によっては、逆に面積で妥協しても見栄えよくグリッドに添わせるべき、という考え方もあるだろう。

2~3階のホールは階段・EV前に広くとって吹抜けにも面しているので、明るく開放的で素敵に見える。どうやら今年、プールの見学コーナーと見学窓は、しっかり設けないとアウトなようだ。屋上の電気設備スペースは地階の逆で、こうやって点線で図示しておけばよかったとわかった。

自由度が高すぎてどうにでも解ける

今年の課題はおそらくプール1階・2階でも、縦型・横型どちらでも解ける。想像通りプールの階指定はなく、プール自体も微妙な正方形に近くて解答の自由度をアップさせていた。

これに加えてエントランスの設置自由もあり、床面積さえクリアすれば多様な解き方が可能にみえる。膨大な課題文と敷地図を解読して、あまり迷わず手際よくプランをまとめられた人が受かりそうな年だ。

眺望や面積の落とし穴だけ回避して、あとは多少乱雑でも漏れなく書き込めれば合格…毎年言えることだが、どれほど課題がややこしくても受かる人は受かるのだろう。

「一体使用」と段抜き警告を深読みして、東西南北四方向にエントランスを設けるシミュレーションとかしていると、どんどん時間を奪われる。プールも1階か2階か、早い段階で決心しないと時間が厳しかったと思う。

記述はお絵かき欄が多すぎて焦ったが、手が震えて字が書けなかったので、絵で表現する方がむしろ楽だった。製図試験.comさんは記述の答案例も公開してくれていて、温水プール屋根の「構造と材料」はやはり悩んでいるようだ。普通に考えると確かに「コンクリート、鉄筋」しかない。

製図の対策がますますしんどくなる

来年のスクール練習課題をつくる担当者は、敷地をたくさん書いたりコンセプトを採点したり大変だと思う。延焼ラインとか防火区画とか、製図試験はもう対策することが多すぎてうんざりだ。

今年は最低、桜並木にエントランスがあって、適切にゾーニングできていれば合格とかにならないだろうか。何とかこれで終わりにしたい。