一級建築士製図独学~試験本番の感想と反省。北側客室配置で不合格

いよいよ製図試験の本番。二次試験は11:00開始の17:30終了という遅めのスケジュールなので、余裕を持って支度をすることができた。

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前夜の『キングダム』

朝型に慣らす必要はないと思って夜は普通に生活し、前夜はスーパー銭湯でリラックスしてきた。あまりにくつろぎすぎて、休憩スペースでマンガを読み始めたら思わず長居してしまった。

なぜか読んだことのない『キングダム』を途中の30巻から3冊読破したところで閉店になった。家に帰って寝たのは13時過ぎで無謀な試みだった。やはり製図は投げやりだったのか、学科試験のときより緊張感がなかったといえる。

試験当日の持ち物

当日の午前中~移動時間は記述の復習に専念した。エスキースはこれ以上新しい課題を想定しても消化しきれない気がした。

製図板のバッグに道具類と昼食、尻に敷くクッションを漏れなく納め、電車で出発。A2サイズの製図板は不安定だが網棚にぎりぎり載るのが救いだ。乗換して目的地に近づくと、徐々に製図版を持った受験生が増えてきた。

試験会場は学科とまったく同じ教室だった。6人がけのシートに2人ずつ座るのでスペースは余裕がある。最前列だったので、他の人の様子が見えずつまらないと思ったが、試験開始前に思わぬ特典があった。また、他人の作業ペースを見て焦らされることがなかったので、集中できてよかったともいえる。

開始前の公式カンニングタイム

試験時間が近づいてスタッフが机の上に問題・解答用紙を並べ始めた。ここで目の前の机に束になって置かれたエスキース用紙を裏から透かして見ることができた。

薄い紙なのでどうやっても印刷が透けて見える。配布物が多いのでこうやって事前にスタンバイしておかねばならず、オペレーション上、最前列の人に見えてしまうのは仕方ないのだろう。

エスキース用紙は別に見てもしょうがないと思ったが、何やら敷地図のようなものが書かれている。今年は変則的にエスキース用紙の方にも指示があるようだ。下側は水面、道路は上側なので、上が北なら南北に下る傾斜地だろうか。まわりの建物や、桟橋らしき出っ張りもうっすらと確認できた。

度肝を抜かれる課題文章量

試験が始まって問題用紙を見ると、敷地図が省略され文字でびっしり埋められていた。敷地の情報はエスキース用紙の左上1/4を使って、例年より詳しく書き込まれているようだ。裏表に透かして見ていたせいで方位が混乱したが、予想通り南側への傾斜地で合っていた。

課題を上から順番に読み進めて、まず気づいたのは要求客室が多すぎる。客室Aが35㎡という結構な広さで10室、プラス車椅子用のBとファミリー用のCが2室ずつ。どうやって収めるのかわからないが、指定床面積は 2,400~2800㎡と広めだ。

大浴場やトレーニングルーム、地域ブランドショップは想定内として、内風呂だけでなく露天風呂が要求されているのは面倒くさい。幸い日建学院の市販テキストに1題だけ上層階の露天風呂があったので、配置をイメージすることはできた。

「コンセプトルーム」という見慣れない要素があり、記述の方に自分でコンセプトを書いて提案するとある。これはおもしろそうだとポジティブに解釈したが、考えるのに結構時間を取られた。

車回しと空調・給湯中央制御

外構の駐車台数は4台と少な目だが、「直径12mの車回し」という未知の要素が出題された。課題では一度も練習していないが、要は12mの円が収まる広場を用意すればいいのだろう。

昨晩寝ながらコンパスを持参しようと思いついたが、すっかり忘れて置いてきてしまった。テンプレートでは到底間に合わないので後悔したが、とにかく寸法さえ合わせておけば文句はないように思われた。

設備計画で「外気処理空調機+ファンコイルユニット」、「熱源機器+貯湯槽」による中央式給湯方式という指定が出て驚愕した。客室ごとの空冷ヒートポンプしか練習しておらず、ファンコイルに何が必要なのかさっぱりイメージできない。

とにかく全部屋にDSもPSも張り巡らせておけば、空調も給湯も中央制御になるかと思って、やたらと設備スペースを増やしてしまった。外気も機械室からDSで各室に供給するものと想定したのだ。1m四方の竪穴を横に区切ってDS/PSとした、我ながら見たことのないぶざまな配管計画が出来上がった。

配置図は単独出題でなかったので安心した。記述の方は先ほどのコンセプトルームと地盤条件以外は何とかなりそうだ。ダクトルートは我ながら意味不明だが、手持ちのボキャブラリーを組み合わせて適当に書けそうな気がした。

犠牲系を発動して北客配置へ

室名表の最上部に「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する」という特段の指定があった。これが本試験の最大の試練になったが、もちろんマーキングして重点チェックしておいた。決して見落としたわけではない。

ところが敷地図を見ると、湖は南に見えるものの名峰がどれなのかわからない。とりあえず南側にグレーの大きな矢印があり、「湖と遠くに山並みが見え景色がよい」とコメントがついている。客室を南にさえ向けておけば条件は満たすかと思って部屋の配置を考えてみた。

いつも通り7mスパンで考えるが、敷地は54mと幅広でも、2階に客室が収まらない。どうやってもAの10室すらすべて南に向けるのは難しく、1階にも客室を回さないといけない。10分以上試行錯誤したが、うまいやり方が見つからないので、苦渋の選択として全室南側眺望は諦めることにした。

日建テキストの課題でさんざん練習した通り、吹き抜けを中心に南北に客室配置するツインコリドーを想定した。Aの半分は北向きになってしまうが、そちらも道路越しに樹林が見えるから悪くないだろう。

このままエスキースで時間を消耗するよりは、早く記述や作図に入りたいという焦りもあった。これがウラ指導の言っていた「犠牲系」かと思い、割り切って進めることにした。

南北客室配置の上、1階にもB室を並べた。学科試験前に入院していた経験から、車いすならエントランスからスロープやエレベーターもなしで、直接客室に行ける方が便利だろうと考えた。

地階は北側1スパンを削って造成を抑え、経済性にも配慮。これは課題の必須事項に入っていなかったがプラスになるはずだ。

名峰のトラウマ

エスキースが終わってプランが決まったところで、敷地図の右下にもう一つの矢印があることに気づいた。「遠くに名峰が見え景色がよい」…矢印がやや東に傾いていて、見れば敷地の東も斜めに樹林が伐採されている。ということは、客室的には南だけでなく東の眺望もありということに今さら気づいた。

南東配置という縛りなら、他にもやりようがあったかもしれない。しかし客室Aの「間口は心々4m以上」という制約から8mスパンを思いつかなかった時点で、全客室を2階に収めるのは不可能だったといえる。6~7mなら練習したので可能だったが、8mというのは試したことがなく考えもしなかった。

結局エスキースをやり直しても挽回は不可能だと思い、そのまま作業を続行することにした。図面が未完成で終わることだけは何としても避けたい。

手が震えて字が書けない

エスキースの途中で妙に余白が足りないと思ったら、敷地図に1/4を占有されているためだった。時間もないので倍コマプランに止めて1/400図面は清書しなかった。そのためかえって本番の1/200図面上で考えてしまう時間が増えたといえる。

記述も分量が多かったので、いつもより長く1時間を超えるくらいかかった。最初の書き出しで手が震えて5回も消しゴムで消してやり直した。極度の緊張状態では普通の文字すらまともに書けないという衝撃…。

このまま震えが止まらなければ、画数の多い漢字を正確に書ける自信がない。「…配慮/考慮した」は「…とした」に言い換え、幼稚だがなるべく平易な言い回しになるように工夫した。

殴り書きでも仕上げた

作図については不安要素はなかったが、やはり本番までに書き上げた枚数も少なく、明らかにペースが遅かった。断面図に入ったところですでに17時。もう見直しや什器・タイルを書き込んでいる時間はない。

一瞬終わったかと思ったが、気を取り直して超速で断面図を仕上げた。植栽は殴り書きになってしまったので、まだ書かない方が見た目がよかったかもしれない。最後の方に書き入れた室名は、自分でも文字が読めない。

風呂場にサウナが必要だったのを思い出し、シングルラインで追加した。屋根の太陽光パネルや防火シャッター、ドライエリアのタラップなど書き忘れたパーツは多いが、ラウンジやレストランの家具を書けなかったのは痛い。気の利いたコメントの類もほとんど書けなかった。

今思い出すと、終盤ではガラスのサッシ線を0.3mmシャーペンで細く書いたり無駄なことをしていた。練習でも使わなかった細ペンで、芯がボキボキ折れて苦労した。エスキースも失敗したし、作図も間に合わないという自滅的な心理状態になっていたのかもしれない。

製図試験の本番はメンタルな部分が影響が大きく、その点は場数を踏んだ過年度受験者の方が有利だと思う。

作図中も気になって仕方ない北客

一応、書くだけ書いて完成はさせた。残り30分で一から断面図を書いたにしては、我ながらよくやったと思う。

しかし、北側に客室配置してしまったことだけが、作図中ずっと気がかりだった。重要事項の見落としで、足切り失格か大幅減点か、そしてまた来年か…そんなことを考えながら、出来が悪いとわかっている図面を仕上げるのは心理的にきつい。

それでも図面未完成で、当日中にランク4決定となるよりはましだ。他の会場では、終盤に受験者のすすり泣きが聞こえてきたという。

まるで敗戦撤退のしんがりを務めるような悲壮な気分で図面を書き上げた。こんなつらい気持ちになったことはここ何年もない。間違いなく学科試験より緊張を強いられる、この一年で最も過酷な時間だった。

帰りの電車は意気消沈していたが、目の前にラオウの「我が生涯に一片の悔い無し」というTシャツを着た人がいて、噴き出してしまった。このデザインはすごい。ここぞという勝負にぜひ着ていきたいTシャツだ。

「北」に翻弄された2017年

翌日から続々と各校の模範解答例が発表され、南東のL型配置が正解とわかってきた。特に8mのスパンを2分割すれば、客室Aを細長くして5スパン分で収められるというテクニックには脱帽した。

もはや北側客室配置に可能性はないのだろうか。たまたま見つけた5chのスレッドで論争が繰り広げられているのを、興味深く観察した。その後数日間は、今までで一番5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)を見た時期だったかもしれない。

北客配置は北朝鮮、北側景子と罵られ、中には「桟橋の形状がL字配置を暗示している」なんて分析もあった。試験元は2017年今年の漢字「北」すら予言していたという説もまことしやかに議論されている。課題を作成しているのは国内屈指の天才集団らしい。

北配置は足切りとか、マイナス5点で済むとか、いろんな説もあったが結局採点基準は公開されない。悶々としながら脳内でエスキースしたり、合格/不合格通知を見たりする夢を何度も見た。製図試験の勉強中は、寝ている間もエスキースを考える癖が止まらないのがつらい。

12月になって届いた通知ハガキでは、問答無用のランク3。やはり落ちるべくして落ちるというか、まぐれ当たりはなかったようだ。結果の通知まで2カ月以上あるので、覚悟はできていた。全体の合格率も例年より下がったが、ランク3の自分にはあまり関係ないだろう。

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