プール極小&車が多すぎる日建学院課題1Bを悶絶しながら解いてみた

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いくつか解いてみた課題の中から、無作為に抽出したエスキース案を公開してみようと思う。今日は日建学院の演習課題1B。おそらく学校では最初の方でやるイージーな課題だと思うが、複雑な外構や見たことがないプール寸法で手間取った。

全国ランク3の過年度生が晒す荒唐無稽な解答例

演習1Bを振り返ってみると、駐車場の要求台数が合計13台と、手持ちの課題の中で一番多い。代わりにプールは15×8mサイズと、今まで見た中で一番小さい。さらには天井高7.5m以上という破格の多目的運動室が出てくるユニークな設問だ。

答案例を見ずに挑んでみたところ、1/400の平面図だけ起こして断面図やPS配置、避難距離、防火区画はスキップしても、2時間くらいかかった。鍛え抜かれた日建学院生から見れば、序盤の小手調べみたいな課題かもしれない。本番でこのレベルの課題が出たら、自分的には結構ピンチだ。

やみくもに解いてみたので、日建学院の解答例とは結構違った感じになった。エスキース時間120分でもしょせんはこの程度…採点するとしたら何点なのか、誰か教えてほしい。

以下は老害ジジイの独り言。まじめに勉強している人には時間の無駄なので読まなくていい。できない受験生が悶え苦しむ雰囲気だけでも感じてくれたらと思う。ランク3の図面はこの程度なので、安心してもらってよいという過年度生からのアドバイスだ。

日建学院課題1Bの答案例

1階平面図

日建学院課題1Bの答案例

2階平面図

日建学院課題1Bの答案例

3階平面図

敷地図の矢印をまずチェック

敷地は2面接道で、道路の幅は2つとも同じ。この場合、敷地が間口広く接する方が利用者のメインエントランスになる。管理側の出入り口はどちらでもよさそうだが、サブ扱いの道路も有効活用した方が採点官の印象はよさそうだ。

周辺環境としては南に公園があるが、特記事項には特に眺望配慮の指定がない。念のため、名峰の方角を示すいやらしい矢印がないか問題用紙の隅々までチェックしておいた。方位はここ数年「上が北」で固定されているようだが、変な方向を向いていないか要確認だ。

プールの設置階は3階指定。設備スペースは適宜だが、常識的には1階配置だろう。1階の機械室から2階を突き抜けて3階プールの床下ピットに届く、極太のPS及び単一ダクト用DSが必要になるめずらしいパターンだ。

無柱空間=最上階決定

その他、階構成に影響しそうなものとしては、無柱空間指定の多目的運動室250㎡がある。天井高7.5mというのは他の課題で見たことがない。きっと立体機動装置の訓練でもするのだろう。まじめな解説として、7.5mだとバレーボールはできないが、バスケットボールはプレイできるぎりぎりの階高だ。

2年目の試験2週間前になって初めて知ったのだが、「無柱空間」というキーワードが出てきたら上に部屋を置いてはいけないらしい。柱がない梁の上に上階の柱を立てると、構造的に不安定になるからだ。

とすると、無柱の部屋は最上階に置くか、2階に配置して3階部分を吹抜けにすることになる。今回は天井が異様に高いので、後者のパターンが合理的だろう。

去年受験したときは「無窓居室はNG」という常識すら知らなかったので、製図試験は奥が深い。「無柱空間=最上階」と覚えれば、これは逆にわかりやすいヒントだ。

日建課題は上足/下足がわかりやすい

50×35mという標準的な敷地の広さに対して、プールの長さは15m。7×7mグリッドで3スパン21mとれば、プールサイドを幅3mずつ確保できる。縦でも横でも斜めにでもプールを置けそうなので、自由度が高すぎて迷う。

ひとまず基本戦略にもとづき、プールに異変がないのでスパン割りは7m均等グリッドで確定。記述的には、経済性・施工性に十分配慮された理想のラーメン架構だ。

敷地の余白は南北3 or 4m空くのでOK。東西は8mも余るが、異様に多い駐車場の要求台数と屋外カフェテラスを考えると、広めに外構を確保した方がよさそうだ。

日建課題では、1階で上下足履き替えさせるのがセオリーらしい。2階以上が上履き利用のスポーツ部門オンリーになるので、階別のゾーニングとしては明快でわかりやすい。もし日建学院生がこのパターンしかやっていないとしたら、下足利用の共用部門が3階に混ざるような、気持ち悪い課題も解いておいた方がいいだろう。

余裕で面積オーバー

とりあえず今回プールは横置きでやってみた。1階はまあ、右下の交差点近くにレストランとテラスを設けるのが順当だろう。

南の風除室に近接させて事務室の受付カウンターを設けると、利用者階段・EVのコアは敷地の奥側に追いやられる。管理用階段も同じ北端スパンに並べるとすると、プール配置は自然と南側になる。

2階の多目的室は吹抜けにするため、平面的に3階プールとかぶらないようにする。プール横置きの場合、この手のでかい部屋はプールの余白に追いやるのが定石だ。

倍コマ方眼でごにょごにょエスキースしていたら、何となくまとまってきた。試しに面積計算してみたら、3,100㎡もあり指定床面積~2,800㎡を軽くオーバー…

慣れてくれば、スパン割りと吹抜け、屋外テラスの入れ具合で、合計床面積がおぼろげに見えてくるのだろう。1/400書き終えてからの面積オーバーはダメージがでかいので、初心者はこまめに面積試算しておくのが吉だ。

間違っても面積を数えないまま1/200に突入してはいけない。自分はチビコマ→倍コマ→1/400の過程で3回は電卓をたたく。

ピロティー駐車場の練習

300㎡も大胆に面積を減らすには、吹抜け程度では間に合わない。抜本的にスパンを1列抜くくらいの大手術が必要だ。とりあえず敷地の余白を広めに確保しておいて、あとで考えようと思っていた外構に着手した。

車が合計13台もあるということは、ピロティー駐車場の可能性が濃厚だ。確か日建市販テキストでそういう答案例があったのを思い出し、1階のグリッドをえぐってみる。南はメインエントランスと駐輪場で輔車分離したいから、駐車場は交差点付近のカフェテラスを避けて北東に設けた。

7×7mグリッド一コマで車2台分…13台だと7コマも必要?東西の余白を西側に最低3m確保して、東に残りの5mを持ってくる。ここで大胆に東端のスパンを屋外化すると、東西幅12mの余白を生み出せる。

車は収まったが通路がない

サービス用1台を含めて隙間なく駐車場を並べたら、2コマ切り欠くだけで12台とめられた。サービス用のうち1台は、施設長のロールスロイスがとめられるよう、管理用出入口近くに設けておこう。車長の長いファントムEWBだと、駐車スぺースの長さは最低6.5m必要だ。

あとから気づいたのは、駐車場に隙間なく車を並べてしまったため、駐車してからエントランスまで歩ける歩道がない。利用者をいったん敷地の外に出してからアプローチさせることになるので、歩車分離の不徹底もからんで減点されそうだ。

車椅子使用者用の駐車場は、センター長の専用ガレージをやめて南側に持ってくるべきだった。そうすれば空いた隙間から、第二の東側サブエントランスまで安全にアクセスできる。

北端列からは駐車場を横切らないとアプローチできないが、日建学院の解答例的にはOKなようだ。車椅子用だけ、駐車場のお尻を入口側に向ければ正解っぽい。

1スパン削ってリノベーション

東西1スパン削ったが、いろいろ調整したら要求室も床面積も指定範囲内に収まった。いったんプランが完成してから1スパン減築するような大リフォームを施す場合、得てして不整形で醜い部屋を生じやすい。

今回は2階の更衣室が異形の配置になったが、要求面積的にはクリアーしている。あとから考えると、廊下のトイレを3階と同じ北東隅に持って来れば、プール階と同じ1.5コマずつ更衣室をきれいに並べられた。

同様に、多目的運動室の備品倉庫が不気味に49㎡もあり、しかも南側公園を望める特等席を占めてしまっている。これを運動室の北側に寄せれば、廊下の南端に素晴らしいラウンジを用意できた。

エアロビクススタジオの要求面積も、よく見ると80㎡だった。トレーニングルームの器具庫を北のエアロビ室にめり込ませれば、2階の南面はすべて明るく開放的なLow-E複層窓にできたはずだ。

こういう工夫を施せば、プラン的にはランク3.5くらいまでレベルアップできたかもしれない。2時間のエスキース中には到底思いつかず、1/200を作図しながらごちゃごちゃやり始めると時間が足りなくなるというのが、よくあるパターンだ。

極小プールのスロープ問題

プールが小っちゃかったので、おまけで車椅子用のスロープを追加してみた。長さ15mで深さ1.2mあるプールだと、1/12勾配に必要な14.4mの距離プラス転回幅を確保できないことに気づく。

苦肉の策でスロープをプールからはみ出させてみたが、見た目的にはどうも微妙だ。15mプールを激しく往復してインターバル練習したあと、もうろうとプールサイドを歩いていたらスロープの出っ張りにけつまずきそうだ。

バリアフリーなスロープに足を取られて転倒、骨折、溺死とかちょっと悲しい。安藤忠雄レベルの巨匠なら「そんなスロープでコケる奴が悪い」と言ってのけそうだが、ペーパー建築士は一発で免許はく奪だろう。

もし15mプールにちゃんとしたスロープを設計するなら、おそらくこんなカーブ形状になる。

プールへのスロープ設置案

種類豊富な円形テンプレートを駆使すれば、複雑なコーナー部分も正確に作図できるだろう。

作図時間を短くする逆読みプランニング

自案の見どころは、南北をスカッと貫通した管理用廊下だ。おかげで従業員が裏口でタバコを吸ったり、路地裏で植栽を眺めながら臭いのきつい弁当を食べられる。実はこの廊下を含めて南北に断面を切ることにより、断面図の作図時間を大幅に短縮できるという利点まである。

製図に熟達すると、エスキース中に先回りして作図時間を減らせる工夫をこらせるようになる。無窓オッケーな更衣室を隣地側に配置して、延焼ゾーンの防火マークを省略するなどお手の物だ。

逆にもし時間が大幅に余るなら、わざわざ庇やトップライトで切るとか、見ごたえのある複雑な断面図を一度は書いてみたいと思う。

試験本番で時間が余る…おそらくそんなことはない。今年もラスト15分で断面図を仕上げる羽目になるのだろう。あれほど練習した採光・通風矢印、寸法を覚えた屋上機器類を一つも書けずに終わるのは悔しいものだ。

スポーツ部門の受付を管理ゾーンへ

エスキースが終わってから日建の答案例を見たら驚いた。更衣室から廊下にトイレまで、2階と3階の平面構成がほぼ一致している。PSも上下にすっきり通せるので、相似形の平面を積み上げる基準階方式にはボーナス点をあげたいくらいだ。今年見た課題の中でも一二を争う美しさだと思う。

一方、自案は3階ラウンジの眺望配慮などいまいちだが、2~3階の受付が管理部門に連絡しているのは我ながらよくできたと思う。これでカウンターのスタッフが急に催しても、廊下をダッシュせずに最短動線で従業員用トイレに駆け込める。

日建式だとプールの避難用に共用階段をつなげるパターンが多いようだが、自分的には管理用廊下を接続して動線の交錯を避けたい。もっとも非常時に避難経路を探すのには、裏口っぽいサービス通路を選ぶより、さっき通った廊下が見えている方が安心だろう。

ラウンジから一戸建て住宅を見下ろせる

解答例では敷地の南に余白を多く設けて、駐車場やカフェテラスを置いているのが特徴だ。敷地図をよく見ると、東側は車道を挟んで一戸建て住宅だったので、あまり賑やかな開口を設けない方がいいという判断だろう。

改造車がたむろする駐車場がうるさいとか、カフェテラスで供されるサメ肉の料理が臭いとか、隣地からクレームがたくさん寄せられそうだ。

自分なら家の前にプールができると便利でうれしい。お隣さんにはプールの年間パスでも渡して懐柔すれば十分だろう。記述で補足しておきたい。

PSの不足、DSの位置もおかしい

その他、細かい点としては、1階管理廊下横に出現するDSのダクトルートが不明だ。きっと地下に秘密の空調機械室があるのだろう。あるいは地下ピット経由で無理やりダクト横引きしているのか…

プールが3階なので、機械室直上の2階エアロビスタジオにDSと同じくらいぶっといPSを通しておくべきだった。ボイラーや厨房の煙突、庇のたぐいも単純に書き忘れた。きっと本番1/200図面でも書き漏らすと思う。厨房の前室というのは初めて見たが、こんな配置でよかったのだろうか。

事務室内の医務コーナーは出入口に近接させたので、サービス用駐車場で控えている霊柩車にストレッチャーを乗せて病院搬送できる。わざわざ表通りにロングホイールベースの駐車スペースを設けたのはそのためだ。救急車の適正利用を心がけよう。

ランク3以下はぶっちゃけアナタの敵でない

エスキース2時間かけて自己採点50点くらいの答案だろうか。あとからスパン短縮したおかげで、部屋の配置がいびつになったのは痛い。7mグリッドなので、東側から1スパン削るしかなかったのも仕方ない。答案例のように南北6mピッチだと、1スパン削っても4スパン残せてプール配置できる、このテクニックは覚えておきたい。

ちまたにあふれているのは、予備校教師やプロのつくった美しい答案例ばかり。しかし世の中には、時間をかけてもこの程度しか思いつかないランク3以下の受験生が4割いる。日建学院生でこれよりましな答案をつくれた人なら、安心していいと思う。