製図試験、解答例のプール上部は吊り材なしの特定天井?という謎

今年の標準解答例の断面図を見て、どうしても解せない部分がある。プール上部の天井断面線がシングルラインで、「鋼製下地による天井」と書かれているだけなのだ。

今年のプール室は大空間で天井高もあるため、ほぼ確実に「特定天井」に該当するといわれていた。そのため、プールの天井裏には吊り材とブレースをびっしり書き込むのが常識と考えていた。

しかし試験元から公表された解答例には、2案ともそれがない。それでも条件からすれば、やはり特定天井に該当するように見える。これは一体どういうことなのだろうか?

特定天井の定義

まず特定天井の該当条件からおさらいしておこう。建築基準法施行令39条3項で定められた特定天井の具体的内容とは、つぎの「いずれにも」該当するものとされている。

  • 吊り天井であること
  • 居室、廊下その他の人が日常立ち入る場所に設けられるもの
  • 高さが6mを超える天井の部分で、その水平投影面積が200㎡を超えるものを含むもの
  • 天井面構成部材等の単位面積質量が2kgを超えるもの

国土交通省平成25年告示第771号

予備校課題に出てくるプールの標準サイズは長さ20 m×幅8mだった。これを7m均等スパンのグリッドに収めるには、最低8コマ必要。するとプール室の面積は7×7×8=392㎡。練習問題では、ひたすら(392)と要求室の面積を書きまくった。

天井のないトップライト部分を除いても、水平投影面積200㎡は軽くオーバーする。そしてプール室の天井高指定がなかったとしても、常識的には6m程度確保するのが妥当だ。解答例のプールは2案ともそれ以上高さがある。

天井部材の重量が2kg/㎡を超えるかどうかはわからないが、安全側を見て今年のプールは特定天井とみなすのが無難だった。

特定天井の図面表現と記述対策

特定天井の制約を部材構成でクリアする「仕様ルート」という考え方では、以下の2種類が存在する。

  1. 斜め部材あり+壁との隙間(6cm以上)
  2. 斜め部材なし+壁との隙間なし

後者の「隙間なし」タイプは平成28年の告示791号で追加された新仕様。作図は楽だが新しいやり方なので、万が一採点官が知らない(そんなバカな!?)というリスクを考え、本番では前者のブレース式でいこうと考えていた。

天井裏に部材をたくさん書けて、断面図の密度・見栄えも向上できるというメリットがある。そして記述で中身が問われた場合も、上記の仕様に加え「吊り材を1本/㎡配置、下地材の緊結、部材を軽量化…」など、定型化された文句を丸写しできる。

試験本番ではやはり温水プール室の面積が軽く200㎡を越えて、天井高も6mちょうどになった。ひたすら練習してきた吊り材・斜材を断面図の天井裏に書きまくったのは言うまでもない。あえてトップライトは断面に含めなかったので、天井全面に渡ってびっしり補強材を表現した。

「計画の要点等」の記述で、「(5)温水プール室の構造計画→上部の床又は屋根の構造・材料」と問われた部分が謎だった。記入欄も1.5行くらいしかなく中途半端な面積だったが、屋根=天井?と解釈して上記の仕様を書きまくった。

特定天井に関しては、練習の成果を試験本番で十分に発揮できたと満足していた。

天井裏に何もない…

さて種明かしを楽しみにしていた標準解答例を見てみると、①②案とも断面図の天井裏がやけにあっさりしている。「鋼製下地による天井」という注釈はあるが、それ以外はブレースどころか吊り材すら見当たらない。

①の多目的スポーツ室は、天井高5,800でぎりぎり6mに達していない。しかし温水プール室の面積はどちらも400㎡以上あるし、大きめのトップライト部分を除いても確実に天井の投影面積200㎡は超える。そして天井高も6m以上ある。

スクールの常識からすれば明らかに特定天井だが、それらしき補強がないとはどういうことだろう。注意深く図面を眺めて、いくつか仮説を考えてみた。

①吊り天井でない

先ほど紹介した告示771号では、特定天井の定義が「吊り天井であって、次の各号のいずれにも該当するものとする」と始まっている。

つまり、そもそも吊り天井でなければ対策は不要なわけで、一部の予備校解答例には、あえてプールの天井を張らない例も登場した。プール内は湿気や塩素で金属が腐食しやすく、むしろ天井などない方がメンテに有利という理由もある。

それでは解答例の断面図、屋根スラブから2m近く下がった位置に張られたこの天井は、「吊り天井ではない=特定天井にあてはまらない」という解釈なのだろうか。

「鋼製下地」にヒントがあるかと思って調べてみたが、これは新技術でも何でもなく、吊り材と野縁、野縁受けで構成される、むしろ「吊り天井」の代表的な方式と思われる。

②天井素材が超軽量

高さと面積からすれば、確実に特定天井にあてはまる。それ以外の項目を検討すると、「人が日常立ち入らない可能性」…当プールはもっぱら見学コーナーからの観賞用で、人が入れない非居室という扱いなのだろうか?

高知県室戸市にできた「むろと廃校水族館」のように、プールにはサメが泳いでいる可能性もある。あるいは試験前に冗談で書いた核燃料プールとか。

すると残りの特定天井「非」該当条件は、「構成部材2kg/㎡以下」に絞られる。調べてみると、グラスウールや不織布を材料とした、地震対策の軽量天井が開発されているようだ。

しかし図面にわざわざ「鋼製下地」と明記されている以上、単位重量2kgを切るとは考えにくい。プールという居室に備え付けらえた、金属製の重い天井で、高さも面積も該当条件を満たすとすれば、やはりこれは見まごうことなき特定天井だ。

③図面表現を省略した

特定天井だからといって、細かい吊り材やV字型ブレースを断面図に表現しろと、問題文に書かれているわけではない。これらはあくまで予備校が安全対策と考えた指導方針で、試験ではまったく不要だった可能性もある。

ただし解答例②の見学コーナー天井裏には、上階ダンススタジオの振動対策として「防振ハンガー」という吊り材が書かれている。同じ1/200のスケールでしっかり明記してあるのだから、プールの上にも部材があるなら表現されてもおかしくない。

ほかの部屋の天井にも当然吊り材は存在すると思われるが、断面図にはいちいち書かれていない。記述で問われた「振動・騒音対策」という特別な意図がないなら、天井裏のディティールは省略して構わないという意味だろうか。

④計算ルート、大臣認定ルート

あらためて特定天井のルールを調べてわかったのは、上記の補強対策は「仕様ルート」という一方式にすぎないということだ。ほかに「計算ルート」「大臣認定ルート」という別の技術基準もあり、これらで検証できれば対策不要という見方もできる。

図面からは手がかりがないが、もしかすると記述でこれらのルートについて書けば、特定天井でも斜材を省いてよかったのかもしれない。予備校の指導でもなかった第3のオプションだ。

特定天井の補強材は書くのが無難

いまいちすっきりしないが、標準解答例のプール室天井は、8割がた特定天井だとみなして間違いないと思う。そして自分は、びっしり吊り材・ブレースを書いて補強をアピールしても合格できた。

防火設備と比べて、特定天井の該当条件・除外項目は複雑だ。あえて補強材を書いたからといって、むやみに減点される可能性は低いと思う。断面図の密度が上がることは確かなので、今後の受験生は「迷ったら特定天井(斜材を書く)」方針で問題ないと思う。

2kg/㎡以下の軽量素材、計算・大臣認定ルートとかで逃げるなら、相当理論武装してから記述でも援護した方がいいと思う。あえてそれで加点になる気もしないので、普通の受験生なら多数派の特定天井を書いておくのが無難だろう。