北陸・中京地域限定の名古屋鶏味噌鍋膳を食べる前に、参考のため、普通の「牛すき鍋膳」も食べておこうと思った。この2日間で3回も吉野家に行っている。ある意味、狂牛病である。
遅めの朝食にはちょうどよいかと思って、東京で新幹線に乗る前に、駅の中にある吉野家に入ってみた。メニューを眺めて気づいたのだが、なんと牛すきもご当地限定も含め、鍋膳がない。
狭い駅ナカ店、お客さんも立ち食いソバ並みに回転が速いので、手間のかかる鍋膳は用意していないのだろうか。代わりに、吉野家の夏の定番「麦とろ牛皿御膳」がこんな真冬に出ていたので、めずらしく思って優待券2枚分でオーダーしてみた。
麦とろ牛皿御膳の「麦」は少ない
「麦とろ」といえば牛タン定食だが、数年前、初めて吉野家で麦とろ御膳を食べたのは出張先の仙台だった。本物の牛タン定食は1,000円以上もして高くて手が出ないので、吉野家で気分だけ味わうのもありかと思った。その後、全国に広がって定番メニューになったようだ。
あらためて麦とろ御膳を観察すると、麦とろというにはご飯の中の麦が少ない。いや、ご飯の表面にほんの少し麦がまぶしてあるだけだ。
とろろは味が付いているが、オクラには醤油をかけた方がよい。家でとろろを作るのは大変なので外食で食べられるのはうれしいが、これで580円のメニューというのは少々割高な気もしてきた。
普通の牛皿では満足できなくなってしまった
お皿に無造作に盛られた牛肉を見ると、なぜかわびしい気持ちがしてきた。最近、居酒屋ランチや松屋の豚テキ定食で、分厚いステーキを見慣れてしまったせいだろうか。牛丼の上に載っていると絵になる例のバラ肉が、単独で牛皿として登場するとたちまち貧相に見えてくる。箸で口に運ぶと、一応牛肉ではあるが、いまいち「肉を食べている」という実感が湧いてこない。
これは自分の舌が肥えてきた悪い兆候かもしれない。株主優待とはいえ、最近立て続けに豪華な鍋膳ばかり食べているので、普通の牛丼肉を受け付けない体になってしまったのだろうか。
おいしいものを食べてグルメになるのは歓迎だが、牛丼一杯で幸せを感じられないというのも、それはそれで不幸な気がする。やはり日頃は質素な食事で味覚を淡白にしておいて、ここぞというときの優待外食で幸せを噛みしめられるようにしたい。
吉野家ご当地鍋コンプリートを目指して
地味な麦とろ牛皿御膳を食べて、そんなジレンマに悩まされたが、ご当地鍋膳コンプリートまであと2つ。さすがに冬の発売期間中、四国・中国・九州まで足を延ばす機会はなさそうだが、もうひと頑張り、せめて関西圏の牛カレー鍋膳まで辿りつけないか。
はなまるうどんの天ぷら定期券でうどんを大量摂取してしまったばかりだが、吉野家ご当地鍋に踊らされている人も自分だけでなく、全国に結構いそうな気がする。
吉野家グループは「期間限定」「地域限定」というキャンペーンの打ち方がうまい。しかも企画倒れでなく、限定メニューがしっかりと個性を打ち出せているから、コンプリートするモチベーションも高まる。ご当地鍋の具材はほぼ同一なのに、肉とスープを変えるだけでバリエーションが増やしているのは見事だ。他の牛丼屋チェーンに比べて、吉野家に特別ファンが多いのもわかる気がする。