梅の花~株主優待でいただく豆腐・湯葉づくしの高級懐石ランチ

株主優待で行ける高い飲食店といえば、ふぐ料理の関門海、木曽路やうかいなどの和食レストランを思いつく。先日WDIの優待でウルフギャングステーキハウスに行ってみたが、ランチタイムでも軽く2,000円を超える高級店で優待券を使うのは、ミスマッチな気もするがひそかな楽しみでもある。

豆腐・湯葉料理の梅の花も、そんな優待銘柄の一つである。懐石料理のコースなら4,000円以上、ランチで一番安い梅コースで2,100円(税込)もする。

法事や結納・顔合わせレベルでしか行く機会がなさそうだが、逆に2千円で本格的な懐石を味わえると思えば安い方かもしれない。株主優待の使い勝手とコストパフォーマンスを調べるため、ユニクロの襟付きポロシャツで正装して梅の花に向かってみた。暑いので下は短パンのスーパークールビズだ。

休日ランチタイムは予約必至

最初は土曜に行ってみたのだが、11時台でも満席で入れなかった。翌日に予約を取ろうと思ったが日曜もすでに満員。お店の外からは座席が見えず、まったく様子を伺えないがそれなりに繁盛しているようだ。

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改めて平日に予約を入れて出直してみた。高齢者のお客さんが多いせいか、11時の早い時間より13時過ぎの方が空いているようだ。受け付けから長い廊下を案内され、中庭に面したホールへ。この無駄に長い動線というのも茶室に向かう露地と同じく、非日常空間へ誘う舞台装置のようである。

水の流れる中庭を眺めながらお食事

5席ほどテーブルが並んだ大部屋が2つあるが、ほかは個室ばかりだった。やはり使う目的からするとプライベートな個室の方が需要があるのだろう。店内にはモダンな日本画や器が飾ってあり、中庭には水の流れる苔むした池がある。

テーブルの上にも、樺細工の楊枝入れや漆塗りのティッシュケースなど凝った調度品が見られる。それに混じってドコモのdポイントとか「LINEはじめました」という販促品が置いてあるのは妙にファミレス風で違和感がある。

先客が6名ほどいたが、全員60歳以上のシニアである。意外なことに、自分と同様の一人客(しかも女性)が2名いた。平日の昼間から梅の花で一人懐石とは、優雅な趣味である。年金暮らしになって余裕があったら、自分も月に一度くらい梅の花に通える身分になりたいと思った。

梅ランチ<彩りランチ<季節限定ランチと徐々に価格がアップするが、それでも2,000~3,000円程度の話である。ディナータイムならさすがに5,000円以上するが、この雰囲気とおもてなしで、さらに料理もうまければ悪くないお値段だ。

安くても工夫満載の梅ランチ

予定通り最安の梅ランチを頼むと、最初に来たのは2色のゴマ豆腐。舌が敏感な一口目でいただくと、ゴマの甘みとわさびの辛さが心地よい刺激で、次の料理へ期待を膨らませる一品だった。

続いて、豆腐サラダと茶碗蒸し。柚子が香るドレッシングのサラダは、松の実か何か歯ごたえのあるナッツが入っていて、豆腐の柔らかさとのコントラストが素晴らしい。茶碗蒸しの中にはいくつか具が隠れており、銀杏とシイタケはありとして、小さなお餅も入っていた。いずれも小ぶりながら意外な発見がある料理だった。

本日の煮物はレンコンまんじゅう。といってもレンコンを丸ごと茹でたようながさつな料理ではなく、細切れにしてふわふわの豆腐で包み、甘いたれに湯葉を散らした凝ったものだった。全体的にサイズが小さく柔らかめではかない印象を受けるが、高齢者向けに食べやすく調理してあるのだろう。

生麩田楽と湯葉揚げは絶品

そしてメインの生麩田楽と湯葉揚げが届いた。薄切りのレモンを絞る装置は初めて見たが、手を汚さずに済むのでありがたい工夫だ。緊張して、レモンを生麩と湯葉のどちらにかけるのか聞き逃してしまったが、恐らく生麩の方でよかったのだろう。

2種類の麩に乗せられた味噌も白と赤で味が違い、どちらも一口で食べてしまうにはもったいないくらいおいしかった。レモンと味噌というのも妙な組み合わせだが、餃子やちゃんぽんに酢をかけるように、ほのかな酸味が口の中を爽やかにしてくれる。

湯葉揚げは非常に薄味で塩でも持ってきてもらおうかと考えたが、噛みしめるうちに幽玄な湯葉の旨味が染み出てきて驚いた。

贅沢な鰻セイロも付く

さてご飯ものは3種の中から鰻セイロを選んだのだが、香の物、湯葉のお吸い物と一緒にミニサイズの陶製セイロに入って出てきた。

2,000円の懐石で鰻というのも贅沢だが、身は一口サイズでも下の炊き込みご飯に鰻の香りがよく染み込んでいて満足できた。器がセイロなので下に網上の穴が開いており、ご飯粒が挟まって食べにくいのも、あえて時間をかけて料理を楽しませるための工夫かもしれない。

デザートはマンゴー味の杏仁豆腐。これも通常よりナタデココくらい固く煮詰められた杏仁豆腐になっていて、弾力性のある歯ごたえがなかなかよい。

コースの終わりに仲井さんが丁寧にお礼の口上を述べて、お会計の札を渡してくれる。ちなみにコースを頼めば200円で食後のコーヒーも追加できるようだ。

梅の花店内は非常にバリアフリー

梅の花のお料理は感動的だったが、もう一点感心したのは店内が完全にバリアフリーになっていることだった。駐車場から客席~トイレに至るまで、動線は長いが段差がほとんどない。しかも廊下やトイレのドアはすべて自動ドアになっていて、もちろん車椅子用のトイレも備え付けられている。

さらにトイレの洗面台に爪楊枝と綿棒、コップにマウスウォッシュが置いてある。きっとここで入れ歯の手入れをする人もいるのだろう。個人的にはぜひ糸ようじも置いてほしかった。

さらに細かい点では、客席の椅子の脚にキャスターがついていることに気づいた。着席する際に、椅子を持ち上げずに滑らすだけで移動できるのは便利である。オフィスチェアのキャスター機能に人一倍こだわる自分としては、とてもうれしい。

キャスターだけクロームメッキなのと、足先にキャップでかぶせてある加工は、ニーズに対応して後付けで改良したようにもうかがえる。以前シェアハウスの椅子を改造しようと思って似たようなパーツを探したが見つからなかったので、特注品だろう。

お土産でもらえるランチョンマット

レジ横で「ご自由にお持ちください」と置いてあった紙製のランチョンマットをいただいてきた。4枚組で特製梅の花ロゴ入りだが、巻き癖が強いので使う前に伸ばしておく必要がある。受け付けの待合スペースでは、旅館風に湯葉や鰻弁当のお土産も売っていた。

同じ高級ランチの価格帯でも、ウルフギャングのサービスは一人客だと殺気めいたものを感じるくらい緊張感があった。薄暗く広いホールで、外国人のお客さんが多かったからかもしれない。

一方、梅の花の懐石コースは、適当に放っておかれながらも絶妙なタイミングで次の料理が運ばれてくるのが居心地よかった。中庭の自然を見ながら食事できたので、格式高いわりにリラックスできたのだろう。

梅の花では食事券以外に20%オフの株主優待カードももらえるので、高いコースを頼めばかなりの割引を期待できる。いずれ牛丼やファミレスの安い優待に飽きて銘柄を厳選するとしたら、梅の花はぜひラインナップに加えたいと思った。