マリンタワーや徳川園など、観光・文化施設との提携が得意なゼットン。その株主優待は意外な場所で使えることがある。今回訪れたのは東京日本橋にある三井記念美術館。その中のミュージアムカフェで優待券を使ってランチをいただいた。
リニューアルした三井の美術館
三井記念美術館は2005年、日本橋地区の再開発で室町の三井本館、重要文化財建造物に移転した。関西に住んでいたことがあるので、日本橋といえば大阪の電気屋街のイメージだが、東京駅の北東あたりにそういうエリアがある。最寄りの地下鉄駅が「三越前」というとおり、三井財閥のおひざ元である。
デパートの並びに古風な銀行の建物があり、その7階が美術館になっている。建物を入って左側から、直通エレベーターで上層階に行ける。エントランスは巨大な吹き抜けで仰々しい感じだ。同じ企業系の美術館でも、丸の内の出光美術館などより豪勢な演出である。
2月の展示は「三井家のおひなさま」。特別展で1,300円も取られるわりにはいまいち興味がわかないのでスルーした。次回の「大名茶人 松平不昧」の方が渋くておもしろそうだ。
エレベーターの装飾は必見
エレベーターの扉に古風な彫刻が施されていたり、その上の階数表示板がレトログラードなところは必見。内部も凝ったインテリアになっている。美術館へのアプローチは、まるで銀行の上得意客がプライベートルームに案内されるようなVIPなムード満載である。
エレベーターを降りると、さっそく鹿の彫刻がお出迎えしてくれる。地図をよく観察すると、出て右側に展示室が並んでいるが、左から回り込めばダイレクトにミュージアムショップやカフェに行けるようだ。事前調査では入館料を払わなくてもカフェだけ利用は可能との情報だったので、それは間違いなかった。
しかしカフェだけ利用でわざわざ三井本館の7階まで来る人はレアだろう。狙って訪れるとすれば、穴場中の穴場であることは間違いなしだ。しかし美術館併設のカフェだから、休日はシニアでごった返していると思う。優待券が使えるとはいえ、いまいち使い所に悩むレストランである。
米国製の重厚な書庫扉
事務室のように殺風景な廊下を通ってカフェに行く途中、巨大な金属製の扉が展示されている。米国モスラー社製の旧書庫扉で、金庫というわけではなかったらしい。こんな重厚な設備でガードする書庫とは、どんな希少本を所蔵していたのだろう。
パズルみたいに何本もハンドルをつける必要があるのか不明だが、自転車の鍵を二重につけると防犯性が上がるように、「面倒くさそう」と感じさせればいいのだろう。偽の監視カメラをつけるように、機構のいくつかはダミーかもしれない。
奥ゆかしい鴨そばといなり寿司
ミュージアムカフェのメニューは和食と甘味が中心。ランチとしては1,100円の鴨そばが標準的な位置づけ。ついでにプラス200円のセットでコーヒーもお願いしてみた。
蕎麦だけではお腹が空くかもと思ったが、いなりずしが2個もついてきた。ゆっくり噛んで食べると味が染み出てきておいしい。鴨そばも肉の旨味とネギの香ばしさが合わさって奥ゆかしい。ちょこんと乗っている柚子かミカンの皮も、食べると苦いが絶妙なアクセントになっている。さすが千円超の高級蕎麦。立ち食いのそれとは次元が違う。
茶器のしつらえが上品
一味唐辛子のケースも超小型の金属缶になっていて、工芸的な雰囲気をただよわせている。さすが美術館併設のミュージアムカフェとあって、食器や備品のチョイスは抜かりないようだ。
お冷を入れるグラスも、明らかに量産品とは違う作品性を感じさせる。追加で届いたコーヒーやお茶の器も、それぞれこだわりがありそうだ。店内にもいたるところ彫刻や書画の作品が展示されていて、入館料は払わずともちょっとだけ芸術鑑賞できた気分がする。
立地と値段的にはすごくおすすめというわけでもないが、ゼットン優待を持て余していて変わったお店を試したい人はどうぞ。三井記念美術館の方は見なかったが、エントランスの雰囲気から察するに展示のクオリティーは高そうだ。