吉野家のライザップ牛サラダ。糖質不足でおやつに手が出てしまう…

しばらく手放していた吉野家株を昨年買い戻した。運用成績はいまいちだが、久々に優待券が届いたのでランチに行ってみた。

今回選んだのは新商品のライザップ牛サラダ。ジャンクな牛丼チェーンなのに「高たんぱく質、低糖質」をうたった意欲的な企画メニューだ。丼ぶり一杯で500円という価格設定も強気に見える。果たして吉野家が打ち出すライザップ公認メニューの実力はいかがなものか。

すき家の牛丼ライトがライバル

注文する際に気づいたが、これは牛丼ではなく「サラダ」だ。よく見ると肉と野菜の下にはご飯がない。糖質カットのためメシ抜きなのは当たり前。公称カロリーは430kcalで、牛丼並盛652kcalから35%近く削減されている。

牛丼からライスを省いたコンセプトは、すき家の牛丼ライトを彷彿させる。あちらはご飯の代わりに豆腐が使われているアイデア商品で、一発ネタかと思ったが定番メニューになっている。

牛丼ライトは豆腐から出た水気で肉汁が薄まってしまい、お世辞にもうまいとはいえない。並盛で425kcalとうたっているので、ライザップ牛サラダもこのレンジに合わせてきた感がある。

ライザップ丼を店頭で注文する際「ご飯がないけど大丈夫?」と念を押して聞かれる。確かに競合の「牛丼ライト」はミニサイズの牛丼とまぎらわしい。食べてみてから「ご飯が入ってない」と文句をいうお客さんも出てきそうだ。

無用な誤解とクレームを避けるためか、ライザップ版は賢明にも「サラダ」と名付けられている。サラダ一杯でランチが終わってしまうのは寂しい気もするが、これにライスやサイドメニューを追加すると本末転倒になってしまう。

ベジ牛並みの高価格サラダ

「吉牛とコミットする。」というキャッチコピーのとおり、開発エピソードには並々ならない意欲を感じる。野菜自体は一日の必要量1/3を摂れるらしいので、ほかのメニューよりヘルシーであることは間違いない。

大量に盛られたブロッコリーの緑に半熟卵の白や黄色が映え、写真の彩りは抜群だ。「糖質コントロール」というコンセプトはともかく、普通においしそうなメニューに見える。

税込540円というのは、牛丼・豚丼なら大盛りを選べる金額。決して安くはないが、これだけ野菜を摂れるならリーズナブルに思われる。健康志向のベジ牛定食(税込600円)よりも少し安い。

300円の優待券を効率よく使うため、サイドメニューから100円のキムチを追加した。チケット2枚600円分のレンジを狙うなら、玉子を追加してさらにたんぱく質を増強する手もある。

牛肉より鶏肉が魅力

ライザップ牛サラダの魅力としては、どうやら鶏もも肉が肝ではないかと思われる。

いつもの牛肉に加えて同じくらいの量、鶏肉が入っているのが特徴。これに半熟玉子もデフォルトでトッピングされているから、「たんぱく質30g」という栄養価推定値は、ほぼ間違いないだろう。

海南チキンライスのようなプリプリの鶏肉を、吉野家で食べられるのはめずらしい。たまに鶏すき丼を見かけたら喜んでオーダーするのだが、薄っぺらい牛肉よりボリュームのある鶏肉の方にありがたみを感じる。

ライザップ丼には一応サラダらしくドレッシングも付いてくる。牛肉に下味はついているので、タレは省くか適当に塩でも振った方がよりヘルシーだろう。そしてキャベツの下に隠れている豆も見逃せない。

鶏サラダでもよかった

ここまで来ると、ライザップ牛サラダにもはや牛肉は不要でないかと思われてくる。そこは吉野家の意地というか、牛丼チェーンのアイデンティティーを保つために外せなかった食材なのだろう。

たいしてうまいとも感じないペラペラ牛肉を省いて、その代り鶏肉やミックスビーンズを増量したら、栄養価のスコアはさらに高まったと思う。開発コンセプトを突き詰めれば、「ライザップ鶏サラダ」や「ライザップ豆サラダ」でもよかったはずだ。たとえ牛肉は含まれなくても、自分なら喜んで注文しただろう。

糖質制限は万人向けでない

430キロカロリーというのは、成人男性のランチとして十分とは言い難い。サラダ自体のかさは大きいのだが、食後に何となく物足りなく感じてしまう。結局、帰りがけにおやつのお菓子を買ってしまったので、安易な糖質制限はかえってあだになりそうだ。

最近は糖質よりタンパク質が称賛される傾向があるが、それも一過性のブームにすぎないと思う。かつてはアスリート向けの食事として、炭水化物の大量摂取が推奨されていた時代もある。

ライザップのすすめる「糖質コントロール」というのも一種のダイエット商法で、万人向けの健康食とは限らない。生半可に取り入れると無理な断食と同じく、かえってリバウンドで苦しむ羽目になる。

ご飯がなければ食べた気がしない

結局のところ「偏食リスクが少ない」という意味では、厚生労働省の食事バランスガイドにあるような主食・副菜・主菜etc.という組み合わせが無難に思われる。また、お肉控えめの和食スタイルというのも日本人の体質に合っているのかもしれない。

粗食のすすめ』を読んでから玄米食を8年くらい続けているが、健康診断のスコアはほぼ正常値を維持できている。この本の主張からすると、ご飯抜きのライザップ牛サラダはとてもおすすめできる代物ではない。

人の食生活や健康法にはイデオロギーや信仰という側面もあるので、どれが正しいということはできない。ライザップ牛サラダは確かにおいしかったが、やはりご飯を食べなければ食事した気がしない。そして代わりにおやつで糖質摂取してしまうというのが、自分のはまった罠だった。

企画としてはおもしろいので、ライザップにはぜひファミレスにもコミットしてほしい。昨年、三社合同定期券でコラボしたガストなんかと組んだらおもしろそうだ。糖質制限ピザやドリアという、一見不可能なメニューがどうなるのか見てみたい。