株主優待が使える渋いうどん屋、杵屋の関西風あっさりうどんに感激

グルメ杵屋の系列店は豊富で、うどん屋は7店、そば屋は8店もある。東京都内に出店してないお店もあり全制覇するのは難しいが、せめて本体の杵屋には行ってみようと思っていた。

社歴を調べると、杵屋は昭和46年に奈良市で発祥したようだ。そのためか、うどんの汁は関西風の白だしあっさり味。最近は讃岐うどんのチェーン店が増えたので、東京にいても関東風の黒くて濃いスープはあまり見かけなくなった。関西の人が武蔵野うどんの太い麺や、肉汁うどんの濃いつけ汁を見たら、結構驚くのではなかろうか。

杵屋の店内と客層が渋すぎる

そじ坊と同様に、杵屋もイオンやイトーヨーカドーのレストラン街にひっそりたたずんでいる。「実演手打ちうどん」と掲げているだけあってガラス張りの展示コーナーがあるが、人通りの少ないフロアで何となく寂しい感じがする。

正午より早い時間なので、お客さんも少ないだろうと思ったら高齢者が数名うどんをすすっていた。とりわけ身なりのいいおばあさんが、食後にデザートのあんみつを一人で食べているのは何とも上品に見えた。いつか蕎麦屋で粋に酒を飲めるじじいになりたいと思っていたが、甘味で締めるスイーツ老人というのもありだろう。

店員さんもシニアだが要領よくテキパキ注文をさばいていて、店内の平均年齢は60歳以上だが静かに活気がある感じがした。ファミレスとは違う、老舗の料亭やホテルのレストランに近い雰囲気で、何となく背筋が伸びる気がした。

あっさり味のきつねうどん

場所柄お値段は少し高めで、そじ坊と同じくらい。かけうどんでは少し寂しいかと思って、584円のきつねうどんを選んだ。メニューには書かれていないが、無料で1.5玉に増量できるらしく、せっかくなのでお願いしてみた。

低価格の立ち食い蕎麦や讃岐うどんチェーンと違って、ちょっとしたサプライズのサービスがあるのが杵屋グループの特徴といえる。

メニュー表にカロリーや塩分が細かく記載されていて、きつね揚げだけで352kcalもあることがわかった。あっさりしてそうだが、天ぷらやとんかつより高カロリーというのは驚きだ。

ちなみに杵屋で定食を頼むと、おかずでなく「いなり寿司」か「かやく御飯」がついてくる。中華料理屋でラーメンとチャーハンのセットを頼む感覚だろうか。ステーキハウスのようにライスはオプションで、うどんがメインディッシュの位置づけだ。

きつね揚げは厚みも幅もなかなか豪快で食べごたえがあった。麺は讃岐うどんに比べるとやや細く、透き通ったスープは非常にあっさりしている。ネギとナルトの盛り付けも端正で、由緒正しいうどんという印象を受ける。

麺は固ゆでコシを味わうというより、口の中ではかなく溶けるふわふわした麺の食感を楽しむ感じだ。京都に住んでいたことはあるが、どちらかというと関東~東北の人間なので、こういう純粋な関西風うどんは新鮮だ。

地味に人気がある関西風うどんチェーン

12時を過ぎるとぼちぼち若いお客さんも増えてきた。一人でうどんを食べようと思ったら家でつくる方が安上がりだが、グループで食事する際にあたりさわりない料理というと、そばやうどんに落ち着くのかもしれない。

昨年、はなまるうどんの天ぷら定期券でうどん漬けの1ヶ月を送ったので、しばらくうどんは敬遠していて春の定期券もスキップした。杵屋のあっさりうどんはちょうどよいリハビリになったといえる。

讃岐うどんがブームになる前からスーパーの一角にひっそりあって、今後もシニアに愛されて続いていくだろうと思われる杵屋。とりわけ料理にインパクトがあるわけでもなく、テレビに出たり観光名所になったりすることもないが、落ち着いた雰囲気でうどんを食べられる貴重なお店だ。