無店くら寿司は有名だが、優待利回りが低くいまいち食指が動かなかった「くらコーポレーション」株。さいわい優待券が手に入ったので、スシロー上場にそなえて回転寿司業界を調べるべく、くら寿司のランチに行ってみた。
無添加、ICタグ、ゲームと工夫が満載のくら寿司
くら寿司はかっぱ寿司と同様、魚屋路のようなランチメニューは特に用意されていない。基本1皿税込108円の格安回転寿司で、ロボットが製造している。くら寿司ウェブサイトでは寿司ロボットについて「衛生的で均一なシャリができる」とポジティブに説明されている。ぜひ店舗でロボットの製造過程も見学できるようにしてほしいものだ。
店名に「無添」とうたっており、全食材で化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人口保存料は使っていないらしい。寿司以外のデザートなども格安なので、にわかに信じがたい事実だ。
ほかにも回転寿司に衛生的なカバーがかかっていたり、ICタグで皿の鮮度を管理したり、テーブルに皿の投入口があってゲームができたり…いろいろ新しい取り組みをしているのが人気の秘密かもしれない。ガチャ玉は特に子供に受けそうだし、パネルで注文した料理の待ち時間が表示されるのも他にはない仕組みだ。
シャリカレーにシャリコーラ、謎のサイドメニュー群
お店の前ののぼりでPRされているのは、寿司ネタではなく海賊シャリカレー。「回転寿司でカレー?」と疑問に思ったが、中に入ってみるとカレー以外にもおよそ寿司屋らしからぬサイドメニューが並んでいた。
普通の握りや軍艦はメニュー全体の半分くらいしかない。ほかは、天ぷらや唐揚げのおかず類、パフェやケーキのデザート類にとどまらず、牛丼・天丼・うな丼、うどんにラーメンと、およそサイドとはいえない主食級のメニューがそろっている。もはやくら寿司は回転寿司を超えた新業態を目指しているかのようだ。あらゆるファーストフードが回転する店…そのうちハンバーガーやケバブも回り始めるに違いない。
トルティーヤはすでにあった。シャリカレーにシャリカレーうどん、甘酒風味のシャリコーラまである。これには開発秘話があって、普通のコーラだと添加物満載になってしまうので独自開発した自然飲料だそうだ。
企画メニューに比べて寿司は地味
とりあえず108円のサーモンを頼んだら、まあ値段相応に普通な感じだった。他店で打ち出し中の寒ブリはもう終わってしまったのか、握りのメニューに季節感は感じられなかった。
軍艦からは「うに入り海鮮軍艦」をチョイス。謎の具材が乗っていたが、ししゃもの卵とイカをベースに色付け程度にウニを加えたもののようだ。まあまあうまいが、結構しょっぱいので醤油は要らない。
醤油の皿の返却口も徹底的に合理化が図られている
くら寿司には醤油用の皿がなく、ポンプ式で直にネタに垂らすようになっている。これはこれで食べやすく、醤油もはねず合理的と思うが、何となく寿司を食べる行為がチープに感じられてしまう。
テーブルの前の皿ポケットも、食べ終わった皿を積み上げるのが邪魔というのはわかるが、なにかゴミ箱を見ながら食事をしているようでげんなりする。きっと1日に1回くらいはスマホや財布を誤って落としてしまう人もいることだろう。
しかし、ウェブサイトによると積んだ皿が「女性には心苦しい」と書いてあって、なるほどと思った。確かに狭いカウンター席には不思議と女性客の方が多かったので、意外と重要なポイントなのかもしない。
注文するタブレットは、かっぱ寿司のように取り外し式になっていなくて、やや腕が疲れる。回転レーンは2段になっていて注文した皿は上部の高速レーンで届く。高速レーンは便利なのでたいていタブレットから直接注文する方が多いが、そうなると下の回転レーンから取る人が減りそうだ。もはや下側は宣伝レーンと割り切っているのか、寿司ネタよりもデザートメニューや「アレルゲンフリー」「化学調味料不使用」とか、売り文句を書いた札が多く回っている。
150円のシャリカレーパンはおすすめ
せっかくなので、シャリカレーとまでは行かないが150円のシャリカレーパンを注文してみた。わりと固めの揚げパンに、なんとご飯とカレーを混ぜた具が挟んである。名前に「シャリ」と入っているのは伊達ではない。ご飯もパンもカレー味で同時に食べられる、くら寿司の発明に脱帽だ。かなり油っぽくでこれだけでお腹が膨れ、150円以上の価値はある。
続いてデザートも試してみようとチーズケーキをオーダー。単に皿に乗せるだけだと思うのだが、待ち時間表示通りきっかり2分かかって出てきた。濃厚なチーズ臭がする本物っぽいチーズケーキで、100円とは思えない完成度だった。
あくまで寿司をメインで考えると、同じ価格帯でもくら寿司よりかっぱ寿司の方がおいしいと感じた。しかし、牛丼屋とうどん屋とカレー屋にカフェまで兼ねたお店でリーズナブルに食事できるとしたら、これはこれで魅力的な新業態だと思う。なにか独自の進化を遂げた海外の寿司屋を訪問したようで、毎回驚きがあるくら寿司。味よりもおもしろさ、ぜひこのまま新境地を開拓し続けてほしい。