5秒で解ける一級建築士製図の練習問題~この居室に足りないものは?

一級建築士の学科試験については、一問一答で隙間時間に学習できるコンテンツが充実している。

TACブログの比較暗記法が典型的で、無料で公開されているのが不思議なくらいの充実ぶりだ。市販のテキストで予習してから取り組めば、このサイトだけで過去問を数年分、解いたくらいの学習効果が得られると思う。

製図試験の方も、労働集約的なエスキース添削だけでなく、簡単な「プランニング常識度チェック」のような練習問題をつくれないだろうか。素人考えで、ちょっとした小テストを考えてみた。タネがわかっている人なら5秒で解けるはずだ。

問題

以下の平面図において、居室Aの抱える問題点と、できるだけ簡単に改善する方法を答えよ。

問題

(特記事項)

  • ここは3階かつ最上階とする
  • 居室右側の吹抜けについて「1階から3階まで」という指定はない
  • 試験終了30秒前に気づいたとして、最短の作図時間で解決する方法を考えよ

ヒント

試験でランク1・2争いに残れる受験生なら、設問の意図にすぐ気づくと思う。動線やゾーニングほどクリティカルな話ではなく、採点時にちょっとした印象アップを目指すテクニックだ。

スクールの指導方針によっては、マイナーすぎてむしろ採点に関係ないと思われる部分かもしれない。放置してもあえて減点になるおそれはなく、対策してもどのくらい加点されるかは不明だ。

一部、法規に絡む部分も出てくるが、防火区画や避難距離のように明確にNGといえる個所でもない。ほかに優先すべき要素があるなら後回しでも構わないが、採点時は良否を判断しやすい項目でもある。そのため、人によっては「直した方がよい」と強く指摘されることもある。

解答

答えは「窓がない」

居室Aは現時点で厳密には「無窓」といえる状況だ。広々とした吹抜けに2面も接し、それらには自然採光を導くトップライトまで計画されている。三國無双ともいえる恵まれた状況であるにも関わらず、法律上はこの部屋に窓がないと判断される。

これが倉庫や便所なら問題にならないが、一応「居室」という扱いなので窓はあった方がいい。今年のスポーツ施設課題でいえば、健康相談室やインストラクター控室をイメージしてもらいたい。

予備校の答案例によっては、健康相談室は建物中央に無窓で設けているケースがいくつか見受けられた。職員用の控室も、単なる更衣スペースとしての扱いなら開口部の優先度は低いだろう。ほかにもっと大事な居室があるなら、これらは無窓でも構わないと妥協することはできる。

しかし、こういう細かい配慮こそが植栽・タイルの書き込みと同様に、ランク1・2を分ける採点基準になるのではないかと思う。プランニングが楽だった今年のような課題には、特に当てはまりそうだ。

究極奥義「無窓転生」

さて、大事な居室に窓がなくて息苦しいとわかったとする。空気もよどんで、健康相談しながら不健康になりそうだ。試験終了まで残り時間は30秒。試験官も壇上で時計を見ながら終了合図の準備を始めている…

もし時間に余裕があれば、同じゾーンで動線を乱さずに、外向きの部屋と場所を入れ替える方向で探ってもよい。たとえば左の便所が建物外部に面しているなら、単純に位置を入れ替えるのが上策だ。

しかし、1/200図面が仕上がってから大幅なリノベーションを施すのは、面積や避難距離など他に影響が出るおそれがある。居室Aの面積が条件から逸脱したり、トイレに連動してPSの配置まで再検討する必要が出るかもしれない。

そもそも時間がないという前提で、30秒で無窓を解決できる方法はただ一つ、居室Aにトップライトを設けることだ。たとえ天井でも、直接外気に面した開口部さえ設けられていれば、無窓のそしりはのがれられる。

解答例1

一説には、3年間の修行を経て角番に達した受験生のみが体得できる、製図神拳の究極奥義が存在するという。哀しみを背負った受験生がラスト30秒で発動できる逆転技、「無窓転生」と呼ばれるテクニックだ。

パンテオン

地下機械室のような薄暗い居室に、天窓から光が差し込む様子はパンテオンのように感動的だろう。普段はプールや多目的スポーツ室のような大部屋にしか現れないトップライト。こんな小部屋にあえて表現した苦悩を、採点官はきっと見逃さない。

さらなる発展技、ライトコート

無窓居室を解消する奥義には、さらに上級テクニックがある。「最上階で吹抜けに接し、さらにそれが3層指定でない」という特殊なケースでのみ発揮できる高級技術だ。試験終了まで残り3分、注釈の書き込みも見直しもすべて終わって、ほかにすべきことがないとしたら、試してみる価値はある。

吹抜けをライトコート化して屋外空間にする

解答例2

居室に直接トップライトを設ける無理やりっぽい方法に比べて、吹抜けに接するすべての空間にありったけの採光と通風をデリバリーする、大逆転の必殺技だ。できれば下階のパッシブ性能を損なわないため、光庭にもトップライトを設けて一部を透過させるのが望ましい。

3階プランで吹抜けバッテンだったスペースに、中庭的なタイル目地を細かく書けるので作図密度も上げられる。もし吹抜けが断面図の切断面に含まれていたら、そちらの修正がやっかいだ。3階平面図の修正だけで済むなら、3分で実現可能。

竪穴区画も省略できるメリットあり

さらには吹抜けを2階で閉じることにより、1階の「避難階から直上階のみに通ずる」という解釈ができる。建築基準法施工令112条第9項のただし書き1号、竪穴区画の緩和規定により、内装の下地・仕上げとも不燃材料であれば、竪穴区画を省略できるというボーナス付きだ。

エスキースの早い段階でライトコートを採用できれば、2階の吹抜けに接する面積区画はともかく、1階シャッター類の面倒な作図をスキップできる。内装材料について記述でフォローできれば完璧だが、有名な緩和事項なので採点官も図面から読み取ってくれるだろう。

ライトコートのアイデアを目撃したのは、今年の答案例でいうとTACの課題8とミライさんの1階プール案のみ。使える場面が限られているので、どんな課題にも適用できるわけではない。むしろ吹抜けまるごと1階から中庭化することが可能なら、そちらの方がパッシブデザインにはより有利と考えられる。

高度なテクニックなので万人におすすめできる技ではない。製図を究めると「こういうやり方もできるのだ」くらいに覚えておけばよいだろう。追加提案が歓迎される採点傾向からすると、取って付けたような苦し紛れのトップライトよりも、空間が豊かになって印象がよさそうに思う。