一級建築士の予備校料金比較。総合資格や日建学院はなぜ高いのか?

一級建築士の予備校として有名な大手三社、総合資格学院・日建学院・TAC。スクール選びの参考に、各校のサービス内容や料金を比較してみようと思う。

総合資格の一強時代

試験元の公式サイトに合格者の年齢や出身校は公表されているが、さすがに通った予備校までは出ていない。受講者のシェアは正確にわからないが、各社の宣伝を見比べると総合資格が一番人気のように見える。

平成29年は「学科と製図、全国ストレート合格者の70.7%が総合資格受講生」とのことで、おそろしい寡占状況だ。県ごとの細かい統計まで出しているのでチェックしてみると、山梨県や佐賀県はストレート合格2~4名中100%という独占状態。

製図試験だけでみると、100%は平成29年合格者1人の秋田県だけ。バラツキはあるが、平均的には「製図の合格者占有率63.7%」と、依然として高シェアを占めている。そもそも秋田には総合資格しかないとか裏話もありそうだが、広告に具体的な数字を出してくるあたり、よほど自信があるのだろう。

もらったパンフの広告を見ていると、売り文句が過激でなかなかおもしろい。

「No.1指導校」「総合資格学院、一択」

総合資格出身でなければ建築士にあらずという勢いだ。確かにここなら頼もしそうという印象を受ける。受講料が最高額と知るまでは…

日建学院の喧伝する合格率は寒々しい

建築士の受験といえば、昔は日建学院しかまともな予備校がなかったらしい。自分のまわりで資格を取った人も、全員日建のお世話になっている。あまりにメジャーな印象とその名前から、長いこと日建設計のグループ会社だと勘違いしていた(実際は全然関係ない別会社)。

日建学院は2018年の学科試験に関して「基準達成合格率86.5%」という、妙に高い数値を報告している。よく読むとこれは、「出席率・宿題提出率が高く、模擬試験の点数も良かった優等生」の合格率らしい。それなら高いのは当然で、母集団も290名しかいないので、あまり参考にならない。

1983~2017年の長期にわたる一級建築士の合格者シェアは、日建が57.6%で「合格実績No.1」とのことだ。長年の実績からすると日建学院が上だが、直近の実績は総合資格の方が上回っているという状況。

去年の製図試験、リゾートホテルの課題は特に日建・TACが予想を外して残念な結果だったらしい。どちらも製図の合格率を公表していないが、総合資格だけ高い合格者占有率を誇示している状況から察すると、一人勝ち状態だったのだろう。

総合資格がうたっている「合格者数日本一」というのがまったくデタラメであれば、景品表示法や不正競争防止法を根拠に他社からクレームがつくはずだ。そのまま放置されているということは、集計方法やパラメータの調整はさておき、まったくの嘘ではなさそうに見える。

受講料も総合資格がNo.1

去年から受験業界を観察していて変わらないのは、大手3校の受講料。料金的には総合資格>日建学院>>TACという感じで、上位2校が飛びぬけて高い。

総合資格にいたっては、「1級建築士パーフェクト総合セット(アウトプット強化講座付)」1,490,000円(税抜)という桁違いの最高級パッケージまで用意している。試験に何年も取り組んで、数百万単位で投資したという話も聞くから、申し込む人は存在するのだろう。

パーフェクトコースの内容を見ると、「1級建築士試験初受験一発合格をめざし、2年間でじっくり確実に実力を養成する」という長期講座になっている。線表を見ると、1年目の学科は未受験(受けても落ちる前提?)でまったりと学習していくようだ。もしかすると、まだ受験資格のないうちから、スクールに通って勉強したい人向けのサービスなのかもしれない。

ほかにも総合資格では、2級・1級ダブル取得とか、新卒内定者特別コースとか、よくわからない100万越えの講座がいくつもラインナップされている。学生限定なのに135万もポンと払えるのはどんな人なのだろう?

内定決定したあとに、会社が受講料をサポートしてくれたりするのだろうか。学生時代にそれだけお金があれば、留年するか大学院にでも進んで1年遊んで暮らしたいと思う。

それに比べると日建はちょっと安い

日建学院のコース一覧を見ると、「学科スーパー本科コース」74万(税抜)と「設計製図パーフェクトコース」60万(税抜)を合わせた134万というのが最高級に見える。学科のスーパーで合格したら、製図本科を20万の追加料金で受講できる優遇があるので、合計94万(税抜)がフルコースの標準料金だろう。

スーパー本科と製図パーフェクトの組み合わせが可能なのか、セットで割引があるのかどうかはわからない。いずれにしても、全部乗せ100万前後という料金設定に見えるので、総合資格に比べると日建の方がややリーズナブルだ。

TACは総合資格の半額以下

上位2校の価格表を比べた後だと、TACの講座は半額以下に見える。総合学科本科生で36万。ウェブに掲載されている価格が、牛丼屋のメニューのようにすべて税込なので、わかりやすくてありがたい。

TACの設計製図本科生は通学教室講座なら22万。ストレート合格狙いで学科と製図の最上級コースを組み合わせても68万。セット申し込みでさらに2万の割引を受けられるようなので、税込66万。TACは総合資格に比べれば半額、日建学院に比べても2/3程度の出費で済む

価格設定の心理テクニック

よくある値づけのトリックで、「異様な高額商品を用意しておくと、そこそこ高めのメニューがリーズナブルに感じられる」という現象がある。吉野家で1,000円の鰻重があると、590円の牛カルビ丼が相対的に安く見えて、うっかり130円の生野菜みそ汁セットまでつけてしまうというお決まりのパターンだ。

総合資格については、新車が買えるほどの高価格講座で心理的にアンカリングしておいて、それより安くて無難に見える72万の「1級建築士学科対策講座」に誘導する作戦なのだろう。

日建学院の製図でも、2月開始の長期コースより8月からの本科コースの方が人気は高そうだ。長期の60万に比べると、通常コースの45万がずいぶんお得に見えてくる。

総合と日建に比べるとTACの料金が安すぎて、何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。試験直前になると営業の人からしつこく電話がかかってきて、別料金の直前対策講座みたいなものを売りつけられるとか…

営業担当者は「歩くコスト」

今のところそういった被害は聞かないので、単純にTACは営業関連のコストを抑えて値段を下げているようだ。製図試験当日の会場にもTACの人はいなかった。

その反対に、会場で総合資格・日建学院のパンフ・ティッシュ類は2~3部重複して受け取った。こうした印刷物、駅前の便利な教室、大画面のモニターなど、すべての販促ツールや設備に受講生の上納金が反映されている。

各社の料金・サービス内容を比べると、スクールの営業さんは「歩くコスト」にしか見えなくい。言い方はひどいが、彼らとコミュニケーションしたところで、合格になんら寄与するわけでもない。

せいぜい模試に参加した程度なのに、合格発表の日には不合格でも来年の勧誘電話をかけてくる。泣き面に蜂というか余計なお世話もいいところだが、向こうも仕事だから仕方ない。試験に落ちて毎年受講してくれるお客さんの方が、学校側としてありがたいのは言うまでもない。

それでも大手校に通う意味

営業の人が勉強中つらくても励ましてくれるとか、試験に落ちてもすごく勇気づけてくれたりするのだろうか。ライザップのパーソナルトレーナーみたいな感じで。大金払ったから元を取りたいとか、目をかけてくれた講師にいいところを見せたいとか、そういう間接的な効果は期待できる。

もしかすると中には、「どんな受験生でもその気にさせて、合格させまくるカリスマセールスマン」とかいるのかもしれない。コネを駆使して試験問題をリークしてくれるなら、お布施を払っても惜しくはない。

大手校の受講料が高くても、お金を払う人がいて続いているのも事実。各社の営業スタイルについて、とやかくいう筋合いはない。中には会社が受験費用をサポートしてくれる、恵まれた人もいるのだろう。自分の財布から支払うのでなければ、中身はともかく高級なサービスを選んだ方が得した感じは得られる。