一級建築士の学科に3か月で独学合格できた市販テキスト&ウェブ教材

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今はネットでいろんな情報が手に入る時代。一級建築士の学科試験も、昔より独学で勉強しやすくなっている。

参考までに昨年、自分が独学で学科に受かった勉強法を紹介してみようと思う。対策は万全でなく足切りすれすれだったので、「こんな感じでもぎりぎり受かった」という程度の体験談だ。まずは利用した教材の紹介から。

法令集はTAC

内容的には総合資格や赤や黄色の本でも変わらない。個人的にコンパクトで厚みがあるものより、多少机の上で場所を取っても薄型の方がよかったので、TACを選んだ。

TAC法令集の特徴として、

  • 上巻:建築基準法と施行令・規則、建築士法・建築業法・宅建業法
  • 下巻:消防法、バリアフリー法、都市計画法など関連法案

の2冊を分離して持ち運べるのが地味に便利だ。他社の分厚い法令集よりも、カフェや図書館に持って行って広げやすい。試験本番でも基本的に問われる内容はピンポイントなので、上下巻を相互に参照することは少ない。

インデックスの貼り方やマーキング個所がウェブで無料公開されているのも、建築士の受験業界においては画期的なサービスだと思う。出版元にハガキを送って別資料を請求し、かかってくる営業の電話に対応する必要もない。

法令集のマーキング方法については、こちらの記事にまとめた。

建築知識の『スピード学習帳』

予備校の市販テキストはスクールの受講を促すためか、ほんの一部の要点しか記載されていない。独学でも問題集や過去問は容易に手に入るが、十分な密度の教科書を手に入れにくいのが課題といえる。

一般に流通しているテキストの中で、いちばん内容が充実しているのがエクスナレッジから出ている『スピード学習帳』。建築資格試験研究会『スタンダード』シリーズよりA4サイズで読みやすく、解説部分のボリュームも多い。

3か月という短い準備期間の中で、一番お世話になった本だ。『スピード学習帳』の内容をすべて覚えることができれば、合格は固いだろう。問題部分に出典情報はないが、実は過去問からピックアップされた頻出選択肢で構成されている。

厚みはそこそこあるので、TACの法令集を見習い、科目ごとにカッターで切り分けて背面をガムテープで補強した。一時に勉強するのは一科目なので、見た目はいまいちだが持ち運びには便利だ。

科目ごとに裁断した一級建築士のテキスト

『スピード学習帳』を何度も解き直していたら、ほかの過去問集にあたる時間がなくなってしまった。ボーダーすれすれだが結果的には受かったので、それでも問題なかったといえる。

『スピード学習帳』を何度も解き直す

過去問を解くのは大事だが、勉強序盤から知識がないのに解きはじめるのは効率が悪い。「こんな問題が出るんだ」くらいの気持ちで、パラパラ眺めるだけでいいと思う。自分は過去の受験で問われる内容を大まかに把握できていた。時間はないが、テキストで基礎を固めてから問題を解く方が、遠回りでも近道に思われた。

『スピード学習帳』では、見開き2~4ページくらいの分量にテーマごとの要点が記載され、コラム的なエピソードも含まれている。最初は「こんなに細かい情報がいるのか?」と思った。しかし、注釈表の中に記載されたネジ寸法や養生日数の数値も、実は過去に出題された頻出項目であると知った。

学科試験は、重箱の隅を突くようないやらしい問題がよく出る。学習帳のテキストと問題を照らし合わせて読み込むほど、「よく練られた構成だ」と感心した。初受験で右も左もわからない状態なら、とにかく『スピード学習帳』を信じて丸暗記すればいいと思う

1科目ごとに集中して、ノートにまとめながら毎日数単位ずつこなすスケジュール。1か月も前にやった部分はたいてい忘れてしまうので、もう一周してすべての問題を二度解いた。2回とも間違えた問題には印をつけて、直前まで何度も見直した。

学習範囲が広いので、構力序盤の計算問題ですら、間が開くとすっかり解法を忘れてしまう。やみくもに他の教材に手を出すよりは、『スピード学習帳』を何度も解き直した方がいい。一通り眺めただけで、うろ覚えの知識では本番で役に立たない。

過去問は日建学院の『チャレンジ7』

過去問題集は日建学院の『チャレンジ7』と総合資格の『スーパー7』を見比べて、サイズが大きく読みやすい前者を選んだ。問題はまったく同じだし、解説の詳しさやボリュームも大差ないと思う。

『スピード学習帳』はだいたい暗記したが、過去問に試験時間どおり挑んでみると、なかなか合格水準に達しない。法規は法令集に必ず答えが書かれているので、時間を無視すれば高得点を狙えるとわかった。

しかし本番では「いかに法令集を引かずに答えられるか」という知識が問われる。法規は基本的に勘で選択肢を選んでいって、時間が余ったら法令集を引いてチェックするイメージだ。5段跳びくらいで参照条文がワープする難問も、調べれば答えに辿りつける。あとは時間との戦いだ。本番と同じ時間制限で過去問に取り組むと、「得点しやすそうなところから法令集をひく」、優先順位の感覚が養われる。

過去問題集を開いたのはすでに7月も半ばに入ってから。『スピード学習帳』の暗記が不十分だったので、過去問を解くよりテキストの復習を優先した。『チャレンジ7』には7年分の過去問が収録されているが、実際に解けたのは直近3年だけ。せっかく買ったのにもったいない。もっと早く勉強に着手していれば、最後まで取り組めたと後悔した。

問題を解くだけならさらに分量をこなせたが、解説が充実しているのでついつい読みふけってしまう。『スピード学習帳』では各問題に対して数行程度の解説だったが、『チャレンジ7』は1問に1ページを割いて詳しく解説している。すべての選択肢に対して出典根拠や参考図が記載されているので、7年分解けばかなり実力をつけられると思う。

余裕があれば、さらに古い過去問も

直近7年をその半分もこなせなかったのに、早まってそれより古い過去問題集を購入してしまった。中古で入手した日建学院の『チャレンジ7』平成22年版には、2003~2009年の問題が収録されている。最新の2017年版と合わせれば、過去14年間の問題に目を通せるはずだった。

書店で流通していない過去問の古本は人気があるのか、定価2,500円のところアマゾンのマーケットプレイスで倍近くかかった。時期によって価格の変動が激しく、フリマやオークションの方で安く出品されていることもある。せっかくプレミア価格で入手したのに、まったく手つかずで終わってしまったのが悔しくてならない。

学科試験は過去問20年分解けば受かる」といわれるので、余裕があれば古い過去問もこなしておきたい。ただし、解説もきちんと読んで理解しながら進めると、思った以上に時間がかかる。試験直前になってから「1日に1年分解く」というような過密スケジュールは無理だと思う。

TACブログの「比較・実例暗記法」

環境の空調設備が理解できず、ウェブで検索していたら見つけたのがこのサイト。1問1答形式で、かなりのボリュームの解説が気前よく無料で公開されている。法規以外の計画から施工までざっと400問、試験前は移動中や食事中もスマホでずっとチェックしていた。

単なる過去問解説でなく、「比較暗記法」というコンセプトでまとめられているが特徴といえる。例えば「筋交い軸部と接合部のどちらを先に降伏させるべきか」という問題では、木造と鉄骨造で解答が逆になる。年によって正誤の選択肢は変化するものの、引っ掛け問題で狙われるポイントがわかるので助かる。

ときおり挟まれる下ネタは、『ゼロからはじめる』シリーズの著者、原口先生の影響だろうか。大学受験で高校生に教えるにはNGだが、大人向けの建築士受験なら何でもありだ。図表の解説も充実していてイメージをつかみやすい。TACは法令集の線引きだけでなく、こんなすぐれた教材をウェブで公開していて太っ腹だと思う。

独学組にはうれしいサービスなので、ありがたく利用させていただこう。通勤中でもトイレでも、空き時間にスマホでチェックできるが便利だ。試験間際になったら、市販テキストよりこのサイトを見た方が得点に結びつきやすい。基礎学習から直前チェックまで役に立つ、すばらしいコンテンツだ。