ここ数年ピザ屋のサルヴァトーレに株主優待で通いまくって、都内の主要店はほぼ網羅できた。しかしまだ同チェーンの旗艦店、六本木ヒルズの「毛利」が残っていた。
全国にあるサルヴァトーレの中でも、毛利の価格は最高級。六本木はめったに立ち寄るエリアでないので、なかなか足を運ぶ機会がなかった。
たまたまヒルズで用事があったついでに、毛利で念願のランチに挑戦してみた。1,500円のブッフェは高級だが、立地とサービスを考えればまあ納得できるレベルだと感じた。
ヒルズの地下にあるイタリアン
サルヴァトーレの公式サイトからレストランを検索すると、毛利Salvatore Cuomoはトップに出る。同地に残る大名屋敷跡の毛利庭園から取られた瀟洒な名前からも、別格感がただよう。
イタリアンなのに毛利…まるで高級ホテルの鉄板焼きや懐石料理のようなネーミングだ。毛利=森ビルと韻も踏んでいる。
場所は六本木ヒルズのヒルサイド地下2階にあり、一般客が行くショッピングゾーンや美術館の入口からはだいぶ離れている。複雑すぎていまだに把握できないヒルズの地下空間。渓谷のような通路を下りて行くと、庭に面したサルヴァトーレのテラス席にたどり着いた。
庭園の向こうはガラス張りのテレビ朝日本社ビルだが、池の向こうに少しだけ東京タワーが見える。地価の高そうなこんな場所に、ぜいたくなランドスケープがしつらえているのも憎らしい。
2003年に六本木ヒルズがオープンして間もない頃、知り合いの社長さんにこの毛利に連れてきてもらったことがある。当時はわけのわからない高級レストランという印象しかなかったが、久々に来てみると落ち着いたインテリアで、バブリーな感じはしない。
15年の月日を経て、庭の植木のように落ち着いてきたのだろうか。店内は思ったよりこじんまりとしていて、バルやビストロと呼んでもよさそうなほど。ほかのサルヴァトーレと同じく、カジュアルで親しめる雰囲気だった。
テイクアウトも可
入口は建物側にあり、平日の13時過ぎでも4人待ちの行列ができていた。テイクアウト用の窓口もあり、ここでピザをオーダーして外の座席で食べている人もいる。
今なら軽減税率が適用されるので、持ち帰りで食べた方が消費税が安く済む。ピザやパスタのほかに、生ハムや揚げニョッキなどスナックも注文できる。入店待ちの行列を避けるなら、テイクアウトするのもありだろう。
しかしメインのピザはマイナーラでも税込1,200円~。たくさん食べるつもりなら、やはり店内でブッフェを選んだ方がお得だ。
隣にできた競合店R PIZZA
待っている間にあたりを散策すると、隣のレストランもピザ屋だった。
こちらはカスタムピザ専門のR PIZZA。長細いナンのようなかたちをしたピザ生地に、いろいろ具を載せても1,000円程度とリーズナブルだった。
2019年4月にオープンした後発組として、若干安めの価格で売り出しているようだ。老舗のサルヴァトーレの横に競合店を出すとは、なかなか意欲的なチャレンジといえる。
店内のデザインは金属質でモダンな感じだが、その分ファストフード的な寒々しさを感じてしまう。隣のR PIZZAの方は空いていて、待たずに入れそうだった。
価格に見合う豊富なラインナップ
サルヴァトーレ毛利のランチブッフェは、平日でも90分1,500円と最高価格だ。デザートやドリンクをつければさらに300円アップする。ただし価格はすべて税込みなので、このエリアで食べ放題するとしては妥当な設定に思われる。
ピザは常時5種類並んでおり、お客さんも多いので回転は速い。いつもの戦略で焼き立てのタイミングを狙いつつ、アイドルタイムはパスタや惣菜をつまんで間を持たせる。
毛利のブッフェメニューは価格相応に種類が豊富。サラダコーナーは生野菜だけでなく、ボローニャソーセージまで置いてあった。
お皿に全部乗せすると、サラダだけでもこれだけのバリエーションを楽しめる。季節的に、野菜もおかずもサツマイモやカボチャの料理が豊富に出ていたのがうれしい。
惣菜部門も他店より充実している。本日の温菜としてミートボール。鶏のから揚げに魚フリット。そしてニョッキやペンネの変わり種も含むパスタが全5種類。ラインナップの中では個人的にサツマイモ味のニョッキが大ヒットだった。
名物のゼッポレこそなかったが、これだけ種類がそろっていれば飽きることはない。ピザもパスタもまんべんなく数回ずつリピートして、45分で十分満足できた。
他店とは客層が違う
希望をいえば制限時間を60分くらいに短くして、料金を200~300円下げてもらえるとうれしい。しかし六本木ヒルズのフラッグシップ店という立場上、短時間で急かして食べさせるスタイルは似合わないだろう。
テラス席でない方の店内は狭い。その代り、カウンター席は別グループをなるべく隣に座らせず、ゆとりをもって配置しているように見えた。
まわりで飛び交う会話も、ブルジョアマダムがギリシア旅行に行った体験談とか、海外の不動産相場とか、郊外ファミレスとは明らかに内容が異なる。
都心のビジネス街には500円程度の安いテイクアウトや、牛丼・うどんのチェーン店も充実している。平日の微妙な時間に六本木ヒルズでのんびり会食している人たちの中に、サラリーマン風のグループは皆無だった。
規格外ピザやVIP席もあり
新ピザの登場を待つ間に、バジルや生ハムがふんだんに盛りつけられた豪華版のピザが焼かれることもあった。厨房を観察していると、食べ放題とは別の高級ピザが奥まったテーブル席に運ばれていくようだ。
どうやら庶民のカウンター席からは見えない上の方に、特別席が用意されているらしい。もしかすると隣のR PIZZAのように、メニュー表にすら載っていないカスタムオーダーも可能なのかもしれない。
優待券がなければ1,500円のランチなど、とても手が出せないレベルといえる。しかしここ六本木の毛利においては、さらに上のクラスが存在する。
こちらはガストで499円のマヨコーンピザを、テイクアウトして外で食べた方が2%安くなるかと迷うレベルの低所得層。たまの楽しみとして、せいぜい優待を使って身の丈に合わない高級店の最安メニューをお試しする程度だ。六本木にあるサルヴァトーレのVIPシートなど、このさき一生縁はないだろうと思われた。