すき家を擁するゼンショーグループの株主優待券で「はま寿司」に行ける。ほかの牛丼チェーンに比べてゼンショーの優待還元率は渋いが、すき家以外の様々な店舗で活用できるのは吉野家と同じである。
ココスを筆頭として、ジョリーパスタ、華屋与兵衛などファミレスも豊富である。リーズナブルなサラダバーが魅力のビッグボーイもゼンショー傘下。あえてすき家でなく、なか卯で親子丼を食べるのもありだ。
ゼンショーは投資額に対してもらえる優待券が少ない割に、魅力的なグループ店が多いので、メインのすき家で使うことは滅多にない。その中でも一押しは、回転ずしの「はま寿司」だ。
一皿90円のはま寿司に平日から大行列
はま寿司はかっぱ寿司やくら寿司と同じ、ロボットが裏で握る100円均一の回転ずしである。名前が似ているだけでなくシステムや価格帯もそっくりだ。はま寿司をほかのお店と比べると、機材やメニューが独創的すぎるくら寿司と、スタンダードなかっぱ寿司の中間的な位置づけという印象がする。
大手のゼンショーグループらしく、平日なら「一皿90円(税別)」という強気の価格戦略を展開しているのが特徴だ。寿司が一貫50円で食べられるだけでもありがたいこの時代に、さらなる値下げに挑む心意気を買いたい。
一皿90円のインパクトが大きいのか、平日12時過ぎに向かったはま寿司は土日と変わらない混み具合だった。20人ぐらいの行列で、カウンター1名希望で30分は待たされる予測が出た。最近立て続けに、魚屋路、かっぱ寿司、くら寿司と平日ランチを試したが、ここまで並んでいる寿司屋はなかった。いったいはま寿司で何が起こっているのだろうか。
受付に電子化された案内板があり、まるで病院のように自分の番号がディスプレイに表示される。テーブルとカウンターは半々くらいで、どちらでもOKのシングルライダーならすぐ呼ばれるかと思ったが、意外と時間がかかった。
30分も待ち時間があるとサラリーマンのランチには厳しいだろう。見渡す限りほかのお客さんは、仕事休みの家族連れ、シニア夫婦、外国人グループと、休日モードの人々ばかりであった。
休日の込み具合はくら寿司も相当だと思うが、平日はそれほどでもない。座席は9割がた埋まるが、並ぶほどではなかった。
タッチパネルの操作性が悪い
たっぷり待たされてようやく確保した座席なので、心行くまでお寿司を楽しもうと思った。しかし相変わらず口内炎が痛いので今日は大食いを避け、優待券の500円枠内を意識して注文するようにした。
なんとなく待ち時間が長くて我慢を強いられるほど、ついつい多めに食べたり高いメニューを頼んでしまったりするような気がする。回転ずしは行列が長いほど客単価が上がる傾向があるのではないだろうか。
とりあえず毎回頼むサーモンと寒ブリを選択。はま寿司のタッチパネルは他店より型式が古いのか、ボタンの反応がいまいちだ。しかも複数メニューを選んでまとめて注文する「買い物かご」的な機能がなく、1品ずつ個数を選んでオーダーする形式なのがやや不便だ。注文ボタンも会計ボタンも、一回押すとすぐ通ってしまってキャンセルすることができない。
タッチパネルでオーダーした品は、共通レーンで「ご注文品」皿に載って届く。かっぱ寿司と同様に、タイミングよく受け取らなければならない。この点では、くら寿司のように注文用の専用レーンがあった方が便利だ。だが導入・メンテのコストが高そうなのと、通常レーンの商品が顧みられず劣化するという店舗側のデメリットも大きそうだ。
寿司も味噌汁もうまい
はま寿司で回る寿司ネタはICチップで鮮度管理されているそうなので、たまにはピンと来た皿を直観で選んでみようと思った。カツオや厚焼き玉子など、見た目おいしそうだったネタは味も外れがなかった。カツオは藁でいぶしたような香りが食欲をそそる。
鉄火巻はどう見ても切り口が雑で、さすがにこれは職人でなくロボットの仕事だと気づいた。カッターの切れ味が鈍っているのか、シャリの握りが弱いのか、原因は不明だ。まあ見た目はいまいちでも、食べる分にはなんら問題ない。
あおさの味噌汁は100円だが、なみなみ注いである。はま寿司の汁物は他店よりコスパが高いと思った。
5種類の醤油とポン酢を試せる
もう一点、はま寿司で特徴的なのは、寿司につける醤油を何種類も選べることだ。狭いカウンターの上になんと5種類も並んでいた。
- はま寿司特製だし醤油(これが標準で、サイズが大きい)
- 関東風濃口醤油
- 九州甘口さしみ醤油
- 北海道日高昆布醤油
- まろやかぽんず
全種類少しずつ味見してみたが、甘口は本当に甘いし、濃口はしっかり濃い。日高昆布は確かに香ばしい昆布の香りがする。味音痴でも違いがわかるくらい個性が分かれた醤油がそろっているので、寿司ネタとのお気に入りの組み合わせを見つける楽しみがある。
スシロー上場で期待が高まる回転ずし優待
実際に食事してみて「一皿90円」と「5種の醤油」という独自性が、はま寿司人気の理由かと思った。渋谷のTEXMEXのタバスコのように、調味料を多めに用意するのは割と簡単で効果的な演出だと思う。
税込97円を4皿頼んで、お椀は108円だったので合計593円。ガリも多めにいただいて腹八分目、魚以外にタマゴに味噌汁とバランスよく食べられて、めずらしく大人しいランチだったといえる。最近どうも松屋やかつやのように、味が濃くて脂っこい丼ものばかり摂取していたので、老若男女問わず楽しめる回転ずしは優待業界でも貴重な存在だ。
先日再上場したスシローでは、上場記念の「うまさ上々祭り」が期間限定で行われている。108円で一巻食べられる「大切り中トロ」や「大盛りイクラ」のビジュアルが圧巻だ。公開直後は乱高下しそうなので手を出しにくいが、スシローの優待情報に注目したい。
これだけ格安回転ずしが勢力拡大してくると、ファミレス形式で職人が握る魚屋路の立場は中途半端に思われてくる。ただし、客層や店内の雰囲気がほかと違って、一人客でも待たずにゆっくり食べられるメリットはある。
安いが待たされる100円寿司と、高すぎてお呼びでない普通の寿司屋、その中間に位置づけられるのが魚屋路や三崎丸。消耗戦を繰り広げる格安寿司が共倒れする中、意外と生き残るのは客単価1,500円くらいの「ちょい高」ファミレス寿司かもしれない。