ガストで優待消化するときは、日替わりや単品の格安メニュー(ドリアやピザ)が中心だ。よほど有利なクーポンでも出ない限り、割高な企画メニューに手を出すことはない。
しかし今年の「夏コレフェア」にラインナップされている「もちふわナンとスパイシーバターチキンカレー」はちょっと気になる。麺類や肉料理はバリエーションを変えて次々出てくるが、本格的なインド料理が提供されるのはめずらしい。
たまたま店頭でもらった紙クーポンで50円引きできたこともあり(このメニューのアプリクーポンは発行されていない)、ガストのナンを試してみた。
ついに株主優待でナンが食べられる
ここ20年くらいで牛丼屋と同じくらいインド料理の店が増えたと思う。都心だけでなく郊外にも次々進出して、家のまわりではコンビニより多いくらいだ。
どのお店も味は平均以上で、600~700円の最安ランチでも十分満足できる。チェーン店の豚丼やうどんより若干高くなるが、おいしいので外食ローテーションに加える割合が増えてきた。
ただ、株主優待でインド料理を食べられるところが少ないのは残念。もしガストのナンが当たりで定番化してくれるなら、マルゲリータピザと同じくらい活用したいと思う。
799円にしてはナンが小さい
メニューを見ると「8種のスパイス」が入っているということで、料理にこだわりを感じさせる。名前も普通のカレーではなく「バターチキンカレー」と名乗っているくらいだ。唐辛子アイコンのピリ辛マークから、ガストの本気が伝わってくる。
ただし799円という値段にしては、ナンのサイズがちょっと小さいように見える。街中のインド料理店で頼めば、お皿からはみ出るくらいジャンボなナンがついてくるのが通例だ。
100円でチーズナンにアップグレードできるのは、よくあるサービス。ゴマやガーリック、ドライフルーツ入りのナンも出てくるとうれしい。しかし、ファミレスの一メニューでそこまでバリエーションを増やすのは難しそうだ。
ピザもハンバーグのチーズの増量オプションがあるので、チーズナンなら材料・調理を兼ねられるのだろう。
「もちふわナン」という盲点
やってきたナンは、小さいだけでなく妙に丸っこい。しかも表面にガスを抜くための穴が開けられている。本格風を期待していたのに、プレート上のあらゆる要素から漂うコレジャナイ感…
ナンをちぎってみると、中はふかふかでパン生地のようになっている。面積が小さい分、厚みは大きいといえるが、あのモチモチしたナンのイメージではない。何かに似ていると思ったら、ステーキガストのサラダバーにあるフォッカッチャを思い出した。
この生地の違いは、シカゴピザとナポリピッツアくらいの差がある。どう見てもナンというよりはパンと表現した方が適切だ。ふとメニューを見ると「もちふわナン」と書いてあった。注文するときは気にもとめなかったが、これはガスト流のエクスキューズであるらしい。
フェア用メニューでナンを提供するために、わざわざタンドール窯を用意することはできなかったのだろう。そのまま温めれば出せる方式のフォッカッチャを拡大して、「もちふわ」ナンと名付けることにしたようだ。
ガストのピザ用生地はもっと薄くて歯ごたえがあるので、そちらで代用することはできなかったのだろうか。ピザメニューに「バターチキンカレーピザ」とか追加したら、うけそうな気がする。
カレーは甘くて水気が多い
巨大なフォッカッチャを浸して食べると、どうやらカレーも一味違う。
第一印象は確かにバターチキンなのだが、後に引く味覚は家庭用のカレールーという感じ。吉野家のカレーほど、もろにカレーそのものではないが、「バターチキン風味」のカレーというような不思議な食感だ。
軽く汗ばむほどの辛さはあるが、妙に甘すぎる。粘性は弱くサラサラした性質で、パン生地へのくっつきも弱い。そこは大手のすかいらーくなので、単なる失敗作でなく、意図的に調整された結果なのだろう。
おそらくカレーの味は、標準的な日本人の好みに合わせて甘めに味付けされている。本格インド料理店のバターチキンだと、こってりしすぎてお年寄りにはきついかもしれない。
そしてフォッカッチャのパン生地には、水気の多いカレーの方がよく染み込む。ちょうどスープカレーにパンをひたして食べるような感覚だ。材料費や調理法など、さまざまな制約のもとで、苦労して編み出された創作料理と推測される。
お肉の量は多い
なんとも微妙なインド料理だが、これはこれで普通に食べられる。さらにカレーの中に唐揚げサイズの鶏もも肉が3個も入っていて、お肉の量は思ったより多かった。
カロリーは500kcal台と抑えめ。トータルで考えると、同じお金を払うなら近所のインド料理店に行った方が量も味も楽しめる。これであと200~300円安くて、温玉ミートドリアくらいの値段だったら、たまには食べてもいいかなあという程度だった。