建築士の受験に役立つ「普通じゃない」勉強場所~メディアテーク

長くてつらい建築士の受験勉強。自宅の外でも通勤中、トイレの中など、すきま時間を生かして暗記に精を出していると思う。飽きてきたら、ときどき変わった場所で勉強してみるのも効果的だ。気分転換に役立った学習環境をいくつか紹介しよう。

街中のカフェや図書館というのは、よくあるバターン。もちろんそれらも有効だが、せっかくなのでちょっと変わった場所を取り上げてみたい。

基本的には学科の勉強向けだが、製図の期間中も答案例を1/400スケールで模写したり、課題をエスキースするには役立つ。これらの作業はA4程度の方眼用紙さえあれば、平行定規がなくても十分間に合う。

せんだいメディアテーク

建築士の試験なので、有名建築のパブリックスペースで勉強してみるのも一興だ。意匠系の学生には、「卒業設計日本一」の会場としても知られている仙台のメディアテーク。業界ではあまりにも有名なので、わりと新しい作品だがいち早く学科試験の計画分野に出題された。

以下は普段あまり見ることのない、裏通りから撮った写真。3階より上にポコポコついているバルコニーは、施行令126条の6に定められた非常用進入口だろう。

ただし裏口からアプローチすると、EV・エスカレーターへの動線が長く、後述の「席取り合戦」には不利となる。

構造的な見どころ

メディアテークは伊東豊雄の設計で2001年に完成。国内にある現代建築として名高く、海外からこれ目当てに訪れる観光客も多い。

独特なチューブ状の鉄骨シャフトと、薄いスラブで躯体が支持されている。むしろこの独特な構造を見せるために、全面ガラス張りのシンプルなキューブ形状が採用されたともいえる。

構造設計は佐々木睦郎。そして鉄骨・プレートの加工は高橋工業という技術者集団。彼らの施工は、気仙沼のリアス・アーク美術館(石山修武設計)や、塩釜の菅野美術館(阿部仁史設計)でも見ることができる。もはや建築というより造船に近い溶接技術だ。

メディアテークは表層的なデザインというより、チューブや極薄スラブの構造にインパクトがある。外観やプランの他にも見どころが多く、それが建築業界で広く知られている理由と思われる。

こんなハイセンスな空間で勉強したら、モチベーションが上がること間違いない。そして3~4階にある仙台市民図書館の閲覧席が、自主学習の穴場なのだ。

図書館フロアの電源付き閲覧席

図書館フロアは2層になっており、奥側1/4くらいが職員専用の管理ゾーンになっている。その上が参考資料・郷土資料の地味なコーナーで、ここの閲覧席が吹抜けを見下ろせて眺めがいい。そしてデスクに電源が備え付けられている。

施設自体は朝9時開館だが、図書館は10時オープン。そのため、9時過ぎからその下の2階エスカレーター付近に順番待ちの行列ができる。ここで20人以内に並ぶことができたら、電源付きの特等席をゲットできる可能性がある。

もし電源席に間に合わなくても、下階のオープンデスクはキャパが広いので、そちらに座れる。

別にテキストやノートを開いて勉強するだけならコンセントは要らず、下の方がテーブルも広くてはかどるかもしれない。

謎の開館時間差と待ち時間

10時までの待ち時間、特に椅子もベンチもないので、みな地べたに座って待っている。目の前に雑誌と新聞コーナーがあるが、2階のライブラリーも10時オープンなので立ち入ることができない。

共用スペースに置いてあるフリーペーパーのクオリティーが高いので、暇つぶしに収集してみるのもおすすめだ。さいわいトイレはすぐ近くにある。

なぜ施設とフロアの開館に時間差があるのかわからない。エスカレーター反対側の会議室では、すでにミーティングをしていたりする。9時開館とは単に職員の始業時間なのかもしれない。

東北の寒空の下、利用者を館外で待たせるのは気の毒なので、1時間早く中に入れることにしたのではないかと推測している。特に雨の日はエントランスの庇が狭いため、館外に傘を差した行列ができてしまう。

利用者/管理ゾーンの分析

メディアテークの公式サイト、「施設・設備のご案内」のページに各階のプランが詳しく出ている。図面と実物を照らし合わせてゾーニングと動線を確認すると、製図試験のエスキース練習にも役立つ。

待ち時間に館内の入れるところをくまなく探検すると、エスカレーターの途中で施設の裏方を見学できたりする。建物内の普通は見せない部分も、差支えなさそうなところは積極的に公開されている。

たまたま1階中央のオープンスクエアをパーティションで区切って、一般企業の展示会が行われていた。ガラス越しに、北西側の搬入ヤードとサービス用のエレベーターを確認できる。

ウェブサイトに掲載されているプランの黒地部分が、構造コアと管理ゾーン。階ごとにあえて位置をずらして、利用者と管理者の境界を流動的に見せる工夫が行われている。

基本的に裏通りの北側がサービス寄りだが、最上階の7階は中央部に管理機能やトイレを集約させている。眺めのよい建物周辺部をラウンジやスタジオに割り当て、利用者に開放する狙いだろう。こういう配慮はぜひ製図試験でも生かしたい。

そのほか仙台の見どころ

仙台に旅行するなら、宿は国分町入口にオープンした9hというデザイナーズカプセルホテルがおすすめだ。駅からは少し離れているが、街の中心部に位置するので、メディアテークや観光名所に足を伸ばしやすい。

仙台の市街地はそれほど広くない。西に見える青葉城の本丸跡までウォーキングしたり、竜ノ口渓谷を渡って八木山方面にも足を伸ばせる。南の太白区にある、「地底の森ミュージアム」(坂倉建築研究所設計)という歴史博物館もおすすめだ。

岐阜のメディアコスモス

ちなみに同じく伊東豊雄の建築作品で、岐阜にあるメディアコスモスも受験勉強に使える。スタバとコンビニが併設されているので、休憩にも便利だ。

仙台と同じく2階が市立図書館になっていて、あちこちに自習スペースがある。こちらは明らかに高そうなデザイナーズ家具ばかりで、メディアテークより什器のグレードは上。

メディアコスモスは2015年の開館で、そろそろ学科試験にも出題されそうな予感がする。実作の見学と目の保養も兼ねて、たまに有名な公共施設で建築士のテキストや法令集を開いてみるのもおもしろい。