久々にガストを訪れて発見した卓上のタブレット装置。
自分でクーポン番号を入力できるため注文が便利になった。待ち時間も少なくて済む。
最近話題になった、すかいらーくHDの24時間営業撤廃、店舗敷地内完全禁煙について、考えたことを書いてみたい。
(2020年2月19日更新)
ファミレスの見守りサービス案
一週間ぶりに訪れたガスト。雨の日の13時過ぎということで客席はわりと空いていた。
いつもの店員さんに挨拶してお気に入りの窓際シートに座る。店員さんもパートでローテーションするせいか、1週間程度顔を見せなかったとしても不思議に思われることはない。
独居老人の見守り用に、ガストも安否確認サービスをやればいいのではないのだろうか。
指定したランチタイムに来店したらポイントがもらえるインセンティブあり。数日続けて顔を見せない場合は、宅配ついでに御用聞きに行くとか電話してくれるとか。
ガスト新タブレットの使い方
そんなことを考えていると、テーブルの上に見慣れないタブレット端末が配備されていた。その代りいつものランチ用メニューは撤去されている。
ほかの居酒屋チェーンではよく見る仕組みだが、低価格のファミレスでタブレット注文が導入されているお店は少ない。似たようなチェーン店で見たことがあるのは「和食さと」くらいだ。
タブレットでは最初に大人・子ども別の利用人数を入れて統計を取られる。
画面左端に機能別のメインメニュー、上端に料理のジャンルが並び、タイル状の画像を中心としたコンパクトなデザインになっている。
シンプルでわかりやすい設計のおかげか、品数の多いファミレスでも迷うことなく目的の料理を探せる。
自分でクーポン番号入力も可
左側に「クーポン番号入力」のボタンがあり、うれしいことに自分で数字を入れることができる。
これまでアプリクーポンを使って注文するときは、店員さんに口頭かスマホ画面を見せて番号を伝える必要があった。
たかだか数字を伝えるためにボタンを押してテーブルまで来てもらうのは申し訳ない。さらに聞き間違いや注文ミスの懸念もあった。
卓上タブレットがあれば、わざわざ店員さんに来てもらわなくてもマイペースで注文できる。混雑時のオーダー待ちアイドル時間を減らせるほか、回転寿司のように「お店の人に気を使わなくてもいい」というメリットが生じる。
確認画面がややわかりづらい
予定していたマヨコーンピザのクーポン番号を入れると、セットメニューや「たっぷりWチーズ」のオプション選択もしっかり表示された。
このサジェスチョンは顧客単価の増加に効果があるのではないだろうか。プラス100円でピザのチーズを倍増できるサービスなど、知らない人も多いと思う
最後の注文画面では、ピザ本体とWチーズの合計価格しか表示されないのがまぎらわしい。うっかりクーポン未適用のマヨコーン定価が選ばれてしまったのではないかと思い、いちから操作をやり直してしまった。
冷や冷やしたが、レシートを見るとちゃんとクーポンの値引きは適用されていた。
メニューは英語と中国語の表示に切り替えられるので、空き時間に語学の勉強もできる。
ネギトロはminced tunaと呼ぶらしい。
タブレットの電池切れ問題
タブレットの裏面を見ると製造元は京セラで型番はKC-T302DT、MADE IN JAPAN。
いまどき京セラがタブレットなど作っていただろうかと不思議に思う。昔出ていたQua tab(キュア タブ)とも違う業務用製品なのだろう。
スタンドの裏側にこっそりすかいらーくのマークが印刷されているのは微笑ましい。最近店頭では見る機会がめっきり減ったが、やはりこの眠たそうな鳥はファミレスのシンボルだ。
注文が終わって数分、タブレットの画面は特にスリープ状態に入る気配がない。こんな明るさで常時点灯していたら、2時間くらいでバッテリーが消耗してしまうのではないか。
最近の京セラ製品は電池の持ちがよくなったのだろうか。特に遠隔で給電するような仕組みも見当たらない。
そう思っていたら案の定、電源不足の警告表示が出た。
「充電が少なくなっています」という日本語が微妙におかしい。
充電用コンセントも拡充
こうなると画面を触っても反応せず、追加注文ができなくなってしまう。
面倒なので店員さんは呼ばずにそのまま放置したが、この運用方法だと数時間おきに端末を交換する必要が出てくると思う。別に卓上で常時充電するかたちにしてもいいのではないだろうか。
まわりを見回すと、シートの後ろにいつのまにか電源が増設されていた。いかにも取って付けた風の簡素なコンセントだが、いざというときにスマホやノートPCを充電するには役に立つ。
すると卓上にACアダプタも用意して、注文タブレットの電源が切れたらお客さんが自分でここから充電する仕組みにすればよいのではないか。
注文用タブレットもセルフで充電。ガストならそこまでやってもいいと思う。
遠隔注文で店内が静かになった
新しいタブレットで注文が通ったのか心配になったが、ほどなくしてお目当てのマヨコーンピザが届いた。トッピングのオプションも間違っていない。
まわりで注文に手間取っている高齢者も見かけたが、いずれみな慣れるだろう。いつものように卓上ボタンのチャイムが鳴らず、店員さんもバタバタ走り回らず、お店の中が静かになった。
タブレットによる遠隔オーダーシステムは、ガストのような廉価ファミレス店にこそ合っている仕組みだと思う。そのうちお会計も卓上・キャッシュレスで済ませられるようになるといい。
すかいらーくの深夜営業廃止
すかいらーくといえば最近、全店で24時間営業を廃止したことがニュースになった。
もともと夜10時以降は10%の深夜料金が加算されていたから、わざわざ値段の高い夜中にファミレスを利用することはなかった。
これに反応して吉野家が「夜割10%オフ」キャンペーンを始めたのは興味深い現象だ。
後述の禁煙化と同じく、深夜営業がなくなると行き場のなくなる人種がいる。そうしたニッチな顧客層に対して、新たな受け皿になることを狙っている。
「夜割」とうたいつつも、実は15時から割引適用。対象メニューはもともと割高な定食なので、丼ぶりユーザーの客単価アップを狙った作戦とも見受けられる。
最大の理由は人件費対策
24時間営業の廃止は「人手不足=人件費高騰対策」という理由が大きい。
「いつでも開いている」という顧客の利益を減少させる、サービス面の実質値上げと見る向きもある(ITmediaビジネスONLiNEより)。
当然ながら深夜利用しない顧客層にとっては何の影響もない。夜間の利用客が朝型生活に変わって、日中のお客さんが増えるとも思えない。
むしろ営業時間の短縮でメニューの値上げが回避されるなら、うれしい限りだ。不健康な夜間勤務がなくなってスタッフもリフレッシュ。昼間のサービスが良くなるのではないか。
店舗によってはもっと時間帯を絞って「ランチタイムのみ営業」まで進めてもいいと思う。
時限クーポンも導入しては
現在のすかいらーく系列店は、わりの良すぎる株主優待券とアプリクーポンのばらまきで、ダブルスタンダードの価格設定になっている。
キャッシュレスやポイント獲得に敏感な顧客に対しては、むしろ値引きサービスが充実してきているように思う。
営業時間の短縮に関しても、上島珈琲のようにアプリで時限クーポンを発行するとかして、さらに効率を上げられると思う。平日13時以降は日替わりランチ50円値下げとか。
平日、日中の利用者は時間に融通の利くシニアや主婦層が多い。フリーランスやノマドワーカーも増えている。
これらの客層を時間帯制限のあるクーポンで分散来店させれば、ピーク時の人件費を減らせると思う。
飲食店の禁煙化による利点
昨年はファミレスの全面禁煙化も話題になった。個人的にはタバコが苦手なので、すかいらーくの決断は歓迎したい。
最近読んだ雑学本によると、飲食店の禁煙化には以下の3つのメリットがある。
- タバコを吸わない人が新規顧客に加わる
- アルバイトが定着しやすくなる
- 客層の富裕化(単価引き上げのチャンス)
禁煙の飲食店が増えた今、遅行型ニッチ戦略で残存者利益を狙うこともできる。しかし大手のすかいらーくがあえて「取り残された喫煙者」というニッチを狙う必要はない。
禁煙化も結局人件費の問題
自分がバイトするとしても、タバコ臭い職場は選びたくない。働き手を確保するという意味でも禁煙化の方針はポジティブに評価できる。
どうしても受動喫煙を避けられない業界では、いずれ深夜割増のような手当てがつくようになるのではないか。企業が自主的に導入している禁煙手当のようなかたちで。
雇用の需給バランスが崩れれば、労働環境のデメリットは賃金に反映されてくると思う。
一方で「他人のタバコで間接的に煙を吸えるのがうれしい」というスモーカーがいるかもしれない。
いまや税率6割も取られるタバコは富裕層の嗜好品。副流煙ですら貴重なリソースといえる。
愛好家の受け皿になる喫煙OKの飲食店はなくならない。禁煙のお店が増えるとユーザーが集中して、相対的に煙の濃度も上がる。
喫煙者同士でサービスを提供し合えば特に問題はない。大手ファミレスの禁煙化によって、顧客が移って繁盛したお店もあるだろう。
ファミレスはエンターテイメント
全面禁煙化→深夜営業廃止→卓上タブレット導入と、矢継ぎ早なガストのサービス改革には舌を巻く。
たった一週間通わなかっただけでも店内ががらりと変わり、新メニューやクーポンが次々登場する。ファミレスはおひとりさまでも楽しめる、食を介した一種のエンターテイメントなのだと実感した。
2020年2月12日までは「チーズIN感謝祭」というキャンペーンで、対象商品が軒並み200円引きになってきている。
399円のチーズ入りハンバーグだけでも、ランチとしては十分間に合うカロリー計算。税込500円以下で済むなら、あえて株主優待を使わずガストに行ってもいいかなと思ってしまう。
株主優待の改良に期待
優待改悪の噂をささやかれながら好待遇のまま数年続いているのは、宣伝・集客効果もあるからなのだろう。
営業時間短縮によるコスト削減を生かして、サービス継続とさらなる待遇アップに期待したい。
熱心な顧客のロイヤリティを向上させるために、常時20%オフのゴールドカードとか新設したらどうだろう。ココスのカード優待は昨年廃止されてしまったので、かつて味をしめたゼンショー系の個人投資家が食いついてくると思う。
(追記)テーブルによっては充電あり
後日再訪したガスト。壁側のテーブル席に座ると、卓上タブレットは常時充電中だった。
テーブルが独立式で、配線が邪魔になる席だけ電源コードを抜いているようだ。
充電できない席は電源が切れたらタブレットごと交換すると推測される。バックヤードでは充電中のタブレットが何台も待機していることだろう。
昨年末時点で全国のガスト店舗数は1,346店。東京都にある小学校の数(1,273校)と同じくらいある。
席数と充電ローテーションを考えると、ひとつのお店に30台は配備されているはずなので合計4万台くらい、小中学校へのタブレット導入のように、ちょっとした特需になったと思われる。
お店によってはトイレの脇などにこうした充電ブースが設けられている。
これだけ大規模に導入するなら専用の充電ラックを設計してもよさそうだが、店舗ごとにDIYで対応されているようだ。
あるいはマニュアルどおりの充電方法では効率が悪いか台数が増えたため、あえて別の棚を追加した可能性もある。放熱や操作性、ケーブル接続の手間を考えると、エレクターの上に立てて並べるのは合理的に見える。
日替わりでフランスパンを選べる
日替わりランチを頼むと、ライスの他にプラス60円のオプションで十三穀米、ソフト素ランスパンを選べるようになっていた。
何年もガストに通っていて、日替わりのライスをパンに変更できるとは知らなかった。
見た目はフランスパンだが、中身はコッペパンくらい柔らかい。表面だけパリッと焼いて温めた、ファミレス独特のブレッドだ。
タブレットの広告表示
また一週間後はアイドル状態の際、おすすめのメニューが自動で表示されるよう修正されていた。
今のところ広告が出るのは「チョコバナナサンデー(399円)」のみ。次第にメニューが増えたり、場合によっては他店のCMや動画も流れるようになるのだろう。
京セラ製タブレットのメニュー操作は快適なので、そこそこスペックはすぐれた機材でないかと思う。
メモリの容量も十分あると思うので、じゅうじゅうカルビのように紙芝居やミニゲームを追加してはどうだろう。前にアプリで出ていた「ごちガストクイズ」を移植して、正解者の上位にはクーポン発行するとか。
おひとりさまの暇つぶしアイテムとして歓迎されると思う。
(追記)日替わりは味噌汁変更も可
タブレット注文を試しているうち、平日の日替わりランチの無料スープは、お味噌汁に変更可能であるとわかった。
これはセットのライスを選択して、並盛り/大盛りを選んだ次に表示されるオプション。
「スープを味噌汁に変更(無料)」
ためしに選んでみたら、ご飯もいつものプレートと違う茶碗で届けられた。
味噌汁は特別おいしいというわけでもないが、具の少ないスープよりいいかもしれない。お代わり無制限にならない代わりに、いつもの定食が和食っぽくなる。
卓上のメニューを見たら、下の方にこっそり味噌汁変更可能と書いてあった。今まで何年も気づかなかったのか、タブレット導入と同時に開始された新サービスなのかわからない。
どのみちスープをお代わりすることは少なかったので、1杯単位で比べるなら味噌汁がベター。今後は優先的にライス・味噌汁セットを選ぼうと思う。