スーツケースをモバイルクローゼットに改造するテクニック

数年前、ふと思いついて自宅で持て余していた大型のスーツケースをクローゼットに改造した。といっても、プラ段ボールで棚板をつくっただけの簡単仕様だが、押し入れの中に入れておくとそのままタンスのように使えて便利だった。しかも旅行の際は、中に服を入れたままパッキングの手間もなしにそのまま持ち運べる、モバイル型の衣装ダンスだ。

ルイ・ヴィトンのトランク型クローゼットに憧れる

元ネタはルイ・ヴィトンのトランク型のクローゼット。以前、森ビルかどこかの展示で見てグッとくるものがあった。旅先についてトランクのふたを開ければ、そのまま自宅のクローゼットが出現してジャケットもしわ無しですぐ着られるとは素敵だ。

きっと昔の富裕層がアフリカ旅行してハンティングとかするときに、家財道具をごっそり持って行くのに使ったのだろう。当時は下僕が何人もいたはずだから、多少トランクが重くなっても気にならない。むしろ金庫のように重量があった方が盗まれなくてよいという思想ではなかろうか。

洋服ダンスに関するミニマリストの悩み

ミニマリストにとって洋服の収納は悩ましいところだ。さすがに下着1~2セットで毎日洗濯して着まわすというのは面倒だし、常夏の地方でもなければ夏冬用の装備が必要になる。床や押し入れに衣類を平置きすると見た目が乱雑だし、段ボールに入れても取り出しにくい。やはり引き出し付きのタンスというのは便利なものだと再確認することになる。

妥協策としてFitsや無印良品のシンプルな収納ケースを買い求めたりするが、引っ越しの際はかさばるし、処分するにも有料の粗大ごみ扱いになってしまう。引っ越しの度にポリプロピレンの粗大ごみを排出するというのも環境に悪いようで気が引ける。

そういえば旅行用のスーツケースというのは、旅に出ない時は家の中で遊んでいるだけだ。見た目がかっこいいグローブトロッターとかであれば、収納用に普段使いすることもできそうだが、たいていの安いスーツケースはインテリアとして部屋に置きたいデザインでもない。

イーグルクリークの ECリンクシステムのように、使わないときは骨組みからばらせてコンパクトになるキャリーバッグもあるが、それでも使わない時は押し入れにしまっておくしかない。

遊んでいるスーツケースを安価に洋服ダンス化

よく考えるとルイ・ヴィトンのトランク型クローゼットは、見た目がスパイ道具のようでかっこいいだけでなく、スーツケースを日常的に使える画期的なアイデアに思われてきた。

本物のアンティークを買えるようなお金はないので、身の回りのものでヴィトンのトランクを安く再現できないかと思ったら、意外と簡単にできた。適当なスーツケースがあれば、制作費は東急ハンズやホームセンターで売っているプラ段ボール2枚で税込796円。粘着テープも接着剤も不要、工具はカッターがあれば十分だ。

スーツケースはソフトタイプの100L超がおすすめ

もとになるスーツケースは布製でふたが平たく、ファスナーで留める形式になっているものが最適だ。プラスチック製のハードタイプだと、本体とふたが半々くらいの大きさで開閉するので、服を入れる奥行きが少なくなってしまう。クローゼット用に使うだけなら、とにかく大きければ値段は安いもので構わない。見た目がシンプルで好みに合うなら、無印良品でもニトリの安いのでもOKだ。

自分が使っているのはTITANのスーパーライトXLサイズ(116リットル)で、6年前に19,000円で買ったものだが、すでに廃版になってしまったようだ。TITANはドイツのメーカーで、廉価なわりに質実剛健なスーツケースを作っていた記憶があるが、そもそも日本から撤退したらしい。他社ブランドでも、思い切って容量100リットルくらいの大型を選んだ方がたっぷり収納できると思う。

スーツケースクローゼットの作り方

自作のスーツケースクローゼットを5年くらい使い続けて、棚板の段ボールが傷んできたので久々に新しく作り直した。前回は段ボールの目地というか波の方向が横向きになるようカットしていたのだが、こうすると衣服の重みがかかった際に手前側に折れてしまりがなくなるとわかった。今回は逆に奥行き方向に波が揃うようにセットしたり、さらに進んで斜めの向きになるようカットしたら、だいぶ頑丈になった。

下の写真は交換済みの古いプラ段。棚板が手前側に折れてしまっている。

垂直方向の支柱になる板と、棚板の両方に、半分だけ板の厚み分の切り込みを入れる。これを嚙合わせるだけだが、スーツケース内を10個くらいのコンパートメントに区切れば衣類の重さを支えるのに問題なかった。もっと仕切りを増やせば強度は増すと思う。あるいは仕口と継手を工夫すれば、さらに強度のある構造を実現できるかもしれない。

そのまま旅先に運べる簡易クローゼット

普段は押し入れの上段にふたを開いた状態で置いておいて、すぐ中身が取り出せるようにしてある。ふたのポケットにはハンカチとか小物を収納。もしお客さんが来て下着を見られたりするのが嫌だったら、さっとふたを閉じれば普通のスーツケースの見た目に戻る。

先日の長期出張も、衣類はスーツケースに全部入れて、日用品を収めたバッグと2つ、滞在先に宅急便で送るだけだった。キャスターがついているので、いざとなれば自分で引きずっていくこともできる。もとのスーツケースが軽量タイプなので、中に服を詰めたくらいならたいした重量にならない。

できればハンガーで上着も収納したいが…

できればルイ・ヴィトンのように、上着やズボンがしわにならないよう、ハンガーをかけられるスペースも設けたいところだが、実験してみると相当大きなケースが必要とわかった。116リットルの大型スーツケースでも、ジャケットの裾がはみ出てしまうくらいだ。それなら素直にスーツはガーメントバックで運んだ方がよさそうに思われる。