Googleストリートビューアプリでカードボード用パノラマVRを簡単作成

宴会の余興にいつでも見せられるよう、安い段ボール製のGoogle Cardboardを持ち歩いている。実写のパノラマ画像を見せるだけで、VR未体験の大人は驚くし、特に子供には大好評だ。

ネットに上がっている適当なサンプル画像を見せるだけでは飽きてきたので、旅先で自前のパノラマ画像を撮影してみたいと思った。360度の風景が撮れる全天球カメラを検討してみたが、結局スマホ1台で完結できるGoogleのストリートビューアプリがお手軽だとわかった。ストリートビュー撮影からカードボードで表示するまでの流れを簡単にまとめてみた。

6万円以下のモバイル型360度カメラ比較

パノラマ写真を撮影する方法として、以前の職場ではハイエンドな米国PointGreyResearch社製Ladybugシリーズを使わせてもらっていたが、数百万円はするため個人では購入が難しい。PCをつないでリアルタイムにストリーミングできたりするが、カメラ単体で撮影できない不便さがある。

数年前から出てきたGirocamなどのモバイル型・HDR対応の全方位カメラをいろいろ試してきたが、個人用途としてはリコーのThetaシリーズが価格も手ごろで扱いやすいと思う。

先日2016年10月28日に発売されたRICOH THETA SCは、上位モデルのTHETA Sの機能を若干省いた廉価・軽量モデルで、渋いカラーリングがなかなかいい。3万円を切る価格ながら画質や解像度などの基本性能はTHETA Sと同等なので、静止画撮影メインで考えている人にはお買い得だと思う。その代わり動画撮影時間はSより短く、ストリーミング用のHDMIマイクロ端子は付いていない。

これと競合するのが、サムスンのGalaxy Gear 360で、少し前の2016年7月15日に発売されている。国内正規品だと4.5万円くらいで、Theta SCよりは1.5倍くらい高い。ただしカメラが防水仕様で、静止画の解像度が7,776×3,888画素と、Theta S/SCの5,376×2,688画素よりやや高い。

さらにニコンが2016年10月28日に発売したKeyMission 360も、防水で解像度7,744×3,872と高性能だが、価格はさらに上がって6万円くらいする。

ただニコンは360度カメラの分野には新規参入で、アマゾンのレビューを見る限り価格のわりにいまいちな評判のようである。

パノラマ撮影アプリの老舗PhotosynthはAndroid非対応

Thetaの古いのを中古で買うにしても1万円以上の出費になるし、どうせまたすぐ新製品が出てくると思うので、とりあえずスマホのアプリで代用できないか考えてみた。

スティッチングの精度や連続撮影の利便性は360度カメラの専用機にかなわないが、スマホアプリなら無料で使えて、しかも観光地や屋外で撮影する際に三脚を立てたりして見た目が大げさにならない(撮影許可がいらない)というメリットがある。特に旅先では荷物も減らせてベターだ。

以前、iPhoneを持っていた時は、マイクロソフトのPhotosynthというアプリをよく使っていたが、残念ながらAndroid版はいまだにリリースされていない。

10,240×5,120の高解像度で保存できるストリートビューアプリ

Google Playで「パノラマ360」など類似のアプリはいくつか出ていて試したが、その中でGoogle公式のストリートビューアプリが一番よさそうだった。

使い勝手はどれもほぼ一緒だが、ストリートビューアプリは端末に保存されるパノラマ画像の解像度が10,240×5,120画素とかなり高い。Photosynthは4096×2048だったので、情報量的には4倍以上ある。

GearVRクラスのHMDでパノラマ画像を見ると、4Kでも部分的にぼやけて見えて8Kは欲しいという状態だった。パノラマ画像は端末上で一部分を引き伸ばして鑑賞するので、どうしても高い解像度が必要である。いずれディスプレイの解像度も上がるだろうが、横幅1万ピクセル以上あれば、当面は間に合いそうである。

原理的にパノラマ動画撮影はできないが、静止画であれば個々の画像をスティッチングするアプリの方が360度カメラより解像度を上げられる。今でもプロ用のパノラマ撮影機材として、全方位カメラより一眼レフが好まれる理由はわかる気がする(既存のカメラを流用できるというメリットもある)。

Googleストリートビューアプリを使いこなすコツ

ストリートビューアプリの撮影方法はiOS版PhotoSynthとほぼ同じである。画面中央の白い円形目印を、周囲に出るオレンジ色の円に合わせていけば次々撮影できる。

撮り方をいろいろ試してみたが、まず水平方向に一周、次にその下の段に移って水平に一周、さらに下で一周、真下を1枚、次に上の段で同様に水平に2周して真上を1枚、という感じで、リンゴの皮をつなげてむくように、らせん状に撮影していくとつなぎ目がきれいになるようだ。

プレビュー画面ではぎざぎざした継ぎ目になっているが、あとで自動処理されてきれいにつながるので問題ない。撮影個所ごとに露出が自動調整されて明暗がちぐはぐになるが、それも後処理でならされてHDR化されるようだ。

撮影を続けると画面下中央の円形アイコンの周囲にプログレスサークルが時計回りに進んでいき、100%埋まったらチェックボタンをタップすればよい。

プレビュー画面では全部埋まったように見えても、サークルが回り切っていなければどこかに未撮影の領域があるので、スマホをあちこち向けてオレンジ色の円が出ないか探してみよう。自分の真下と真上の各1枚は、黒い余白がなくてもダメ押しのようにオレンジ色の円が出るので、撮影を忘れないように。

足元を撮影するときに自分の脚が写るとかっこ悪いので、真下撮影の際はがに股になって踏ん張り、スマホを少し地面に近づけて撮影するといい感じに仕上がる。

慣れれば1か所2分くらいで撮影できるようになった。手持ちのGalaxy S6 edgeでは、カメラの画角的に合計51枚撮影して360度埋まる感じ。撮影完了するとスティッチングが自動で行われて、3分くらいでパノラマ画像を確認できるようになる。結合処理中も次のシーンを撮影できるのが便利である。

ただし撮影後にスティッチングをかけながら連続撮影すると、バッテリーが恐ろしい勢いで減る。CPUとカメラ、GPS、各種センサをフル稼働させているので仕方ないと思うが、わずか1時間で電池残量0になって強制終了した。

ストリートビューアプリはポケモンGOより消耗が激しいので、外に撮影に行く際は大容量のモバイルバッテリーを持参した方がいいだろう。続き物のストリートビューを撮影していて、最後の地点で「あと6枚」というところでOSが落ちたときは悔しかった。

ストリートビューアプリがうまくできている理由

ストリートビューアプリが画期的なのは、撮影したパノラマ画像をアプリ内からGoogleMap/ストリートビューにアップできる点だ。試しに何枚か撮影して送ってみたら、PCブラウザやスマホのGoogleマップアプリ上で即座に見られるようになった。しかもスマホ単体でなく前述のThetaやGear360と連動できたり、既存のパノラマ画像もアップできるという柔軟性を備えている。

Googleとしては、車道から撮影できない個人宅や商業施設、車が入れない公園や山道などを、個人ユーザから吸い上げたい魂胆らしい。ストリートビューでおなじみの人の顔を検出して自動でぼかす機能もアプリに実装されている。プライバシーに配慮した撮影許諾はユーザが取る前提で、店内や観光地のパノラマ画像がどんどんアップされたら、Googleマップもより便利になるだろう。

パノラマ画像を50枚投稿すると認定フォトグラファーになれる

撮影したパノラマ画像はひとまず非公開の状態になるが、マップのリスティング(地名・名称など)を追加してGoogleに投稿できる。パノラマを50枚投稿すると、「認定フォトグラファー」の招待状が届いてプロとして撮影依頼を受けられるようだ。

すでに各都道府県で相当数の登録があり競争も激しそうだが、我こそはという人は挑戦してみてはいかがだろうか。しばらく遊んでいたら、こんな自分でもグーグル様に認定してもらえた。

ストリートビューアプリでカードボード用二眼表示できる

非公開の状態でも、アプリ画面やカードボードでパノラマ画像を鑑賞することはできる。プレビュー画面の右上にあるメガネ型のアイコンをタップすると、カードボード用の二眼に分かれた表示画面になる。

画面をよく見ると視差が付いていて3Dになっている。スマホの単体カメラでどうやって奥行きを計算しているのか不思議だが、立体感はいまいちでかえって目が疲れる。2D表示も選べるオプションを用意してほしいものだ。

スマホを横にして、段ボール製でもプラスチック製でも適当なカードボードに入れればOKだ。一応最初にカードボードに付属のQRコードを読み取ってキャリブレーションしておこう。

Googleカードボードはいくつか試して玉石混交だったが、ハコスコ製のものが価格と品質のバランスがよいと感じだ。右上の凹みを指で押すと、導電性の突起が画面に触れてタップできるという機能がついている。対応しているVRアプリなら、メニュー選択の際にいちいち端末を外して指でタップする手間が省ける。

長時間VRゲームをするならGearVR以上の機種がおすすめ

ただし、見た目の画像のクオリティやピントの合いやすさという面では、カードボードはOculusやGearVRに全然かなわない。同じモバイル型HMDでも、サムスンのハイエンドスマートフォンGalaxyシリーズに最適化されたGearVRを体験すると、ハコスコやカードボードは見た目だけでなく中身もおもちゃだと感じる。

特に画像にピントを合わせづらくて、5分も見ていると頭がくらくらしてきた。ゴーグルを外してからしばらく眼の焦点が合わなかったので、一時的に斜視になっていたのではと思う。

短時間の余興なら問題ないと思うが、長時間ゲームで遊ぶならミドルエンド以上のゴーグル装置をおすすめする。2015年モデルのGalaxy S6は白ロムで3万円台に値下がりしてきたので、GearVRと合わせても5万円くらいで手に入るだろう。

段ボール製カードボードは汗を吸うのでやばい

段ボール製カードボードを数日使っていたら、案の定、額の部分が汗で黒ずんできた。

これからの忘年会シーズン、一発芸でVRを見せるのもありかもしれないが、オヤジの皮脂べったりのゴーグルを女性社員に装着強要するのはセクハラになりそうなので気をつけよう。