プログラマーとして、PC以上に長く使う可能性がある椅子や机にはこだわりがある。アーユルチェアのような健康志向のエキセントリックなデザインのチェアから、スタンディングスタイルまでいろいろ試してきた。
今年に入って膝を痛めたこともあり、2年くらい続けたスタンディングワークから、普通に椅子に座って仕事するスタイルに切り替えた。とはいえ、一度高級チェアの座り心地を味わってしまうと、安いオフィスチェアには戻れない。イケアの廉価品もいろいろ調べたが、結局元の椅子に戻ってきた。
今回ご紹介するのは、オフィスバスターズで中古品を買ってから8年くらい使い続けてきたSteelcase社のThink Chairだ。あまりにお気に入りなので、前の会社を退職する際、中古で譲ってもらって自宅に持ち帰ってきた。
中古なら半額以下で買える
Think Chairをおすすめする理由はまずその快適さとデザインのよさだが、意外なセールスポイントは「中古品が大量に流通している」という点かもしれない。新品で買えば10万円以上する高級品だが、程度の良い中古が半額以下の3~4万円くらいで売りに出ている。
オフィスをデザインする際に外せないのは、「椅子を統一する」という観点だ。雑誌で紹介されたり、見た目がすっきりして見えるオフィスは、必ず椅子が同じ製品で揃えられている。数年後にスペースを拡張して椅子を買い足したくなったとしても、同じものが手に入るのは安心だ。
大事な仕事道具とはいえ、たかが椅子に10万もかけるのは気が引ける。オフィスチェアも車と同じで、たいして品質が変わらない中古品が半額以下で取引されているマーケットが存在する。
同じデザインが大量流通している
同じ高級品でもアーロンチェアやオカムラのバロンなどは、色と素材とオプションのバリエーションが多すぎて、中古で同じデザインのを数脚そろえるのは難しい。ところがなぜかThink Chairだけは、背面メッシュで色はブラック、せいぜいアームレストがついているかいないかの違いだけで、似たようなものがまとめて売りに出ている。
バブル時代に大量輸入されて、その後、倒産した会社からたくさん放出された経緯でもあるのだろうか。同じくSteelcaseのLeap Chairも中古品が多く流通しているが、店頭で試してみたらThink Chairに比べて大き目でかさばる印象だった。背もたれがメッシュで蒸れない点でも、LeapよりThinkの方がすぐれている。
前の会社ではスタッフが増えてオフィスを拡張するたびに、同じデザインのThink Chairを中古で買い足しながら4脚まで増やした。机はアウトドア用のアルミの折りたたみテーブルだが、椅子に関しては1脚3万円かけても快適に作業してほしいと思った。新宿のオフィスバスターズで確認して、そのままタクシーに乗せて会社に運んだのが懐かしい。
必要最小限の機能で見た目もシンプル
Think Chairは他の高級チェアに比べて、「調整できるところがあまりない」というのが売りだと思う。言い換えれば「調整する必要がないほどに完成度が高い」ということだ。
高級チェアによくある、シートをいろんな角度で傾けられたり、ランバーサポートの高さを変えられたり、そういう便利機能は一度合わせてしまえば毎日いじるものでもない。作業に合わせて座高は頻繁に調整するが、背面の傾斜角度は無段階でなくてもよい。
Think Chairでいじれるのは、座高の高さ、シートの前後スライド、そして背もたれの倒れる角度を3段階で固定できるダイヤルだけである(アームレスト付きならその高さも調整できる)。背中に無数に張られたワイヤーのおかげか、たいした調整もなしに、たいていの人の体形にフィットするようにできている。
調整機能が少ないということで、いかにも健康志向の高級チェアのようなメカメカしさがない。欧米人向けに座面は幅広だが、直線的なデザインで場所も取らず、すっきりして見える。
純正ヘッドレストでグレードアップ
絶対必要というわけではないが、長時間作業して背伸びするときや、椅子に座って仮眠を取りたいときに、ヘッドレストがあるとありがたい。探してみたところ、Think Chairに適合するヘッドレストが販売されていることを知った。
さすがに中古品はなくて、楽天市場で2万円近くの新品を購入したが、純正品だけあってフィット感は抜群だった。見た目はちょっとださくなる気がするが、頭部の高さとパネルの傾き角度を変えられるので、ベストな位置に合わせられる。
DVDを借りてきてPCで映画を観たりするときに、ヘッドレストがあると極楽である。もとが高機能なオフィスチェアなので、背もたれを深めに傾けて使えば、適当なソファよりよっぽど快適だ。2時間座っていても疲れがたまらず、映画館のプレミアムシートよりよいかもしれない。
座面が蒸れる点だけ気になる
Think Chairの残念な点は、シートがメッシュ製でないことだ。汗かきなので、夏場にズボンの下がじわっと蒸れるのは気になる。アーロンチェアは座面もメッシュ素材だが機構が重そうなので、同じハーマンミラーのミラチェアとか中古品を探したこともある。
結局この夏は良いアイデアが浮かばず、100均で買ってきた「い草シート」を載せて、座面に汗染みができるのを防いでいた。い草とはいえペラペラな安物なので、すぐに蒸れてきて不快感は変わらない。
エアリークッションがジャストフィット
布団代わりに使っているブレスエアーみたいなものがないかと探したところ、アイリスオーヤマから出ているエアリークッションが40×40cmでThink Chairにぴったりなサイズだとわかった。
地味なネイビーの色があって、洗濯機で洗える。素材としてはブレスエアーの固めタイプと同等かそれ以上の張りがあったので、クッションとして問題なく体重を支えられる。
通気性抜群なのでお尻や太もも裏の蒸れもまったく気にならなくなり、もっと早く導入すればよかったと後悔した。わざわざ座面がメッシュ製の高級チェアに買い替えるより、安くて洗濯も交換もできるエアリークッションの方が便利だ。
メンテナンスフリーの頑丈さ
我が家にあるThink Chair。ヘッドレストに快適なクッションもついて、まだまだお世話になりそうだ。たまに埃を払うくらいで、油を差したりネジを締め直すこともせず、ノーメンテで故障もなく使えている。たまにイケアとか下見して、アームチェアとかロッキングチェアに心惹かれるときもあるが、Think Chairより快適なソファはそうそう見つからない。
結局、朝から晩まで、平日も休日も1日中Think Chairに座って過ごしている。Thinkで朝食を食べ、仕事して、お茶して、読書して、座ったまま坐禅を組むこともある。身の回りの道具の中では、布団や枕と同じくらい、長時間接している製品かもしれない。
高級チェア選びで悩んでいる人がいたら、一度中古品を手に入れて試してみたらよいと思う。Think Chairは流通が盛んなので、気に入らなければ転売するのも容易だろう。