鹿児島市内、390円で入れる街中の三大格安温泉銭湯レビュー

ここ1年、出張ついでにたまに寄る鹿児島。霧島や指宿の砂蒸し温泉が有名だが、実は鹿児島市も県庁所在地としては日本一の源泉数を誇っている。

街中の銭湯が温泉という贅沢

鹿児島空港からバスで市内に到着して、街中をぶらぶら歩いていると、ときどきレトロな銭湯を見かける。これらがすべて温泉で、しかも390円と格安で入れる恵まれた地域だと知った。

草津の共同浴場や三朝温泉の河原風呂など、無料の温泉はいくつかある。東北では秋保や赤湯など、100~300円で入れる公衆浴場もある。熊本の人吉温泉や、霧島~妙見の安い日帰り湯も300円程度だ。

しかし、普通に暮らすせる便利な都会で、400円以下の温泉がいくつもあるところは他に聞いたことがない。温泉好きなら一度は住んでみたいと憧れるのが鹿児島市だ。

市役所裏手のかごっま温泉

楽天トラベルで鹿児島市内の安宿を探すと、2千円台で素泊まりできるドミトリーやカプセルホテルがいくつか見つかる。港に近いグリーンゲストハウスに泊まった際、お店の人に教えてもらったのが「かごっま温泉」だった。

市役所のすぐ裏くらいにある格安の温泉銭湯。ビルの上階は宿泊施設になっているようだ。浴室の壁にはもちろん富士山ではなく、盛大に噴火中の桜島が描かれ、「ゆくさ、おさいじゃしたもした」とメッセージが添えられている。「ようこそ、おいでくださいました」という意味らしい。

安宿に泊まって日帰り温泉利用

もう一つの安宿、イルカゲストハウスは「かごっま温泉」のすぐ横にあるので利用しやすい。「パームス天文館」はカプセルホテルだが、千円追加で簡易作業デスクとロッカー付きのキャビン型も選べる。ゲストハウスのドミトリーや、カプセルホテルのキャビンタイプには、女性専用のプランもある。

鹿児島市内では、格安宿に泊まって温泉銭湯でゆったりするのが、リーズナブルな過ごし方といえる。数日滞在するなら、安宿を拠点に市内の銭湯を歩いてはしごするのも楽しいだろう。ビジネスホテルに泊まったとしても、狭い浴室でシャワーを浴びるより、外の格安温泉を利用する方が羽を伸ばせる。

天文館最寄りの霧島温泉

鹿児島市内の繁華街といえば天文館。名前からして最初は集成館みたいな史跡かと思っていたが、単なるエリアの名前だった。いちおう由来は薩摩藩の天体観測を目的とした明時館という施設で、その別名が天文館だったらしい。

巨大なアーケードで構成された区画は、仙台の商店街と同じくらい広い。この日は桜島が噴火して、風向きも悪かったのかしょっちゅう灰が降ってきた。こういうときにアーケードがあると助かる。豪雪地帯の雁木造りのようなかたちで、鹿児島では灰除けの屋根付き商店街が見られる。

天文館から一番近い銭湯が「霧島温泉」だ。別に霧島からお湯を運んできているわけでも なく紛らわしい名称だが、中身は塩化物系の本物の温泉である。

夜は22:30までなので、やや閉まるのが早い。ロッカーは鍵がないので、貴重品は番台に預けた方がいいだろう。脱衣所も浴室も広く、清潔感がある。

石鹸・シャンプーは脱衣所にある

湯船はジェットバス付きの熱めとぬるめの2つある。サウナもあるが、水風呂はやや温度が高い。浴室に石鹸やシャンプーがなかったので、そのままお湯で体を洗って済ませたが、脱衣所に戻ると「自由に使ってください」という石鹸セットが置いてあるのに気づいた。浴室にあった方が便利なのに、なぜここにあるのだろうか。

霧島温泉のお湯は飲めるらしく、湯船の横に親切にもひしゃくが置いてある。ちょっと風邪気味で体調がすぐれないのと、せっかく除去したピロリ菌が復活するのが怖くて遠慮しておいた。ピロリ菌が温泉に生息しているのか不明だが、胃酸の中でも生きられる菌だから、そのくらいは平気だろう。

タイル画の美人

組合の公式サイトにある「昭和25年から引き継がれるタイル画の美人」が謎だったが、浴室の奥の壁にそれらしき絵が飾ってあった。西洋風の裸婦が海辺の松原みたいなところに横たわっている絵で、荒いモザイクで表現されていた。

70年近く経っているわりには、よくメンテされてきれいな状態が保たれている。文化財というほどの名画でもないが、銭湯としてはシュールな光景なので、アート好きならぜひ見ておきたい。

薬草風呂が売りの春日温泉

市内中心部の天文館エリアから歩いて行ける銭湯として、春日温泉も開拓してみた。城山や北の方にも、なんとか歩いて行けそうな距離に銭湯があるが、春日温泉には市内唯一の薬草風呂があるということで興味深い。街中の銭湯が温泉なのもめずらいしいが、薬草風呂があるというのもさらにユニークだ。

漢方を入れた薬草風呂といえば、たとえば富士山麓にある南海薬草館が有名である。
硫黄泉よりも強烈な香りで病みつきになりそうな薬草風呂だが、春日温泉はそこまで強烈でもなかった。

天文館から南に1.5kmくらい歩き、甲突川(こうつきがわ)を渡ると住宅街の中に春日温泉が見えてくる。営業時間は23時までなので、中心部にある霧島温泉よりは少し遅くまでやっている。料金は市内統一価格の390円。

石鹸とシャンプーはない

宿でもらった地元温泉のパンフレットでは石鹸・シャンプーありとのことだったが、浴室には置いていなかった。霧島温泉のように、脱衣所にTake Freeな石鹸セットがあるわけでもない。仕方なく、また石鹸なしで風呂に入った。

春日温泉にもサウナが付いていて、水風呂も合わせると浴槽は広い。中に入るともわっと薬の香りがするが、風呂自体はぬるめで刺激も強くない。アロマのようないい香りというわけではないが、精神的な沈静効果も期待できるらしい。湿布やルートビアのような、木の根を煮詰めたような複雑な香りだ。

熊本~鹿児島に出張中、この一週間毎日温泉に入っていたので、たまに薬草風呂というのも気分が変わっていい。春日温泉にも普通の温泉はあるので、どちらも楽しめる。

地元の人からすれば、温泉がデフォルトだとありがたみも薄れてくるように思う。漢方を溶かした変わり種の風呂というのも需要があるのだろう。市内の温泉をはしごして飽きてきたら、春日温泉でリフレッシュしてみるのもおすすめだ。

桜島の灰がたまらない

せっかく温泉に入ってさっぱりしたと思ったら、帰り際に猛烈に桜島の灰が降ってきた。最初は雨かと思ったが、服に灰色の染みができたので灰だと気づいた。人も車も灰まみれ、風が吹くと目つぶしをくらうので、たまったものではない。髪の毛や耳・鼻の穴まで灰でザラザラする感じだ。

先ほど桜島の中腹まで登ってきたら、まさに南岳から噴火した火山灰が鹿児島市内めがけて漂っていくところだった。今日は西向きの強風だったので、煙も上にのぼらず火砕流のように直滑降していく感じだった。

鹿児島は温泉に恵まれているが、桜島や霧島の火山活動が活発なのと無縁ではないだろう。降灰にPM2.5のような健康被害はないようだが、洗車や除杯、農作業の手間を考えると火山の近くに住むのも楽ではないといえそうだ。