開発案件の納品用に、DellのG3というノートPCを購入してみた。調達してから引き渡しまで1か月くらいの間、いろいろいじってみた最新ラップトップの使用感をレビューしてみようと思う。
GPU付きノートが脚光を浴びる理由
流行りのeスポーツを楽しむためか、深層学習用か、GPU付きの薄型ノートPCが脚光を浴びている。DTPや映像編集、CADやCGソフト以外のユーザーが増えてきて、GPUマシンの間口が広がった思う。
これまではもっぱらゲーム用という位置づけで、Dellのエイリアンウェアに代表されるようなデコラティブなデザインが主流だった。ここにきてユーザーの好みが多様化したためか、MacBook Proに似た質素なデザインの製品が増えてきた。
技術的にはNVIDIAのMax-Qなど、高性能GPUを小型化・静音化できるテクノロジーが出てきたことも影響している。モバイル用の薄型PCと遜色ない薄さ・軽さに設計できて、ゲーミングノートにありがちな見た目の野暮ったさが減ってきた。
Mac以外にまともなデザインがなかった
最近、友人のプログラマーから、「ディープラーニングするのにGPU付きのノートが欲しいが、安くてまともなデザインのはないか?」と相談を受けたことがある。
ノートPCでヘビーな映像編集やCG制作をしようと思ったらGPUが必須だが、正直このジャンルでデザイナーの目にかなう製品はMacBook Proしかなかった。変にトゲトゲしいケースや謎のロゴ、LEDでビカビカ光るゲーミングPCは仕事で使いにくい。スタバで広げたり、クライアントにプレゼンする場面でも絵にならない。
必ずしもみんながApple好きというわけではないが、ほかに選択肢がないので仕方なくこざっぱりしたMacを使っている人も多いと思う。iPhone/iPad向けのアプリ開発にMacが必要という縛りもある。街中でApple製品を見かける機会が増えたが、ジョブズ信者ばかりでなく、消極的な理由で持たされている人もいるはずだ。
MacBookのGPUはしょぼい
MacBookの問題点は、スペックに比べて価格が高いことである。自分はきわめてコストセンシティブなので、アプリの開発に必要でなければMacを買うことはない。UnityでiOSアプリをつくる際も、基本的にWindowsで作業して最後にビルドするときだけXcodeを通すスタイルだ。
学生時代からデザイン業界にいたので、どちらかというとまわりはMacばかりだった。当時は性能が劣るWindowsに甘んじながら、IBMや富士通より一回り安いPCメーカーが出てきたときは狂喜した。iMacの登場よりも、ゲートウェイの日本進出に衝撃を受けた記憶がある。
Appleのプロダクトデザインがベストかというと、異論もあるだろう。モダニズムやミニマリズムをとことん追求して尖った設計ではあるが、拡張性やユーザビリティーなど犠牲にしている面も多い。
デザインの良し悪しは置いておいても、やはりMacBookは昔から高い。同じスペックのWindowsノートより10万は余計にかかるのに、搭載されているGPUがNVDIAの廉価なGTシリーズだったりAMDのRadeonだったりする。
DellやHPのワークステーションなら、もっと安い値段でGTXシリーズのチップを搭載できる。仕事用にゲーミングPCの外見は厳しいなら、ユニットコムやマウスコンピューターのBTOパソコンを選べばよい。US配列のキーボードを選べないのが欠点だが、それ以外は品質に問題もない。
前の会社では、デモ用にFaithのBTOノートをアウトレットで10台くらい買い揃えていた。見た目は黒くて武骨なオフィス用PCという感じで、仕事で使っても違和感がない。Apple製品を除いてコスパの高い実用性重視のGPUマシンを選ぶなら、G-Tuneやパソコン工房でBTOするのがベストだと思う。
GPU付きSurface Book2は高すぎる
友人にもひとまずフェイスあたりを勧めたが、反応はいまいちだった。どうもデザインコンシャスなユーザーに国内BTOマシンは地味すぎて不評らしい。
DellのXPSシリーズや、AsusのZenBookもMacに劣らない(むしろかっこいい)くらい優秀に思われるが、長らくAppleがデザイン業界に君臨していたせいで、その他のメーカーは眼中にないようだ。
紹介した中で唯一好評だったのが、Surface Book2の15インチGeForceGTX1050搭載モデル。見た目は薄型でMacBookに似ており、確かにFaithやG-Tuneのノートより洗練されている。
しかしSurfaceのGPU搭載モデルは、ストレージを256GBに抑えても軽く30万円は超える。スペック次第ではMacBook Proより高くなってしまう。よほど外見にこだわる職種でなければ、フリーランスとしてなかなか手が届く価格帯でない
コスパ重視ならデスクトップだがが…
結局、費用対効果を狙うならノートよりデスクトップの方がよい。いかにGPUチップが小型化されたとしても、デスクトップ用のグラフィックボードには性能が及ばない。
自分も普段は数世代前のGeForceGTX 780Tiを使っているが、ベンチマークのスコアは最新のGTX 1070 Max-Qと同じくらいある。デスクトップのBTOで組めば、予算20万円以下で最高スペックのGPUを載せることができる。
世代は古くてもハイエンドのグラフィックボードなら、数万円で買い取ってもらえるだろう。今でも中古で流通しているGTX 780 Ti、グラボは3~4年おきに下取りに出して最新機種に買い替えるのが賢明かもしれない。
コスパを考えると結局、場所を取るデスクトップか、値段・デザイン・性能を妥協して持ち運びできるGPUノートを選ぶか、という堂々巡りに陥る。そんな中、「これは意外といけるのでは?」と発見したのがDellの新製品Gシリーズだった。
Alienwareの13インチは奇行種
Dellといえば一般的には安い事務用PCメーカーというイメージだが、実は昔からGPUマシンもラインナップしている。Quadro搭載のワークステーションは別物として、GeForce のモバイル版を搭載した馬鹿でかいノートには、昔からお世話になったものだ。
見た目にこだわらなければコスパは抜群なので、大学の研究室でまわりはDellばかりだった。昔からあるPrecisionシリーズと別ラインでALIENWAREが出てくると、13インチのGPUノートをいたるところで見るようになった。エイリアンのロゴは微妙だが、このサイズでGeForce搭載というのは、今までなかったジャンルだ。
それでもDell製品の中でエイリアンのシリーズは割高に見える。筐体のLEDとか余計な装飾は省いてよいから、5万円くらい値下げして仕事用マシンと売り出せば、もっと需要があったのでなかろうか。そんなときに出てきたのが、Gシリーズの前身、Inspironのゲーミング5000/7000だった。
Gシリーズの前身Inspironゲーミング
搭載しているGPUはエイリアンウェアほど高級でないが、10万円強の価格で一応独立型のGPUノートが手に入る。見た目はちょっと赤の差し色が入っているが、Inspironらしく地味で主張の少ないデザインに収まっている。
15年前に研究所で割り当ててもらったマシンも、GPU付きのInspironだった。ACアダプタも含めて4kgくらいあった重量級ノートを運ぶため、特大バッグを買って通勤したものだ。Dellの製品群では「Latitude以上でPrecision以下、たまにGPU搭載」という絶妙な構成がInspironシリーズの魅力といえる。
今回顧客に提供するシステムにはGPUが必要だが、GeForceのGTXなら1050でも十分動くレベルだ。価格も魅力的なので、Inspiron15の7000くらいでいいかなと思ったところ、惜しくもカスタマイズで英語配列のキーボードを選ぶことができなかった。
英語配列キーボードを選べるG3
自分用のマシンでないので、別に日本語配列でも構わないのだが、次に買い替えるときの参考として購入候補を選びたい。ここ数年、デスクもノートもUS配列に慣れてしまったので、次に買うのは間違いなくそっちだ。
現状でUS配列キーボードを選べるのは、Apple、Microsoft、Dell、Lenovoのハイエンドノートに限られる。以前はHPでも選択できたと思う。
DellはXPSやエイリアンウェア、LenovoはThinkPadまで行かないと、英語配列にカスタムできない。ほかにMSIやAcer、Razerの英語配列ゲーミングノートもあったりするが、流通量や選択肢が少なすぎてビジネスには使えない。
Inspironを買おうか納品ぎりぎりまで迷っていたところ、ついに出たのがGシリーズだ。そこそこスペックのGPU搭載で10万円前後の廉価帯、いかにもゲーム用でないシンプルな筐体デザイン、そしてUS配列キーボード選択可能という、まさに自分の要望にぴったりの製品だった。
カード会社のモール経由でポイントアップ
G3、G5、G7と似たようなスペックのマシンが3種類出たが、要求仕様としてはG3で十分間に合う。しかも、黒やシルバーに混ざってホワイトの筐体を選べるのが魅力である。
CPUはCore i5-8300H、メモリは8GB、ストレージは256GBのSSDと、GPU以外は最低限に抑え、英語配列で1,800円追加。クーポン適用して税込102,614円の価格で入手することができた。
Dellの公式ストアで買うなら、各種クレジットカードのショッピングサイトを経由すると、追加でポイントを稼げる。例えばダイナースクラブのモール経由なら、ポイントアップだけでなく4.5%のキャッシュバックも選択できる。
楽天やアマゾンでなくメーカー直販で買うなら、念のため手持ちのカードにポイント優遇がないか調べてみるとよいだろう。会社の経費を使いながら、地味にポイントを稼げるかもしれない。
見た目さわやかなホワイト基調
キーボード配列を変更したので、1週間くらい余計に納期がかかったと思う。やっと届いたG3はさすが15インチだけあって、思ったよりもでかい。普段使っているノートがDellの薄型XPSなので、余計にごつく見える。ACアダプタもそれなりのサイズだ。
それでもフットプリントに比べれば、昔のGPU搭載ノートよりずいぶん薄型になったと思う。G5やG7ならもう少し厚くなりそうだが、G3はヒンジ裏に目立たない排気口があるだけで、通常稼働時の音も静かだ。
天板はやや銀色がかった白色で、ブルーのDELLロゴが映える。パームレスト部分はよく見ると白と銀色の細かい市松模様になっている。XPSの薄型モバイルに比べると、ベゼルが太かったり見劣りする部分もあるが、全体的にホワイトでさわやかに見えるのは狙い通りだ。キーボードやタッチパッドのLEDがブルーで統一されているのも、クールで好印象だ。
性能やベンチマークについては、ほかのサイトで詳しく解説されているので省略する。ひとまずUnityでつくったローポリゴンの3Dシーンを動かすのに、不自由はしなかった。USBポートもType-Cでない旧型なので、周辺機器との接続に変換の必要がなく便利だった。
キーボードはスタンダードな英語配列で問題ないが、Enterとバックスラッシュのキーがなぜかくっついていて違和感がある。15インチで独立型テンキーが付いているのも好みが分かれるだろう。
最近はデスクトップでもテンキーレスの省スペースキーボードを使っているので、テンキーはなくても構わない。テンキーの幅分、モニターに対してちょっと体が左に寄せる必要があり、肩がこりそうだ。
女性にも好評のゲーミングノート
常設型の展示用機器なので、顧客の施設に据え付けてしまえば表から見えることはない。しかし、セットアップしながら見た目のデザインが女性スタッフに大好評だった。
GPU搭載の有無はさておき、こういうホワイト基調でブルーの差し色ノートPCというのもあまりなかったと思う。デザイン性重視のラップトップといえば、どちらかというとMacBookのスタイルを踏襲した、ソリッドなシルバーカラーが主流といえる。
自分用なら無難にシルバーを選んだと思うが、Dell G3のホワイト色と市松模様は、ある種の客層にヒットするらしい。昨今のGPUノート市場においては、初代iMacが出たくらいのインパクトともいえる。
たとえばeスポーツデビューしてみたい女の子にプレゼントするなら、デザイン・価格・スペック的にバランスが取れたG3は有力候補だ。男気あふれるG-Tuneとかよりはうけるだろう。部屋のインテリアとしてもすぐれている。
そこそこスペックで見た目が悪くなく、US配列キーボードを選べるDellのGシリーズ。もうそろそろ廉価ノートのベンチマークが780Tiのグラボに追いつくくらいになったら、買い替えてもいいかなと思う。自宅では外付けキーボードを差して4Kモニタに出力して使うだろうから、細かいキー配列の好みはどうにかなるだろう。