見開きページが分離できる、中村印刷所の方眼NOTEは画期的

東急ハンズの文具コーナーをチェックしていたら、見たことのない「方眼NOTE」という商品が置いてあった。

水平開き製本が売りで、ノートを開いても中央綴じ部分がたわまず書きやすい。しかもミシン目なしに、開いたまま2倍サイズの用紙を取り外しできるらしい。

このギミックを試してみたく、購入してしばらく使ってみた。裏移りが激しく万年筆には適さないが、確かに用紙は分離できるしフルフラットになる。

水平綴じは従来の綴じノートとリングノートのジレンマを解決する、画期的な発明かもしれない。デザインと紙質を向上させれば、未来のスタンダードになってもおかしくない可能性を感じた。

方眼NOTEのバリエーション

中村印刷所の水平開き方眼ノートは、B5サイズ・30枚入りの5ミリ方眼で280円。A5サイズだと230円。

東急ハンズの方眼ノート

同じ規格のCampusノートに比べると、価格は2倍以上高くなる。これは流通の少なさや特許・商標代も含んだ値付けだろう。

さらに値段は上がるが、380円で中身が緑色のノートも売られていた。こちらは方眼以外に7ミリ罫線のバージョンもあり。

東急ハンズの方眼ノート(緑色)

LIFEのバーミリオンやピスタチオと似た感じの色付きノートだが、用紙の色はもっと濃い。いわゆるクリーム色の高級ノートとも違い、色付き模造紙のようにビビッドなカラーだ。

商品の説明によると、緑色は光の反射を抑え目にやさしいらしい。さすがに値段が高くて手が出せなかったが、長時間使うと効果を実感できるのかもしれない。

表紙のデザインがちょっと…

方眼NOTEの表紙デザインは、お世辞にもカッコいいとはいえない。

方眼ノートの表紙

商品名とキャッチコピー、方眼模様が中身を表し、コンセプトがわかりやすいのはいい。しかしName・Themeの記入欄はジャポニカ学習帳のようだ。

裏面も不思議なレイアウトで、特許番号や使い方の説明が列記されている。

ナカプリバインは(公財)東京都中小企業振興公社ニューマーケット開拓支援事業の支援対象製品(技術)です

方眼ノートの裏表紙

公社の助成金をもらって開発・商品化された商品なのだろう。制度上、記載する必要がある文言なのかもしれないが、こんな目立つところにでかでかと載せなくてもいい気がする。

あとからクレームが入って、急きょ追加することにでもなったのだろうか。LIFEのようにデザイナーに依頼して表紙を今どき風に変えてもらえれば、もっと売れそうなに感じる。

ナカプリバインとは

表紙に書かれた「ナカプリバイン」とは何なのだろう。商品名は方眼NOTEだと思うので、「水平綴じ®製法」という技術の別名だろうか。

下の方を見るとロゴと一緒に説明が書いてあった。

ナカプリバイン=ナカムラ・プリンティング・バインダー(NAKA_PRI-BIN®)

ナカプリバインの説明

普通ならNPBと3文字で表現しそうなところ、あえてナカプリバイン。

語呂がいいのか悪いのかよくわからない、ユニークな略語になっている。覚えやすいかどうかというと微妙だ。

ウェブで検索すると、ナカプリバインはWikipediaに掲載されていた。水平開きノートの商品名(総称?)であるようだ。

(参考)Wikipedia「ナカプリバイン」

表紙の表裏を見るだけで、

  • 水平開き®
  • 水平綴じ®
  • ナカプリバイン®

と3つの語句を商標登録していることがわかる。特許の維持費や手数料も含めれば、さすがに値段が高くなりそうだ。

環境にやさしい製法

裏表紙の追加説明では「加工時に熱処理がなく、紙粉も出ないのでとてもエコです」とうたわれている。

ノートの製法については詳しくないが、綴じ糸や金属・樹脂製リングがない分、ゴミの分別が簡単で製造に要する資源も少なそうだ。

ただし普通のノートより特殊な製法で作られているので、生産設備や消費エネルギーが余計にかかるという裏事情も想像できる。製造から廃棄まで商品のライフサイクル全体を見て、本当に環境にやさしいのかどうかは何とも言えない。

見開きページの分離を試す

とりあえず家に持ち帰って方眼NOTEの分離を試してみたところ、少し力をかけるだけで中の用紙が簡単に取り外せた。

ただし慎重にのりをはがさないと、紙の裏側が一部ちぎれてしまう。

方眼ノートの取り外し

ノートをミシン目でちぎるより軽い力加減で切り離せる。普通に使う分には自然にはがれてくることはなかったが、カバンに入れてハードに持ち運ぶと勝手に取れてしまうかもしれない。

取り外すと折り目のついた面積2倍の用紙が手に入る。折り目の背中がノートの背にごく薄くのり付けされているような感じだ。

方眼ノートの背中部分

そのため分離できるのは任意のページでなく「2枚おき」ということになる。片方のページに書いていて後から分離したくなったとしても、左右どちらの紙がくっついてくるかは運による。

方眼ノートの分離

実際の使い方としては作業中に大きなサイズの方眼用紙が必要になった際、あらかじめ分離してから書き込むかたちになると思う。

表紙側から用紙の裏も使って時系列に書いて行くと、外した用紙の裏に書き込みが残ってしまったりする。2枚ごとに見開きページを分離するには、計画性が必要だ。

たわみが少なくストレスフリー

特許製法、水平綴じのおかげでノートの中央部分は確かにたわみにくくなっている。

しかしふくらみはゼロでないため、綴じ位置に近い部分に書くときは片手で押さえつける必要がある。その点ではリングノートの方が、フルフラットになってストレスがないといえる。

方眼ノートの中央部

開いた状態で綴じ部分を強くこすれば、クセが取れて180度水平に近くなる。ノートの左ページに書く際、右手がリングに触れて不快な思いをすることがないのはコンセプトどおりだ。

綴じノートに近い接着ノートとしては十分実用的。「リングノートの右ページしか使わない」という利用法には劣るが、左右無駄なく使い切るには理想的な発明品といえる。

万年筆は裏移りしやすい

ただし使うペンによっては紙の裏側にインクがにじみやすいとわかった。いろいろなペンで書き込んでみたが、紙質はお世辞にもクオリティーが高いとはいえない。

むしろコクヨ・ライフ・アピカなど、普及している国産ノートの品質が高すぎるのかもしれない。モレスキンやロディアなど海外のメジャー製品に比べれば、やたらと丈夫で書きやすいのに値段が安すぎる気もする。

方眼NOTEは特に万年筆との相性が悪く、レグノ89sの細字(F)でも裏移りが激しかった。インクはパイロットの純正カートリッジを使っている。

方眼ノートの裏移り

LAMYのSwiftなどインクフローのよすぎる水性ローラーボールも同様。ゲルインクのボールペンもきわどいので、結局シャーペンしか使わないようになった。

貧乏性なのでノートはできるだけ裏表使い切りたい。もともと高価なナカプリバインを万年筆で表面1枚ずつ使うというのは、相当ぜいたくな使い方といえる。

建築士試験のエスキースに使える

方眼NOTEを見て真っ先に思いついたアプリケーションは、建築士の製図試験だ。

一級建築士の場合はA2サイズのエスキース用紙(5ミリ方眼)で、図面の下書きを行うことになる。学習中は大量の方眼用紙を消費することになるが、本番と同じA2サイズの専用品は高価でコスパが悪い。

普通のノートやレポートパッドで代用すると、サイズはA4が限度になる。唯一オキナのプロジェクトペーパーはA3サイズまで用意されているが、大きすぎてカバンに入らない。

自宅や職場で据え付けにするならまだしも、ちょっとカフェに行って課題を解いてみたりする際には持ち運びにくい。

取り外した方眼ノート

ナカプリバインのB5方眼から用紙を取り外せば、A4より少し広いB4サイズの方眼用紙が手に入る。出先で少しでも広い面積の紙でエスキースしたければ、有力な選択肢となりえる。

「おじいちゃんのノート」製品群

中村印刷所についてあらためて調べたところ、「おじいちゃんのノート」としてネットで話題になっていたことを知った。

下町職人の逸話として取り上げられ、商品開発の経緯が本にもなって出版されている。4月20日にはPart2も出るらしい。

ナカプリバインの商品にはいくつもバリエーションがあり、今回試した方眼NOTEのA4版があることもわかった。

A4を開けばA3サイズ。オキナの特大レポートパッドに変わるエスキース用紙になる可能性がある。

その名も「設計NOTE」という製図向きらしき商品も出ているが、これは注意が必要だ。普通の5mmではなく4.55mm方眼になっていて、「尺貫法に便利」と説明されている。

方眼NOTEに比べて紙が厚手(90kg)ということで期待が膨らむが、微妙にマス目が小さいのは引っかかる。レビューを見ると違和感なくエスキースでも使えているようなので、細かい寸法違いは気にならないのかもしれない。

ハードカバーはフールス紙

ほかにも無地タイプや原稿用紙、楽譜が書ける音楽NOTE、フールス紙を使ったハードカバーの高級ノートもラインナップされている。

総じて価格が高いのはネックだが、町工場で生産量が少なく、これは仕方なさそうだ。綴じノートとリングノートで迷い、スパイラルやソフトリングでも満足できない人なら、試してみる価値がある。

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在庫している店舗が少ないため、東京以外で手に入れるには通販を利用するのが早い。まとめ買いしても値段はたいして変わらないが、送料はいくらか抑えられる。

どのみちナカプリバインは高級品なので、せっかくなら200ページのハードカバーを自宅据え置きで使ってみたい気がする。

これで1年くらいかけて日記でも書くと楽しそうだ。ツバメノートと同じフールス紙なので、万年筆でも安定して書けるだろう。