インクが裏移りしまくるモレスキンの高級ノートはもう買わない

昔、背伸びして買ったモレスキンのノート。9×14センチのクラシック無地。柄にも合わず表紙がレッドなのは、当時のクライアントのコーポレートカラーが赤だったから。

100枚くらいある大容量、もったいなくてちびちび書いていたら、使い切るのに7年もかかってしまった。サイズはコンパクトだが持ち運ぶには分厚くて、打ち合わせで使うには面積が狭い。結局、家でお絵かきするとか、展覧会で模写したりメモを取る程度の活用頻度だった。

モレスキンの基本装備

屋外でも普通に使っていたが、頑丈な厚紙でできている表紙は7年経ってもほとんど傷んでいない。この固い表紙のおかげで、立ったままメモを取るには便利だった。

使い終わって気づいたが、裏表紙にポケットが付いていた。マチの部分が表紙と同じ色の布張りで、見えないところに微妙にこだわっている。ポケットの出番はなかったが、名刺やレシートを入れておくにはよさそうなサイズだ。

表紙の裏には、「拾ってくれたら○円上げるよ!」というメッセージを書くスペースがある。日本人にとっては、こういう直接的な書かれ方をすると、かえって気が引けると思う。

もし自分が他人のモレスキンを拾って「1万円あげます」と書かれていても、持ち主と個人的にコンタクトを取りたくない。せいぜい拾った施設の管理者か、路上なら警察に落とし物で届けるくらいだろう。

ゴムバンドと紐の栞は便利だが、ロルバーンやMDノートにも付いているありふれた機能だ。まあ定価2千円なら、このくらいしっかり作られていて当然と思われる。

インクが裏移りしやすい

ノートとして最も大事な紙の品質だが、残念ながらモレスキンのはいまいちだった。見た目はアイボリー色で高級感があるが、インクが多めの万年筆や水性ローラーボールで書くと激しく裏移りする。

カタログによれば、モレスキンの紙の重量は70g/㎡。マルマンの安いレポート用紙(60g/㎡)と同程度の厚みだ。ライフのレイド入りLライティングペーパー、MDノートのクリーム色などに比べると、モレスキンは触った感じもペラペラで、かなり見劣りする。

高いノートなので裏面にもびっちり書きたいが、万年筆を使うと裏面は全滅である。下手をすれば、次のページにまでインクが移ってしまう。手持ちのカランダッシュ万年筆(M中字)や、LAMYのSwiftとはまったくもって相性が悪かった。

鉛筆やジェットストリームの油性リフィルくらいなら、使えないこともない。そのため、途中からは鉛筆のみ使用可な展覧会で使う、メモ専用ノートになっていた。

あとは家で「欲しいものを絵に描いて満足する」欲求不満の解消用など。高いモレスキンのノートに値段や寸法を書いて比較すると、不思議と所有欲が満たされて、買わなくてもよくなるという効果があった。

ツバメノートはよくできている

優れたノートの条件とは、紙質や表紙の固さのバランスがよく、低価格でがしがし使ってもコストが気にならないことだと思う。紙さえ良ければ、表紙が革だったり布張りだったりする必要はない。1冊あたりの枚数が少なく、厚みがないノートの方が持ち運びやすい。

最近はライフのノーブルより薄いバーミリオンかピスタチオ、ツバメノートの各製品をよく使っている。

値段も安くて、ロフトや東急ハンズ、本屋に付属の文具コーナーなど、どこでも買えるのがありがたい。ツバメのフールス紙の品質は、価格は半分以下でも正直モレスキンより上だと思う。資格試験の勉強で、B5サイズの5mm方眼ノートを5冊も使った。

「色は自然の白色なので目の為に大変良いのです」と、怪しげな機械翻訳のような説明書きだが、書きやすさと裏移りのしにくさは本物である。色も変にクリームがかっていないので、日常的にも使いやすい。

こと文房具に関しては、海外メーカーより国産品の方がずっとコスパが高いと実感している。プラチナのプレスマンなど200円ちょっとで買えるシャーペンだが、100倍高いブランド品より高機能だと思う。

値段を気にせず使い込める人には似合う

それでも、モレスキンのしっとりした感触の表紙には独特の魅力がある。たとえインクが裏移りして使いにくくても、手帳のように毎日持ち歩いて、表紙がぼろぼろになるような使い方が似合うだろう。

残念ながら自分にはもったいなさすぎて、そこまで味を出せなかった。結局、身の丈に合った道具の方が、使う方も使われる方もしあわせだと思う。