陶芸家直伝。粉引き陶器の使い始めに米のとぎ汁で煮る目止めの儀式

お隣の陶芸作家さんからいただいたマグカップだが、「粉引きなので最初にとぎ汁で煮て…」とアドバイスされた。瀬戸物に詳しくなく何のことやらさっぱりわからなかったが、言われたとおりに処理した後で調べたら、やっと理由がわかった。

粉引きの器に目止めが必要な理由

粉引き(こびき)とは素焼きの上に化粧用の白い泥(化粧土)をかけて、その上から透明釉薬をかけて焼いた器のこと。化粧土のおかげで見た目が柔らかく趣深い雰囲気になる。ただし、通常の陶器より強度が落ち、白い土ごと剥がれ落ちたり、釉薬との間に汚れが入ってしみになる恐れもある。

粉引きの器は「使う前に5~10分水に浸す」と先に水分を吸収して汚れが吸い込まれるのを防ぐ効果があるらしいが、日常使いの道具でそんな七面倒なことはやっていられない。最低限の対策として、使用前にとぎ汁で煮ると、米のでんぷん質が表面の目を埋めて汚れを防ぐ効果があるようだ。

器をとぎ汁で煮る方法

普通に白米と研いだ汁を取っておく。普段は玄米だが、たまたま手元に白米もあってよかった。

とぎ汁が冷たい状態から器と入れて一緒に暖める。今回は思いっきり沸騰させてしまったが、火が強すぎると器内の熱膨張率の違いでひび割れたりすることがあるらしいので、弱火で煮た方がよかったようだ。

10分くらい高温状態で放置。とぎ汁が泡立ってどろどろの状態になっているくらいがよいらしい。

煮終わったら器を入れたまま半日ほど冷ます。とりあえずどうなっているか取り出して確認してみたが、見た目は変わらず、触った感じは米ぬかを塗ったようにちょっとすべすべになった気がする。

その後、コーヒーや味噌汁を入れてがんがん使っているが、特に汚れが定着する感じはないので、とぎ汁効果は発揮されているように思う。

いろいろ気をつかうが、使い込んでしみができるくらいの方が味が出てよいかもしれない見た目も工業製品ではない手作り感がある器なので、ヌメ革のように経年変化を楽しんだり、欠けたら金継ぎしてメンテするのも楽しそうだ。

手間のかかる道具の方が、かえって愛着がわくということもある。食器はスノーピークのチタン製品で揃えていて旅先にも持ってきたところだが、岐阜の滞在中はしばらく使わせていただこうと思う。